
こんにちは!MOTO-ACE-BLOGerの@Andyです。(You tubeチャンネル→MOTO-ACE-VLOG)
長年乗り続け、バイクに愛着を持っている人ほどメンテナンスの事が気になりますよね。 オイル交換やプラグ、エアクリーナは定期的に交換しているんだけど、10年経ってそろそろホイールベアリングが交換時期に来たかもなぁ・・・
バイク屋のオヤジにこんど聞いてみるか!
製造年月日が古くなってくると、ホイールベアリングの動きがゴリゴリしてスムースに回転しなくなってきます。こうなると交換のサイン。 よく工具のソケットを使ってカンカン!とハンマーで叩いて入れているショップのおじさんを見ます
が・・・
「それダメーーー!!」 工具を治具代わりにしてベアリングを打ち込んでいるバイク屋は信用してはいけません。ベアリングの構造を100%理解できれば、なぜだめなのか?が分かります。 ライダーが信用できるショップを見つける手助けに繋がれば嬉しいです!
走行中はずっと回転し続ける運命にある部品、ホイールベアリングはとても苛酷な使われ方です。ドライブチェーンのような一般的な消耗品ではないので在庫しているショップはありません。 中に入っているグリスも交換してもらえません。
なのにバイクの全重量を支えながらスムーズに回転しないと、燃費は悪くなるし、エンジンが生むパワーを失ってしまう。 大きく性能を左右する小さな部品です。
普段あまり気にしないままずっと乗り続け、不具合に気づかないまま走り続けると重大な事故に繋がる恐れがあります。
バイクショップもたまにしか交換しないからこそ、交換に必要な道具を見れば一発でそのお店の実力がわかります。
実力と知識の無いお店もたくさん存在する事は事実なので、簡単に見分ける方法を紹介します。 大切な愛車のホイールベアリングを交換するとき、どんなショップを選んだら良いのか? そんな事を決める参考になれば嬉しいです(^o^)
記事の目次
1. 恐怖!ベアリングが壊れるとこうなる…


こうならないよう点検をした方が良いのは言うまでもありません。しかしこのベアリングはバイクに装着された状態だと、ダストシールしか目視できません。→つまり見ただけでは何も分からないんです!!
ダストシール中にいるベアリングがどんな状態なのかは、ホイールを外さなければ確認できないのです。
もしホイールを外す機会があれば、この2つを点検しましょう!
- ベアリングを指で回してみて、「ゴリゴリ」感を感じたらNG。
- ダストシールより内側に漏れで出たグリスが見えたらNG。
上記2つが両方無ければOKです。
グリスがダダ漏れになっていると、ダストシールから放射状にうっすら飛び散っている場合がほとんどですから、洗車する時に、ホイールのサイドカラー周辺で明らかに水をはじいているような事が無いか気にすると、確認する精度が高まります!
*ついでにリンク周りもチェック!
2. ベアリングの有るべき正しい姿を知る
上の写真のような状態を未然に防ぐには、交換するしかありません。 ライダー歴が長くなってくると、仲間やチームの中に自分で交換した事のある知り合いが居ると思います。
しかし、残念な事にそのほとんどは間違った方法で圧入してしまっています。 するとベアリングの寿命を縮め、摩擦ロスが増大しパワーロスしてしまい、交換した意味を失ってしまいます。
そうさせない為の第一歩はベアリングのあるべき姿を知る事です。
あるべき姿1. ベアリングの名称と機能
よくある間違い! → 「インナーレースがアクスルシャフトの上で回転する!」
ホイールを置いてベアリングを回転させる時、指でインナーレースを触ってクルクルと回して回転状態をチェックします。そのままのイメージでバイクに装着した後も同じと思いがちです…。 ホールに圧入されているのはアウターレース! 固定がインナーで、回転するのがアウター側ですから覚えて置いてくださいネ!
ホイールベアリングは、レースにある溝の中でボールが点接触で転がる事でスムーズな回転を生み出す事ができます。
あるべき姿2. レースとボールの位置関係のあるべき姿
ボールがスムースに回転するには、アウターレースとインナーレースの溝センターが完璧に揃う事です。


ソケットでコンコン!と叩いてては絶対にセンターが出ません。 ベアリングの寿命を縮め、転がり抵抗が増加しエンジンパワーをロスしてしまいます。
あるべき姿3. ベアリング部(ホイールハブ)の構造を理解する。
ホイールベアリングが収まるハブ部の部品構成はおおよそこのようになっています。 アクスルシャフトを締め付けると、軸力約3tが発生します。 その軸力を受け止める部品に色を塗りました。 色が塗ってある部品にアクスルシャフト(ボルト)の反力が掛かります。
排気量によってこの構造は大きく異なりますが、ビッグバイクはメーカーを問わずこの構成です。 ドライブチェーンの反力を受けるハブベアリングはボールが2列あります。
ホイールベアリングは左右に1個づつ装備され、合計3個のベアリング(ボールは合計4列)が使用されています。 *ヤマハ車はハブベアリングがローラータイプが主流です。
ここで最も大切な事は、合計3個(ボール4列)のベアリング全てが、アクスルシャフトを規定トルクで締付けた時に、インナーレースとアウターレースとボールのセンターがぴったり揃った状態に組み込む事です。
大事なのは、アクスルシャフトを規定トルクで締付けた時ですよ!!
ホイールを締付けていない状態で整列が出ていても無意味です!!
この事をしらないバイクショップは全国にたくさんあります! カスタムコンテストで有名なビルダーさんやショップですら知りませんからね!!
皆さんも気をつけて下さい! 全国にたーーーくさんありますよ!
インナーレースとアウターレースのセンターが揃っていない場合、ボールの転がる溝がズレて回転が重たくなってしまいます。
このディスタンスカラーが持つ剛性が低いと、アクスルシャフトを締めた時に縮んでしまう事があります!
3. ソケットで叩くとセンターが出ない理由
結論から言うと、アウターレースとインナーレースを同時に押し込む事ができなからです。
ソケットを使用する場合、ベアリングのアウターレースだけを押し込む事になります。 こんなイメージ↓


この状態でハンマーでカキン!カキン! とディスタンスカラーに、インナーレースが当たるまで押し込んで行きます。
最後、インナーレースに当たる瞬間はアウターレースとそれぞれ逆方向の力が加わります。
このようにアウターレースだけに力を加えてしまうと、作用反作用の法則で、同じ力でインナーレースを逆方向に押してしまう事になります。 だから、アウターレースしか力を加えることのできないソケットは使用してはいけないのです。
センターがズレない圧入方法
こうさせない為には、アウターレースとインナーレースを同時に押す事ができる鉄などでできた治具を使用します。 こうすれ同時に同じ方向へ押し込む事ができレースのセンターはズレません。
←この方法であれば、インナーレース&アウターレースを同時に圧入する事ができるので、ボール、レースに負荷を掛けずに圧入する事ができます。
M10だとしたら、4.5〜5.0kのトルクで軸力約3tが発生します。
つまりアクスルシャフトを締付けた状態で圧入する事ができ、本来欲しいはずの「アクスルシャフトを締付けた状態でレースとボールの整列が正しく揃う」のです。
理想は5t程度の小型の油圧プレスがあれば良いですが、ホームセンターでもベアリング圧入する治具程度は揃える事ができます。
HONDA純正のベアリング交換治具はハンマーで叩いて圧入する仕様になっています。 もちろんインナーとアウターレースを同時に押し込める仕様で問題ないのですが、気をつけなければならない事が一点あります。
それは、インナーレースに到達(当たった)した瞬間に、反対側のインナーレースだけを押してしまう!! 事に注意しなければなりません。これを怠ると、最初に入れたベアリングのインナーレースが押されて、センターがズレてしまいます。
なので、叩いて入れる側はもちろん、先に圧入完了したベアリングのインナ&アウターレースを同時に抑えなければなりません。
これを怠ると、後に圧入したベアリングはレースのセンターが揃います。
しかし、先に圧入したベアリングはホイール内側からディスタンスカラーを介してインナーレースが外側へ押され、レース同士のセンターがズレてしまいます。
見た目にはちゃんとベアリングが装着されていますが、指で回すとめちゃくちゃ重い状態になってしまうのは、コレが原因です。
ここに気付いていないショップはかなり多いので要注意です。 一番最初に圧入するベアリングだけはソケットで叩いてもOKですが、後のベアリングはソケットを使用できません。
ソケットを使用するということは治具を持っておらず、最終的にレースのセンターがズレた状態で圧入されてしまいます。
サンデーメカニックならまだしも、技術料を受け取る側のプロはソケットを使用するなど言語道断。 残念ですがそのショップにベアリングを交換する実力はありませんので、違うショップに依頼してください。
4. 信用できるショップの見分け方!



こんな感じで、専用治具は無くても交換できる! と言っていたらめちゃくちゃ怪しいです。 ショップの店員さんを目の前にすると話しにくい内容なので、事前に電話で問い合わせすると良いと思います。 若しくは「うちは専用治具を持っていないから、できません。」とハッキリ断るショップは信用できます。 ベアリング交換以外の作業は任せても良さそうですね!
5. 量産車とは異なるレーサーのベアリング圧入方法
レーサーのディスタンスカラーは量産車に使われている鉄と違い、アルミやチタンが使用されています。 しかも軽量化を追求しているために肉が薄い!!!
だからディスタンスカラーの剛性が低いんです。
アクスルシャフトを指定トルクで締め付け、軸力が3tを受けるとディスタンスカラーの長さが短くなってしまいます。
つまり…治具を使ってベアリングを叩いて圧入した後、アクスルシャフトを締め付けると、ベアリングのインナーレースが内側に寄ってしまい、レース同士のセンターがズレてしまうんです!!! ( ・∇・)

もちろん大丈夫です!! レーサーは、メカニックによって常に同じ締め付け条件を維持する事ができます。
ネジ部と座面部のグリスの条件、精密トルクレンチを使用して毎回同じ締め付けトルクを管理する事で得られる「3tの軸力」。 つまりレーサーの場合は、誰がアクスルシャフトを締め付けてもディスタンスカラーには3tの力しか掛からない前提で設計できるのです。
方法1. レーサーのホイールベアリングは初めから受ける軸力3tで圧入!

量産車もプレス機を使うのがBEST!!
方法2. プレス機で圧入する
手順1. L側ベアリングを圧入する
まず、L側ベアリングを治具を使用して圧入します。 L側ベアリングはホイールに突き当てる構造なので、突き当たるまで圧入します。プレス荷重は3t。
*アウターレースは、アクスルシャフトの軸力を受けませんが、最後にアウターレースをリテーナ―で締付け位置決めをします。万が一圧入不足があると、締付トルクを圧入荷重に奪われ、本来の位置決めができなくなる恐れがあります。それを防ぐためのプレス圧入です。
*専用冶具を使用しホイール内部の突き当て部のすぐ裏で反力を受けます。ホイール全体で受けてはいけません。
手順2. ディスタンスカラーを挿入する。
ベアリングの入っていないR側からディスタンスカラーをセットします。
手順3. R側ベアリングを3tで圧入する
専用冶具を使用してR側ベアリングを圧入します。ディスタンスカラーとのセンターズレに注意します。
本圧入する前にアクスルシャフトの通りを確認します。 OKであれば、プレス圧力を3tまで上昇させます。
この時、R側ベアリングを押さえておかないと抜けてしまいます。 R側、L側それぞれインナーとアウターレースを受ける事のできる治具を使用してプレス荷重を高めます。
こうする事で、ディスタンスカラーを左右両ベアリング(インナーレース)からプレスする事が可能になります。
プレスによってディスタンスカラーの長さが少し縮んでいますが、治具によってインナーれーす、アウターレースを同時に押している為、ベアリングのレースにズレはありません。
しかしプレス荷重を抜くと、ディスタンスカラーは元の長さに戻ります。(長くなります)その為、両サイドのホイールベアリングのインナーレースだけが外側へ向かって押される事になります。
指で回ベアリングを回すととても重たく、思わず「え!?コレフリクションの塊で全然ダメじゃん!」と思うほどです。
しかしコレが正常な状態ですので問題ありません。 ホイールをバイクにセットし、確実な管理の下でアクスルシャフトを締付け、軸力3tを受ければキッチリとベアリングのセンターが揃います。
レーサーの場合、仮にアクスルシャフトの締め付けが弱いと、締結剛性も変化しますが、ベアリングのセンターが出ずフリクションロスが増加します。
逆に強く締めすぎても、ディスタンスカラーが縮みすぎてベアリングのレースが内側へ寄りすぎます。 → やはり性能を発揮できません。
バイクの部品の構造と使用を理解しているメカニックが居ないとライダーはバイクの性能を発揮させる事はできないのです。 メカニックってやっぱり凄い!!!

マルケスの言う通り! そうしたいのはもちろんなのですが、、、
街乗りバイクは]締め付ける条件を一定に保つ事ができません。同じようにトルクレンチを設定しても、グリスを塗る人や塗らない人、トルクレンチを使わない締め付けでも、狙いの性能を発揮できなければなりません。
なので整備の条件がバラついても、性能を発揮できる仕様になっています!!
量産車の場合は、ディスタンスカラーが肉の厚い鉄を使用しています。(※一部車種アルミ)なので締めすぎてもディスタンスカラーが縮んで短くなる事がありません。 だから、インナーレースがタッチするまでの圧入でもOKなのです。
6. ベアリング圧入のまとめ
絶対ダメな方法!!
コレならOKな方法!!
最善の方法!!
インナーとアウターレースを同時に押さない圧入はありません。必ず同時に押します。 もしどちらか片側だけを押す状態になってしまったらどこかにエラーが存在します。 これは圧入が必要な全てのボールベアリングに言える事です。 ベアリング交換で性能を向上させるお手伝いができれば嬉しいです☆
Let`s Fun! Ride! Run!
Andy