バイクの正しいホイールベアリングの交換方法|ソケットを叩く方法は大間違い!!

+製造年月日が古くなると、ホイールベアリングの動きがゴリゴリしてスムースに回転しなくなってきます。こうなると交換のサイン。 よく工具のソケットを使ってカンカン!とハンマーで叩いて入れているショップのおじさんを見ますが・・・「それダメーーー!!」 工具を治具代わりにしてベアリングを打ち込んでいるバイク屋は信用してはいけません。ベアリングの構造を100%理解できれば、なぜだめなのか?が分かります。  ライダーが信用できるショップを見つける手助けに繋がれば嬉しいです!

走行中はずっと回転し続ける運命にある部品、ホイールベアリングはとても苛酷な使われ方です。ドライブチェーンのような一般的な消耗品ではないので在庫しているショップはありません。 中に入っているグリスも交換してもらえません。 なのにバイクの全重量を支えながらスムーズに回転しないと、燃費は悪くなるし、エンジンが生むパワーを失ってしまう。 大きく性能を左右する小さな部品です。

普段あまり気にしないままずっと乗り続け、不具合に気づかないまま走り続けると重大な事故に繋がる恐れがあります。

 

1. 恐怖!ベアリングが壊れるとこうなる…

グリスが飛び出し無潤滑で動いた結果がコレ… ボールとレースが直に接触して熱膨張→自らが削られ、グリスと共にモクズとなった図。
ベアリングのボールが飛び出し、その後も走行した結果、ボールがディスタンスカラーを削り取ってしまった。ホイールロックの可能性もあり、かなり危険!

 

こうならないよう点検をした方が良いのは言うまでもありません。しかしこのベアリングはバイクに装着された状態だと、ダストシールしか目視できません。その中にいるベアリングがどんな状態なのかは、ホイールを外さなければ確認できないのです。

もしホイールを外す機会があれば、この2つを点検しましょう!

 
  1.  ベアリングを指で回してみて、「ゴリゴリ」感を感じたらNG。
  2. ダストシールより内側に漏れで出たグリスが見えたらNG

上記2つが両方無ければOKです。

グリスがダダ漏れになっていると、ダストシールから放射状にうっすら飛び散っている場合がほとんどですから、洗車する時に、ホイールのサイドカラー周辺で明らかに水をはじいているような事が無いか気にすると、確認する精度が高まります!

*ついでにリンク周りもチェック!

2. ベアリングの有るべき姿

上の写真のような状態を未然に防ぐには、交換するしかありません。  ライダー歴が長くなってくると、仲間やチームの中に自分で交換した事のある知り合いが居ると思います。  しかしその半数は間違った方法で圧入してしまっています。 するとベアリングの寿命を縮め、摩擦ロスが増大しパワーロスしてしまい、交換した意味を失ってしまいます。

そうさせない為の第一歩はベアリングのあるべき姿を知る事です。

あるべき姿1. ベアリングの名称と機能

基本的なベアリングの構造だよ!

よくある間違い! →  「インナーレースがアクスルシャフトの上で回転する!」

ホイールを置いてベアリングを回転させる時、指でインナーレースを触ってクルクルと回して回転状態をチェックします。そのままのイメージでバイクに装着した後も同じと思いがちです…。  ホールに圧入されているのはアウターレース!  固定がインナーで、回転するのがアウター側ですから覚えて置いてくださいネ!

ホイールベアリングは、レースにある溝の中でボールが点接触で転がる事でスムーズな回転を生み出す事ができます。

 

あるべき姿2. レースとボールの位置関係のあるべき姿

ボールがスムースに回転するには、アウターレースとインナーレースの溝センターが完璧に揃う事です。

レース同士の位置はボールを介してたまたまそこに居るだけです。ボルトなどで固定はされていません。
圧入する前のベアリングは自然にレース同士のセンターが出ています。 この状態をホイールに圧入した後もキープさせる事が絶対です!!

 

ソケットでコンコン!と叩いてては絶対にセンターが出ません。 ベアリングの寿命を縮め、転がり抵抗が増加しエンジンパワーをロスしてしまいます。

 

あるべき姿3. ベアリング部(ホイールハブ)の構造を理解する。

ホイールベアリングが収まるハブ部の部品構成はおおよそこのようになっています。  アクスルシャフトを締め付けると、軸力約3tが発生します。 その軸力を受け止める部品に色を塗りました。  色が塗ってある部品にアクスルシャフト(ボルト)の反力が掛かります。

リアタイヤを真上から地面の方向へ向かって見た図です。

排気量によってこの構造は大きく異なりますが、ビッグバイクはメーカーを問わずこの構成です。 ドライブチェーンの反力を受けるハブベアリングはボールが2列あります。

ホイールベアリングは左右に1個づつ装備され、合計3個のベアリング(ボールは合計4列)が使用されています。 *ヤマハ車はハブベアリングがローラータイプが主流です。

ここで最も大切な事は、合計3個(ボール4列)のベアリング全てが、インナーレースアウターレースボールのセンターがぴったり揃った状態に組み込む事です。

インナーレースとアウターレースのセンターが揃っていない場合、ボールの転がる溝がズレて回転が重たくなってしまいます。

ホイールの内部構造

ホイールの内部構造です。 アクスルシャフトの軸力(反力)はディスタンスカラーが受けています。

このディスタンスカラーが持つ剛性が低いと、アクスルシャフトを締めた時に縮んでしまう事があります!

3. ソケットで叩くとセンターが出ない理由

結論から言うと、アウターレースとインナーレースを同時に押し込む事ができなからです。

ソケットを使用する場合、ベアリングのアウターレースだけを押し込む事になります。 こんなイメージ↓

ソケットはアウターレースしか接触してない!

 

この状態でハンマーでカキン!カキン! とディスタンスカラーにインナーレースが当たるまで押し込んで行きます。

最後、インナーレースに当たる瞬間はアウターレースとそれぞれ逆方向の力が加わります。

逆方向に力が加わり、ベアリングのセンターがズレる!!

このようにアウターレースだけに力を加えてしまうと、作用反作用の法則で、同じ力でインナーレースを逆方向に押してしまう事になります。 だから、アウターレースしか力を加えることのできないソケットは使用してはいけないのです。

こうさせない為には、アウターレースとインナーレースを同時に押す事ができる鉄などでできた治具を使用します。 こうすれ同時に同じ方向へ押し込む事ができレースのセンターはズレません。

この治具なら同時に押し込める!

理想は小型の油圧プレスがあれば良いですが、ホームセンターでもベアリング圧入する治具程度は揃える事ができます。

HONDA純正のベアリング交換治具はハンマーで叩いて圧入する仕様になっています。 もちろんインナーとアウターレースを同時に押し込める仕様で問題ないのですが、気をつけなければならない事が一点あります。

それは、インナーレースに到達(当たった)した瞬間に、反対側のインナーレースだけを押してしまう!! 事に注意しなければなりません。これを怠ると、最初に入れたベアリングのインナーレースが押されて、センターがズレてしまいます。

なので、叩いて入れる側はもちろん、先に圧入完了したベアリングのインナ&アウターレースを同時に抑えなければなりません。

 

これを怠ると、後に圧入したベアリングはレースのセンターが揃います。  しかし、先に圧入したベアリングはホイール内側からディスタンスカラーを介してインナーレースが外側へ押され、レース同士のセンターがズレてしまいます。 見た目にはちゃんとベアリングが装着されていますが、指で回すとめちゃくちゃ重い状態になってしまうのは、コレが原因です。

ここを知らないショップはかなり多いので要注意です。 一番最初に圧入するベアリングだけはソケットで叩いてもOKですが、後のベアリングはソケットを使用できません。 つまり、治具を持っているショップであれば最初から治具を使用して圧入するはずです。

ソケットを使用するということは治具を持っておらず、最終的にレースのセンターがズレた状態で圧入されてしまいます。 サンデーメカニックならまだしも、技術料を受け取る側のプロはソケットを使用するなど言語道断です。  そのショップにベアリングを交換する実力はありませんので、違うショップに言った方が良いでしょう。

4. 信用できるショップの見分け方!

シビ子
あの〜…、自分のバイクのホイールベアリングを交換したいんですけど、圧入治具や専用工具はありますか〜??
良男
お問い合わせありがとうございます!! もちろん専用工具は揃っておりますのでベアリング交換可能です! 当店にお任せください!!
悪男
電話ありがとね〜!! 治具が無くても交換できるんですよ〜! プロに任せれば大丈夫! すぐに持ってきて下さいね〜!!

こんな感じで、専用治具は無くても交換できる! と言っていたらめちゃくちゃ怪しいです。  ショップの店員さんを目の前にすると話しにくい内容なので、事前に電話で問い合わせすると良いと思います。   若しくは「うちは専用治具を持っていないから、できません。」とハッキリ断るショップは信用できます。  ベアリング交換以外の作業は任せても良さそうですね!

5. 量産車とは異なるレーサーのベアリング圧入方法

レーサーのディスタンスカラーは量産車に使われている鉄と違い、アルミやチタンが使用されています。 しかも軽量化を追求しているために肉が薄い!!!

だからディスタンスカラーの剛性が低く、アクスルシャフトを指定トルクで締め付け、軸力が3tを受けるとディスタンスカラーの長さが短くなってしまいます。

つまり…治具を使ってベアリングを叩いて圧入した後、アクスルシャフトを締め付けると、ベアリングのインナーレースが内側に寄ってしまい、レース同士のセンターがズレてしまうんです!!!  ( ・∇・)

乱暴ー
俺のベアリングーー!どうしてくれるんダーーーー!!!!!

もちろん大丈夫です!! レーサーは、メカニックによって常に同じ締め付け条件を維持する事ができます。

ネジ部と座面部のグリスの条件、精密トルクレンチを使用して毎回同じ締め付けトルクを管理する事で得られる「3tの軸力」。 つまりレーサーの場合は、誰がアクスルシャフトを締め付けてもディスタンスカラーには3tの力しか掛からない前提で設計できるのです。

方法1. レーサーのホイールベアリングは初めから受ける軸力3tで圧入!

量産車もプレス機を使うのがBEST!!

HRCが公開しているサービスマニュアル!

方法2. プレス機で圧入する

 ①R側ベアリングを圧入する。

まず、R側ベアリングを治具を使用して圧入します。 R側ベアリングはホイールに突き当てる構造なので、突き当たるまで圧入します。プレス荷重は3tです。

*アウターレースには、アクスルシャフトの軸力を受けませんが、最後にアウターレースをリテーナ―で締付け位置決めをします。万が一圧入不足があると、締付トルクを圧入荷重に奪われ、本来の位置決めができなくなる恐れがあります。それを防ぐためのプレス圧入です。

*専用冶具を使用しホイール内部の突き当て部のすぐ裏で反力を受けます。ホイール全体で受けてはいけません。

 ②ディスタンスカラーを挿入する。

ベアリングの入っていないL側からディスタンスカラーをセットします。

 ③R側ベアリングを圧入する。

専用冶具を使用してR側ベアリングを圧入します。ディスタンスカラーとのセンターズレに注意します。

本圧入する前にアクスルシャフトの通りを確認します。 OKであれば、プレス圧力を3tまで上昇させます。

この時、R側ベアリングを押さえておかないと抜けてしまいます。 R側、L側それぞれインナーとアウターレースを受ける事のできる治具を使用してプレス荷重を高めます。こうする事で、ディスタンスカラーを左右両ベアリングからプレスする事が可能になります。

プレスによってディスタンスカラーの長さが少し縮んでいますが、治具によってインナーれーす、アウターレースを同時に押している為、ベアリングのレースにズレはありません。

しかしプレス荷重を抜くと、ディスタンスカラーは元の長さに戻ります。(長くなります)その為、両サイドのホイールベアリングのインナーレースだけが外側へ向かって押される事になります。 この時指で回すととても重たく、思わず「え!?コレフリクションの塊で全然ダメでしょ!」と思うほどです。

しかしコレが正常な状態ですので問題ありません。 ホイールをバイクにセットし、確実な管理の下でアクスルシャフトを締付け、軸力3tを受ければキッチリとベアリングのセンターが揃います。

 

レーサーの場合、仮にアクスルシャフトの締め付けが弱いと、締結剛性も変化しますが、ベアリングのセンターが出ずフリクションロスが増加します。

逆に強く締めすぎても、ベアリングのレースが内側へ寄りすぎてしまい、やはり性能を発揮できません。

バイクの部品の構造と使用を理解しているメカニックが居ないとライダーはバイクの性能を発揮させる事はできないのです。  メカニックってやっぱり凄い!!!

マルケス
じゃあなんで量産車もプレス機を使わないの?? その方がより精度の高い組み立てが可能なんでしょ!?

マルケスの言う通り!   そうしたいのはもちろんなのですが、、、 街乗りバイクは

 締め付ける条件を一定に保つ事ができません。同じようにトルクレンチを設定しても、グリスを塗る人や塗らない人、トルクレンチを使わない締め付けでも、狙いの性能を発揮できなければなりません。  整備の条件がバラついても、性能を発揮できる仕様になっています!!

量産車の場合は、ディスタンスカラーが肉の厚い鉄を使用しています。(※一部車種アルミ)なので締めすぎてもディスタンスカラーが縮んで短くなる事がありません。   だから、インナーレースがタッチするまでの圧入でもOKなのです。

6. ベアリング圧入のまとめ

絶対ダメな方法!!

治具を使わずソケットだけで叩き込む圧入!  レースのセンターは揃わない!!

 

コレならOKな方法!!

治具を使ってインナー&アウターレースを同時に叩き込む圧入! 反対側のベアリング受けも確実に!!

 

最善の方法!!

治具を使ってプレス機で3tを計測しながら圧入!  最も高いパフォーマンスを発揮できる方法!もちろん反対側のベアリング受けも確実に!
インナーとアウターレースを同時に押さない圧入はありません。必ず同時に押します。 もしどちらか片側だけを押す状態になってしまったらどこかにエラーが存在します。 これは圧入が必要な全てのボールベアリングに言える事です。  ベアリング交換で性能を向上させるお手伝いができれば嬉しいです☆

合わせて読むと理解が深まるオススメ記事↓

Let`s Fun! Ride! Run!
Andy

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--コメント--
  1. ミロ より:

    こんにちは。
    いつも楽しく読ませて頂いています。このベアリングの圧入はとても勉強になりました。色々なブログでショップや個人の作業を読むとソケットを叩いて入れるだけとか、酷いものだと冷凍庫にベアリングを入れたり、ハブの温度も計らずバーナーで炙る等で作業をしている方がいます。ディスタンスカラーについても当たるか当たらないかギリギリで調整した方が良いとか…少し抵抗があるくらいが良いとか。ほぼ都市伝説化しています(-_-;) 近くのショップに聞いみても明確な返答がありませんでした。
     そこで質問なのですが、フロント側ベアリングの圧入で最初に入れる側(基準側)はどうやって判断したらいいのでしょうか?S/Mではきちん右とか左か書いてる場合、外した逆に入れるとしか書いてない場合、全く書いて無い場合があります。ショップに聞いても見てみないと…て言われますが見て分かるものでしょうか?そもそもサービスマニュアルも本当に正確なのか?と思ってしまいます。 メーカーや年式、車種で右だったり左だったり、書いてなかったりと…ちなみに倒立フォーク、ダブルディスクでメーターケーブル無しのタイプになります。よろしくお願いします。

    • Andy より:

      ミロさん コメントありがとうございます(╹◡╹)

      先ず「基準側」はどう判断すれば良いか? のご質問についてお答え致します。

      パターン1、アウターレース用ストッパがある場合
      中・大型の排気量のバイクによく見られる構造ですが、基準側のベアリング(最初に圧入する方)にはアウターレース用の
      ストッパーが“片側にだけ設けられている”場合がほとんどです。

      ホイールハブの、ベアリングアウターレースが接触する面
       ・右側:シリンダー形状(位置決め無し)
       ・左側:アウターレース用ストッパがあり位置が決まる
      このような形状になっています。

      これはベアリングを外しれ見ないと確認ができません。 ストッパー側からベアリングを圧入し、ディスタンスカラーを入れ、反対側からディスタンスカラーに
      インナーレースが当たるまで圧入する。 と言った手順が一般的です。

      ミロさんのバイクが、Wディスク&倒立フォークとの事ですから、恐らく上記仕様に当てはまるはずです。
      サービスマニュアルにベアリングの位置関係などを示した図解などはありますか??

      もしあれば、ストストッパーがどれか恐らくわかると思いますので、お問い合わせよりメールを
      送って頂ければ、追記して返信させて頂きます。  お気軽に利用して下さい(╹◡╹)

      パターン2、面一で合わせる場合(参考までに)
      比較的小排気量、安価なバイクに使われる方法ですが、どちらか基準となる側のベアリングを
      基準面に合わせ、組み立てて行く方法もあります。  この場合はSM等に明確な指示が表記され
      ています。

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