
ちょっとでも早くエンジンを掛けたいたいですよね。セルが回るキュルキュル音は心臓に悪いので少しでも短くしたい。キャブモデルのバイクはちょっとしたコツで確実&早くエンジンが掛かるようになります。 特にZRX1200、1100オーナーの方は始動直後の4番IN側カムに早くオイルを供給できるのでカジリ予防にも繋がります☆
最新バイクは全てフューエルインジェクションと言うシステムを使ってエンジン内部に燃料を送り込んでいます。 対してキャブレターと呼ばれるユニットを搭載してているバイクもまだまだたくさん走っていて、特にネイキッド系のバイクで中古で購入した場合などはキャブ車が多いのではないでしょうか。 このキャブと呼ばれるユニット。。。中々の曲者でトラブルの原因になる事が多々あります。 でも構造と機能を知ればトラブルにも対処できますし、不具合を予防する事もできます。 キャブ車オーナーの方は是非ご覧ください♪
- コックを「PRI」にして30秒待つ。
- チョークを目一杯引く。
- アクセルに触らずセルボタンを押す。
- コックを「ON」にして30秒待つ。
- チョークを目一杯引く。
- アクセルに触らずセルボタンを押す。
この3つの動作でエンジンは一発で掛かっちゃいます! なぜか!?↓
記事の目次
①燃料コックを「PRI」にして30秒待つ
この「PRI」はPRIMARYの頭文字3文字をとった略字で、プライマリーと読みます。 燃料コックをこの位置にすると、ガソリンタンクからキャブレターへの燃料通路が開き、エンジンが停止している状態でも、ガソリンを流す事ができます。 なぜエンジン始動前にこの位置へ変更し、しかも30秒待つ必要があるのか? それは燃料コックの機能を知ると理解が簡単です。
燃料コックはこの部品!

この部品が燃料コック! 黒いツマミに小さな矢印が浮き出てるよ!
これが燃料コックです。 燃料コックはタンクとキャブレターの間に設置されていて、ガソリンの通路を遮断する機能と、予備燃料へ切り替える機能の2つをもっています。
- ON=通常走行する時の位置。エンジン稼動中は燃料通路が開き、エンジンが停止すると通路が閉じる。
- RES=予備燃料を使う時の位置。 エンジン稼働中は燃料通路が開き、エンジンが停止すると通路が閉じる。
- PRI=エンジンの状態に関係なく、ガソリン通路が常に開いた状態。
ON&PRIの位置では、エンジンが掛かっている時だけガソリン通路が自動的に(負圧を利用して)開きます。
対してPRIは、エンジンに関係なく開きっぱなしです。 ここが大きく違うポイントです。
ガソリンが通過していく部品の順番を知る
この順番を知ると燃料コックがどんな部品に影響を及ぼすのかを知る事ができます。
バイクのガソリンの流れるイメージ
「ガソリンタンク」 → 「フューエルフィルタ」 → 「燃料コック」 → 「キャブのフロート室」 → 「インテークマニホールド」 → 「エンジン燃焼室」 → エキゾーストパイプから排気ガスとなって排出。
とこのような順番で部品の中を流れていきます。 燃料コックで通路を遮断する訳ですから、コックを「ON」の位置にしてエンジンを停止した場合は、コックの次の部品、「キャブのフロート室」へガソリンが流れていかない事がわかると思います。 ※「PRI」位置においても同じです。
エンジン停止中にキャブレター内のガソリンは勝手に無くなる!!
これが、キャブレターを詰まらせる根源であり、エンジンを掛かりにくくする原因でもあるのです。 その為に燃料コックがあるくらいですからね。 ここを順番に紐解かないと真の理解には繋がらないので非常に大事なポイントです!
ガソリンは気温がマイナス43℃以上で液体→気体に変化できる
危険物取扱者の資格などを持っている人は理解が早いと思います。北海道の大地にガソリンをバケツに満タンにして放置したとします。−44℃の場合は、ガソリンが気化しないのでいつまで経ってもガソリンは減りません。 しかし−43℃になると液体のガソリンは少しづつ気体に変わり、大気と混ざってどこかへ行ってしまいます。 つまり量が減っていきます。 これは温度が高くなればなるほど気体になりやすくなります。 水が乾く時も気温が高い方が乾きやすい事と同じです。
液体のガソリンは、人間が普通に生活する気温においては簡単に気化できると言う事がわかります。
キャブレターにはミニガソリンタンクのフロート室がある
ここではキャブの説明は割愛します。 このミニガソリンタンクを「フロートチャンバ」または「フロート室」と言います。※以下フロート室とします。 バイクが冬眠している間に、このフロート室である事が起こっています。 それは先ほど理解したガソリンの気化する温度と関係しています。
キャブレターユニットのフロート室(フロートチャンバ)の構造と機能
ガソリンは様々な添加物から成り立っています。 エンジンが停止している時、フロート室からも少しづつガソリンが気化していきますがこの時、ガソリンに含まれる気化しやすい成分だけが気体になり大気へと旅立っていきます。
気化しにくい成分はフロート室に残ったままです。 気化するとガソリンが少なくな流ので自動的にタンク → フロート室へ供給されます。やがて満タンになるとフロートバルブが閉まります。 するとまた気化しやすい成分だけが気体になり待機へと放出され、気化し難い成分はフロート室へ残ります。気化して量が減った分が新たに供給されます。
- フロート = 「浮き」と呼ばれる部品で、キャブの中に溜めたガソリンにプカプカ浮いてきます。
- フロートバルブ = フロートが浮き上がるとガソリンを止め、ガソリンが消費され無くなるとフロートが下がりガソリンを流入させます。
- バルブシート = フロートバルブと密着する事で、ガソリンの流入を止めます。
このフロートが浮いた時にはガソリンが止められ、沈んだ時にはガソリンが流れてくる構造です。
↓↓動画の中でガソリンが流れてくると黒い部品が”浮いて”きます。 この黒い部品が「フロート」です。

フロート室へガソリンが入ったり、止められたりする作動図です。
しっかり浮き輪が仕事してる🤔 pic.twitter.com/1FWdj6C2mZ
— ごうじ (@NS1gouzi) 2018年1月15日
停車中、このサイクル「フロートが沈む→浮く」をずっと繰り返していると、やがて気化し難い成分だけがキャブのフロートチャンバ残る事になります。 フロートには空気がありガソリンが少しづつ酸化していきます。 すると反応が促進されガム質になったり緑サビが発生してキャブレター内部の非常に細い通路を詰まらせ、エンジン不調を起こします。

ガム質がびっしり!
フィルターを通り抜けたのでなく、この場所で異物が生成されています。

長期保管の典型例
やっぱり長期保管するとこうなる。。。茶色いスラッジがビッシリです。
冬季シーズンなどずっとエンジンを始動しない期間が長く続くと、この負のサイクルが永遠に続く事になり非常に手間の掛かる「キャブレターオーバーホール」をしなくてはなりません。この負のサイクルを断ち切るには、絶えず燃料がフロート室へ供給される事を断ち切らねばなりません。
そう!!燃料コックを設けて燃料供給経路を絶ってしまえば、キャブのガソリンが気化しても新たなガソリンは供給されませんから負のスパイラルが発生しません。
キャブを詰まらせ始動性を悪化させてしまう負のスパイラルはコレ!
①キャブ内のフロート室ガソリンが気化
↓
②気化し難い成分が残る
↓
③フロートが下がり燃料タンクから新たなガソリンが補充される
↓
④キャブ内ガソリンが気化
↓
⑤気化し難い成分だけが残る(2回目)
この負のサイクルを繰り返す事で、フロート室(キャブ)には気化し難い成分ばかりが濃縮されていきます。 *良く無い成分 = 気化し難くエンジンが掛かり難い & キャブの狭小通路を詰まらせる
この負のスパイラルを絶つ!と言う大きな使命と機能を持った部品が「燃料コック」です!!! 上表の③燃料タンクから新たなガソリンンが補充される事を防ぐ事ができます。 いや~これで解決!愛でたし愛でたし(^O^)
・・・とはいきませんでした。 なぜ??それはユーザーの使い勝手と開発者の間ですれ違いが生じてしまったからです・・。
負圧式と普通式の2種類の燃料コックがある!

NSR250の燃料コックだよ!
NSR250の表示をよーく見て下さい。「OFF-ON-RES」になっています。

ZRX1200の燃料コックだよ!
ZRXの表示をよーく見て下さい。「RES-PRI-ON」になっています。アレ?OFFはドコ行った!?
さて、なぜこのように表記が異なっているのでしょうか?? そもそも燃料コックはバイクを保管する時に燃料の負のスパイラルを絶つ為に存在している事は先に勉強しました。 もちろん燃料コックをOFFにすればガソリン経路は絶たれ目的達成です。 OFFにすれば・・・ね!?
そう! ついうっかり燃料コックを開いたまま一冬を越してしまうユーザーがたくさんいたのです!!ww せっかく燃料コックを設けてもOFFにしなければ意味がありません。 寒い冬、エンジンを掛ける気もないのにご丁寧に燃料だけは供給してくれる優しいライダーが多かったんですね!(^^)!
しかし暖かくなってきた春先に「さあ俺のバイクに乗ろう!」と思った時はすでに遅し! キャブオーバーホールをしないとエンジンがかかりましぇーん。。。(-"-) となるユーザーが非常に多かったのです。しかもキャブオーバーホールは4気筒バイクなどは脱着に手間が掛かり、更に小さな部品全てを分解洗浄するので工賃も跳ね上がってしまいます。 (決してぼったくりではありません。ほんとに工数が必要なんです)
それを機に乗るタイミングを失い「更に乗らない」 → 「もっとコンディション悪化」 → 「更に乗る気が失せる」 → 「バイク王に電話」・・・南無阿弥陀仏。
と新たな負のスパイラル発生!! ユーザーが忘れてもしっかり燃料コックを閉じてくれる機構を追加したのが「負圧式燃料コック」です。
負圧式燃料コックとは?
今までにあった「OFF」の位置がありません。 その変わり、ONの位置でもエンジンが掛かっていない時には、自動的にOFFになります。 エンジンが掛かれば自動的にONになります。
これで、万が一オーナーが燃料コック位置をOFFにし忘れても、全く問題ありません。 旧式のコックしかなかった時代は、家に到着する数キロ手前でコックをOFFにして、ホース内に残ったガソリンだけで走り、家まで走れるギリギリの距離を伸ばす事に快感を感じていた経験のある方は絶対30歳以上でしょう!笑
この負圧式コックのお陰でキャブトラブルは激的に減りました。しかし今度は長期保管後にエンジンは掛かるけど、セルを長く回さないと掛からない! と言う事象が起こります・・・。 後ほど池上先生が教えてくれるでしょう♪♪
②チョークレバーを目一杯引く!(スタータ式)
キャブモデルのバイクは、クラッチレバーの横あたりに「CHOKE」と書いたレバーを見た事ありませんか? *場所はモデルによって大きく異なります。

エンジン始動の位置だよ!
始動する時は、ストッパーに当たるまで、目一杯引いて下さい。慣れてくると、ハーフチョークなんて位置も自分で分かるようになるかもしれません。

始動したら走行ポジションに戻すよ!
エンジンが掛かり安定したら走行ポジション(元の位置)へ戻してください。エンジンがしっかり温まるとアイドリング回転数が4000回転位へ自然に上昇します。
そしてこの時、絶対に守らなければならない事があります。 それは、絶対にアクセルを開けてはならない!と言う事です。 アクセルを開けた方がエンジンは掛かりやすいような気がしますよね。 しかしアクセルを開けるとエンジンは掛かりにくくなってしまう事は間違いありません。
それはなぜ?
アクセルを開けると始動する為にピッタリ合わせたガソリンと空気の割合を崩してしまう!事が理由です。
ガソリンは液体のままでは燃える事はなく、気体に変化させ、空気と混ぜた混合気をエンジン内部に送り込む必要があります。この時、ガソリン1gに対して、空気14.7gを混ぜ合わせた気体に火をつけ燃焼させると、完全燃焼させる事ができます。 体積比にすると8000倍の空気を必要とします。スゴイ!
しかし! 真冬の朝一番、集合場所の与野コンへ向かおうと自宅でエンジンを掛けます。 この時エンジンは外気温近くまで温度が下がっていますから、ガソリンがちっとも液体から気体になってくれません! アッツアツに熱したフライパンに水を掛けると一瞬で蒸発しますよね!? ガソリンも同じで冷えたエンジンでは中々蒸発してくれないんです。 それでもガソリンの性質上、少しは気化してくれます。
バイスタータバルブが開いて始動専用のガソリン通路を開く
各メーカーの開発陣営はガソリンが気化しにくい条件でもエンジンを始動できるよう設計してくれています。

ハンドルにあるちょークレバーを引くと、キャブのココが動くよ! これを使う時はアクセル開けちゃダメ!!
チョークレバー(スタータレバーと言う場合有)を引くと特別なガソリン通路が解放され、たくさんのガソリンをドバドバっとエンジンに供給します。
この時、ガソリンをドバドバっと吸い出す力は、セルモータで回されたエンンジンが空気を吸い込む力です。 アクセルを開くとその吸い込む力(負圧)が弱くなってしまうので、せっかく始動用のガソリン通路を開いても、ガソリンを吸い出す事ができなくなってしまいます。 もしどうしてもと言う時は、アイドリング回転数を調節するスクリュで少しだけアイドルアップの方向に回してやると効果的です。 間違っても手でアクセルを開けてはなりません! 。。
これで準備完了! あとはセルボタンを押してエンジンを掛けるだけ!!
③これでエンジンは一発で始動する!
- コックを「PRI」にして30秒待つ。
- チョークを目一杯引く。
- アクセルに触らずセルボタンを押す
- コックを「ON」にして30秒待つ。
- チョークを目一杯引く。
- アクセルに触らずセルボタンを押す。
この3つの動作でエンジンは一発で掛かっちゃいます!




そうなんです。長期保管の時にガソリン経路を自動で遮断してくれるのはとても良い事なのですが、いざキャブにガソリンを入れたいと思ってもセルを長く回すしかありません。 でも「PRI」(プライマリーと呼びます)にすると、エンジンが掛かっていなくてもガソリンが流れます。
ですから、長期保管したあと一発目に掛ける時は、コック位置を「ON」 → 「PRI」にする事でキャブにガソリンを供給して満タンにしてやります。 何秒必要か一概に言えないので、とりあえず30秒あれば十分と思います。
そんな燃料コックもキャブレターユニットがなくなりフューエルインジェクションへとシステムが変わると姿を見かけなくなってきました。 昔はこっそり仲間のコックをOFFにするイタズラをしたもんですw いきなりエンジンが止まって、壊れたと勘違いして超絶焦る姿を見て笑うと言う下劣なアソビww
エンジン始動の動画
動画を作成したので併せてご覧ください。
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まとめ
負圧燃料コックの場合はこの3つの動作!
②チョークレバーを目一杯引く! ③アクセルは触れず、セルボタンを押す!(アクセルは絶対開けない!) ④アイドリングが安定したらコックを「PRI」→「ON」の位置へ戻す事を忘れないように!
普通燃料コックの場合はこの3つの動作!
②チョークレバーを目一杯引く! ③アクセルは触れず、セルボタンを押す!(アクセルは絶対開けない!) ④帰宅前1km時点で「ON」→「OFF」の位置へ戻して記録に挑戦w!
あ、タイトルにテクニック3選と書きながら4選でした・・m(__)m。 ツーリング先などでエンジンが温まっていればアクセルを多少開いても始動できるのですが、そのノリでサムーーイ冬の朝一番にやってしまうと、本来すぐに掛かるハズのエンジンが掛かり難くなってしまい、一生懸命セルを回してもプラグが被り、バッテリーは亡くなりといい事がありません。
「寒い時はどうもエンジンが掛かりにくい!」と感じているキャブ車オーナーの方へ特にオススメの方法です♪♪ この記事を読んでエンジン始動が楽になれば嬉しいです!
Let's Fun! Ride! Run!
Andy