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真夏のバイクがオーバーヒートするのはなぜ?2つの原因と対策方法

連日とんでもない気温が日本列島を覆って猛威を奮っていますね。。。

こんなツイートを見かけました↓

連日猛暑が続くじ、自分のバイクもメチャメチャ熱い・・・ 大丈夫だろうか?? と心配になる方も多いと思います。 

水温が上昇する原因は圧倒的にあの2つなんです。 それを解説していきます。

 

水冷エンジンがオーバーヒートする原因

だいだいオーバーヒートする場合は圧倒的にこの2つです。 まぁ原因2については点検さえキッチリやっていれば防げる原因なんですけど、トラブルが起こるマシンはオーナーも無頓着な方が多い傾向にあります。

主な原因はこの2つ

オーバーヒートで最も多い2つの原因
  1. ラジエターファンが回らない
  2. 冷却水の不足

まずこの2つの原因を疑う事からが故障探求のスタートです。

 

原因1. ファンが回っていない

バイクのラジエターファン

最も多いトラブルとして、ラジエターファンの動作不良が真っ先に疑われます。 

ファンが回らない原因として様々な原因が考えられます

  • ファンモーターの故障
  • ファンリレーの故障
  • ファンまでの電気配線が断線
  • 動作司令を出すECUの故障
  • ECUに情報提供する水温センサーの故障

などが代表例です。 

水温が102〜105℃の間でファンが回りだします。 この時掃除機が動いているような「ブオーーーン」と言う音がします。かなり大きな音なのでわかりやすいと思います。 

次に水温が下がってくると、95℃程度でファンが止まります。 

走行風の当たらないアイドリングや、渋滞中は水温がすぐに上昇するのでファンも回りっぱなしになることも。 

しかし日本より暑い国はたくさんあって、そこでも問題ない仕様になっているので、基本的に故障していなければ水温が110℃を超える事は滅多にありません。 (バーンナウトみたいな事すると無理だけど)

 

原因2. 冷却水の不足

バイクのイーバーヒートの原因 ラジエターリザーバタンク

次に多い(原因としては一番多い)のが、冷却水不足です。 

先生

冷却水が不足すると、ファンが回りません!
しかもエラーも出ませんよ!

冷却水は「水」が主成分なので温度によって体積が変化します。 

  • 水温上昇→体積膨張
  • 水温低下→体積縮小

当然、エンジン内部の冷却水が入る容積は一定です。 

つまりエンジン温(水温)が上がれば冷却水は溢れます。

逆にエンジン温が下がれば冷却水は不足します。 

この水の膨張&収縮サイクルを支えているのが、ラジエターリザーバタンクです。 水温が上昇し冷却水の体積が膨張し溢れる分をホースを伝ってリザーバタンクへ放出します。

次にエンジン停止後、水温が下がると冷却水の体積が小さくなり吸収する力が生まれます。→リザーバタンクからホースを伝って冷却水を補充。

 

この時、リザーバタンクの空気が出入りできないと、タンクが大気圧によって押しつぶされてしまうので、大気開放された構造になっています。 

つまり水は少しづつリザーバタンクから蒸発して現象していくのです。 この減少に気づかないまま乗っていると、膨張収縮を繰り返すうちに、冷却水の通路内に空気が入ってしまいます。 

酒和留津根ッ我ー

空気が入ったら大問題だゼ ベイビー。

空気は簡単に圧縮する事ができます。 

冷却水は大気圧では100℃で沸騰します。 しかし密閉空間とする事で最大1.1気圧まで加圧されています。 この加圧によって沸点を100→121℃まで上昇させているのです。 

しかし、エアの混入が一定量を超えた場合は、熱によって膨張した冷却水が、通路内にある空気を圧縮するだけで圧力が上がりません。

先生

冷却水の圧力が大気圧以上に上がらなければ100℃で沸騰します。
峠道など標高1000m程度では96℃で沸騰しますよ!

つまり、冷却水不足によって圧力が上がらず、100℃以下で簡単に沸騰してしまうのです。 

その結果、ファン作動温度の102〜105℃程度まで温度が上がる事はありません。→エンジン停止して自然に冷えるのを待つしかありません。

また、沸騰させてしまっていると言う事は、エンジン内部の一番熱いシリンダー壁(ウォータージャケット)に水ではなく空気が触れていると言う事です。 

空気は水の比熱の1/4.06倍しかありません。 つまり熱を奪う量が圧倒的に少ない! 熱を奪えないという事は金属が局所的に変形してしまい大事なエンジンを破壊しかねません・・・

 

その他の理由

もちろん、上記理由以外にもオーバーヒートする場合はあります。

  • サーモスタット閉じ側で固着
  • ラジエターキャップ不良
  • 冷却水通路の詰まり
  • ウォーターポンプ不良
  • ホースクランプの緩み

上記不具合も頻度は低いものの、発生する可能性は十分に考えられる原因です。 

 

水の性質

簡単な水の性質についておさらいしておきます。

 

リザーバタンクに増える量

水は温度が上昇すると密度が低下して体積が膨張します。 また水の密度は4℃が最も高くなります。

CBR1000RRRの冷却水量が2.29Lなので、どの程度膨張するのか計算してみます。

水温

冷却水量
(cc)

密度
(kg/m3
4℃ 2290 999.997
20℃ 2294(+4cc) 998.223
40℃ 2308(+18cc) 992.210
60℃ 2329(+35cc) 983.200
80℃ 2356(+66cc) 971.818
100℃ 2389(+99cc) 958.393
110℃ 2409(+119cc) 950.62
120℃ 2429(+139cc) 942.76

4℃に比べ120℃では+139cc増加する事になります。 

100℃でも約100ccの冷却水が膨張しリザーバタンクに流れます。 そしてエンジンが冷えればリザーバタンクから100cc分が減少します。

 

水蒸気は1700倍

水蒸気

水が沸騰して水蒸気になると体積は1700倍になります。 

つまり冷却水1ccが沸騰して水蒸気になると1700ccに膨らみます。 

そりゃリザーバタンクはグツグツ煮え立ちますわなw

 

水冷エンジンの構造

水冷エンジンの冷却システム解説図

先生

簡単に言うと、
冷却水がエンジンの熱を吸収し、ラジエターを使って熱を待大気に放出します!

 

ポンプでエンジンの熱い部品に水を送ります。 すると熱が金属→水へ移動します。 熱くなった水をラジエターに送り込んで、ラジエターに走行風が当たります。

するとラジエターが冷えて、水の温度も下がります。 温度が下がった水を再びエンジンに送り込んで熱交換サイクルを構築しています。

 

走行風が当たらないと冷えない

ラジエターは風を当ててあげないと、冷やす事ができません。 

街中を一定速で走るなら40km/hも出せば十分冷えてくれます。 しかし渋滞にハマったり、信号待ちの時は速度ゼロで風は当たりません。 

するとエンジンの熱を大気に放出することができず、水温は上昇する一方になりオーバーヒートしてしまいます。 

その時活躍するのが・・・ラジエターファン!

バイクのラジエターファン

走行風が無くても、ファン(扇風機)を回す事で強制的に風を起こし、ラジエターを冷やします。 

その結果冷却水が冷えて熱交換が可能になるのです。 

 

余談ですが、一昔前のクルマでは「ファンベルト」と言って、ファンをベルト駆動している時代が当たり前でした。エンジンが掛かると冷えていようが、走行していようが強制的にファンが常に動く仕様です。 

このファンベルトがちょくちょく切れてしまうんですよね。 そんな時は彼女のストッキングをビリビリにして結んで応急処置するのが定番でしたよ!(ガチ←知ってる人多いよね?? コメント待ってますw)

バイクの場合は「ファンモーター」なので電気的に駆動させます。 

 

ファン作動温度はなぜ100℃以上なの?

ファンが動き出す水温は102〜105℃の間に設定されています。 

ファンが停止する温度は約95℃です。 

酒和留津根ッ我ー

もっと早く、低い温度で動かせベイビー。

この理由は簡単で

水温が高いほど、ファンを動かす時間を短くする事ができるからです。 

 

外気(空気)の温度を変えることはできません。 水温が高いほど、外気温との差が大きくなります。

すると熱交換の効率が上がるので、ファンを動かす時間を短縮できるのです。 

水温が同じ100℃でも、真夏の気温35℃と真冬の5℃を比べた時、真冬の方が早く冷えるので、ファンを動かす時間が短いです。 

つまり水温を高い状態にしてファンを回す事でファンを小型軽量可できるのです。 

バイクは電動ファンですから作動プログラムを変えるだけで95℃でファンを作動させる事も可能です。 

しかし95→85℃へ下げるのと、105→95℃へ下げるのでは、同じ時間で下げる場合95→85の方が大きなファンを必要とします。 

 

重量やレイアウト、ファンが動く時が渋滞やアイドリングなど低負荷であることなどを総合的に判断してファンの大きさが決められています。 

酒和留津根ッ我ー

だったらなぜもっと温度上げないんだ?
効率がいいなら上げろベイビー

先生

F1では冷却水温を120℃以上に上げる事で、ラジエターを小型化していた時代がありましたよ!

技術的には可能ですが、温度を高い状態を保つには同時に高い圧力をキープする必要があります。 

ウォーターポンプのシール構造、耐圧ホースへの変更、ラジエター強度アップなどダイレクトにコストアップになってしまうので、量産車は1.1k、沸点121℃の仕様に落ち着いています。 

耐圧ホースは固くて曲がらない&整形しづらいので、レイアウト的な制限も厳しくなってきます。 

 

なので、「SSはクソあち〜!足が熱すぎるよ!」なんてセリフが聞こえてきますが、実はその通りなんですw

まぁバイクなんて結局どの車種も夏乗れば熱いけど。

 

真夏の対策

先生

ずばり!
リザーバタンク内の水量を適切に保つ他ありません!

SSやネイキッドに限らず、国産メーカーのバイクであれば、外気温が40℃で、渋滞を走行しても冷却水が沸騰する事はありません。 

はやりトラブルで一番多いのは冷却水不足が引き起こす圧力不足→100℃以下での沸騰です。 

炎天下の中リザーバタンク内の冷却水が蒸発して減少→オーバーヒートの方程式が最も多い原因となっています。

YZFR-1のリザーバタンク

 

また、ラジエターキャップが圧力調整機能を担っています。 

バネのちからを利用して圧力コントロールをしていますが、稀に詰まりや異物噛み、サビの固着などで機能を失っている場合もあります。 

年式が古いバイクの場合は、ラジエターキャップも併せて点検してください。

 

超注意!

エンジンが熱い時にラジエターキャップを開けてはなりません。100℃以上の水

もし100℃を超えていた場合は、キャップを開けた瞬間圧力が下がり一気に沸騰します。 1700倍の体積になるのでとてつもない勢いで熱湯を浴びる事になり大火傷を必ず負います。

点検する時には、必ずエンジンが冷えた状態で行うことが鉄則です!

 

まとめ

バイク(冷却水)がオーバーヒートする原因が分かって頂ければ嬉しいです。 

最近のバイクは排ガス規制が厳しくて水冷エンジンが増えています。 

バイクが正常な状態であれば、真夏のどんなに熱いときでも実力不足でオーバーヒートする事はまずありません。 

 

リザーバタンクの水量は日常点検で行うため、工具を使わなくても確認できる位置にあります。(大体見づらいけど)

長距離を走ると自分のエンジンの熱で更に蒸発していって減るスピードも早まりますから、まだ点検してないな? と思った方は早速量を確認してみてください♪(*^^*)

何か疑問があればお気軽にコメント下さい。←参考にして動画を作る予定です♪

--コメント--
  1. MC41 CBR250に乗っています。
    先月、ツーリング中にこれから山道に入ろうと登り道を走っていたら急にパワーダウンしノッキング、電動ファンも回りっぱなしになりオーバーヒート状態になりました。
    水温計のグラフも真ん中でチェックランプ点灯は無しです。
    何とかエンジンを冷やしファンも止まったのでドリーム店に持ち込み調べたらクーラント液、サーモスタット問題無しでした。
    ただ、診断機に繋ぐとエラー項目が10個ぐらい出て全部PGM-FIって書いてあるのでバッテリーの電圧低下でコンピューターの誤作動?かもと言われました。
    念のためにバッテリー、クーラント、サーモスタット、ラジエターキャップを交換しましたが大丈夫でしょうか?

    • 結論、上記部品交換では不具合解決に至っていない可能性が高いです。

      急にパワーダウン→保護モードに入っている可能性大
      保護モードに入ればスロットルバルブ開かずパワーは出ない
      オーバーヒートでのパワーダウンはごくわずかで、明らかなパワーダウンはエンジンブローです。

      ノッキングする=ギクシャクするではない
      ノッキングとはプレイグニッションとデトネーションの2つを意味する言葉です。
      これらはセンサーでなければ発生有無は分かりません。 

      グラフ真ん中、チェックランプ無し→
      冷却系統に問題無しと判断できます。

      診断機につなぐとエラー項目が10個→連れ添いダイアグを出している
      ここが不具合の本丸である可能性大。 
      1つの電気的不具合が出るとABSなどが釣られてエラーを出してしまいます。

      ECU電源は5V駆動です。
      BATT電圧が多少下がっただけでは誤作動は起こしません。

      上記より、連れ添いを出している電気的な不具合が本丸だと思います。
      よって、バッテリ、クーラント、サーモ、キャップは不具合対策になっていない可能性が高いと考えられます。 

      唯一、バッテリーは走行中、急に死亡する場合があるので、もしそうであれば不具合解消できている可能性があります。
      これ以上は有料情報です(*^^*)

  2. いつもお世話になっております
    理屈に基づいた 分かりやすい情報発信ありがとうございます
    内容の良さに対し 誤記(誤変換)が目立つのがもったいないなあ と勝手に思ってます

    ・耐圧ホースは~ &”整形”しづらい~
    → 成型 か 成形 かと

    ・点検する時には、必ずエンジンが冷えた状態で行うことが鉄則です!
    → 蛇足ですが クルマの整備士時代 仕事だから冷えるのを待ってられず ウェスなどで抑えながら キャップをゆっくり少しだけ回し 圧抜き&ウェスに吹き出し分を吸収させ RADキャップ外してました

    ・そんな時は彼女のストッキングをビリビリにして結んで応急処置するのが定番でしたよ!
    → 私はアラカンですが このハナシは私の上の世代のような...年をごまかしてませんよね? それとも旧車おたくかな

  3. いつも興味深く読ませて頂いています。
    YouTube も楽しく拝見させて頂いています。

    SC82 30thカラーに乗っています。

    質問させて下さい。
    夏場にツーリングから帰ってきた際、そのままエンジンを切っていいのでしょうか?
    冷やす方法も思いつきませんが、エンジン切ってしばらく経ってからスイッチonにすると水温が爆上がりしています。
    とても心配になるんです。
    教えていただけると嬉しいです。

    • とんきちさん

      結論は、全く問題ないのでご安心ください。 

      エンジンを切った直後は、エンジンに触れている冷却水の循環が止まり、熱を奪った(熱くなった)冷却水が流れません。
      その結果、ラジエターに残った水は早く冷えますが、エンジンに残った水は一時的に温度が上昇します。 

      ラジエターキャップの機能が正常に働いていれば、121℃まで上昇しても沸騰しません。 
      仮にファンが動いていた状態でエンジン停止しても121℃まで上昇する事はないので、問題ありません。

      どうしても心配であれば、方法があるにはあります。

      1,キルスイッチでエンジン停止
      2,ファンを1〜2分程度回す
      3,エンジン始動
      4,3秒程度ですぐに停止

      これを行うと、ラジエターのファンによって冷えた水がエンジンの方へ移動するので、水温がグイグイ下がります。

      とは言え、もともとSC82は軽量化の為バッテリー容量が少ない仕様です。
      やりすぎると、バッテリーが上がるので、電圧を見ながら行ってください。

      • 返信ありがとうございます。
        安心しました。
        大事に乗っていきたいと思います。

        これからも楽しくて勉強になる情報をよろしくお願いします。

  4. 勉強になります。
    クルマのファンベルトって、最近聞きませんが、そういう事になってるんですね。

    先週ロングに行って来ましたので、アフター点検をしておきます。ちょうどPGM-FI警告があり35番でしたので、キャンセラーを着けないと。部品取り寄せ中。

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