先日ちょっと話題になった
ギヤ入れてからエンジン始動したほうがイイよ!
って話題が少し賑やかでした。
多くのオーナーさんは・・
確かに「バコッ!」とか「ガンッ!」とかデカい音と衝撃があるし、なんか良く無いような気がしてたんだよな。。。
やっぱりエンジン壊す可能性あるんかな???
と不安な気持ちになったオーナーさんも多いと思います。
記事の目次
”ローガチャ”って言うよ!
N➡1速へシフトした時の心に響く機械音は、『ローガチャ』って言います。
ローガチャ音、ローガチャ耐久、ローガチャショック・・・などなど
これは正式名称ではなく、ニックネーム的な扱いなのでメーカー毎、カテゴリー毎にも異なる言い方はありますが、とりあえず「ローガチャ」で覚えておけば大体は通じます。
ローガチャすると壊れるの?
心配する必要は全くありません♪
その理由は3つあります↓
理由1. 厳しい耐久試験をクリア
信号待ちで”N”状態にして、発進直前に1速へ入れる。
バイクの通常走行で、とても頻繁に起こるシチュエーションですよね。 当然ですが全メーカーこの使い勝手を想定し強度を折込み済みです。
理由2. 採用実績多数の高い信頼性を誇る構造
車種、メーカーを問わず二輪のトランスミッションは「ドグ式常時噛合」が採用されています。
Hondaの名車スーパーカブ、ZX10R、パニガーレV4などベルトドライブを除いてほぼ全ての車種がこの方式を採用しています。
排気量や走行シーンに差はあれど、トランスミッションの構造はみな同じですから、長きに渡って実績と信頼のある構造です。
理由3. アイドリングは優しい条件
ローガチャで最も厳しい条件とは何か?
レッドゾーンまで空ぶかし!
↓
クラッチ切る!
↓
1速へ叩き込む!
これをやると
ドッカーーーン!!
と、とんでもない号砲が鳴りますw(マジ)
もちろん、自分の大切な愛車にわざとムチ打つようなオーナーはいないと思います。
しかし、やっちゃう時があるんです。 (どゆこと??)
ウォオーーーン!
ってなった時
「高い回転数から焦ってローガチャ」してしまう事も十分に考えられます。
皆さんもバイク用品店とか、ダベリングスポットとか一度は経験ありますよね?
発進直後、意図せずNに入ってメッチャ恥ずかし! ってなった事w
この時、スロットル開度が大きければレブリミットまで回転数が上昇してしまう事も十分考えられます。
そして焦って思わず1速へローガチャしてしまう事も、やっぱり想定できますよね。
頻発する事象ではありませんが、しっかりと想定されているので、この厳しい条件においても壊れない耐久性が与えられています。
つまり、たかだか1500rpm程度のアイドリング回転数では、条件が緩く全く問題ありません。
ローガチャが起こるメカニズムは?
そもそも何で音と衝撃が出るの?
ざっくり説明します。
Nの状態
信号待ちなど、アイドリング状態で「N」に入れクラッチレバーを離している状態↑
メインギヤ6枚(写真上段)
カウンターギヤ6枚 (写真下段)
の合計12枚のギヤが組み合わさっています。
「N」では4枚のギヤが停止、8枚のギヤが回転しています。
1速へシフト
N→1速へシフトすると、回転していた8枚のギヤが急停止します。
緑枠で囲ったカウンター5速ギヤが、左側へスライド
↓
カウンター1速ギヤが急停止
↓
メイン1速が急停止(メインシャフト急停止)
↓
4,3,2速の全ギヤ急停止
となります。
カウンター1速⇔カウンター5速の噛み合い部分に全て集まる。
この集まった慣性力が、音と衝撃の源になるって訳です。
排気量の大きいビッグバイクほど、ギヤが大きく重くなるので慣性力もアップ!
慣性力が大きいから1速へシフトした時のショックも大きくなる。
カブなどの小排気量もショックはあるけど、ギヤが小さい分慣性力も小さい。 結果、ショックも小さいと言える。
1速→N→1速へ、クラッチを握ったまま素早くシフトした場合は全てのギヤが停止しているので、ショックはとても小さい。
(Nが出なくてカチャカチャするイメージ)
逆に、クラッチを切りっぱなしで1速→Nへ入れ、クラッチを握った状態をしばらく保った後、再度N→1速へ入れると「バコン!」と大きなショックが発生する。
これはクラッチを切った状態の引きずりトルクがあるためで、クラッチを握っていてもすこしづつギヤが回転する事が理由。
(DUCATIやNSRなど乾式クラッチは引きずりトルクが小さい)
レーサーはどうしてるの?
ワールドSBK
MotoGP
全クラスギヤを入れてからエンジン始動です♪
てめぇー、さっきは全然問題無いとか言いながらレースの世界は真逆とはどう言うことだ! あぁ?
レース業界ではローガチャはしません。
メカニックがライダーへマシンを渡す時、ギヤをN→1速へ入れた状態で渡します。
受け取ったライダーは、クラッチを握ってエンジン始動。
いやいや、全日本からMotoGPまでレーサーは全てローガチャしないんなら、やっぱり良くないんでしょ??
って思いますよね!笑 (笑じゃねー!)
使用環境の比較
レーサーと街乗りバイクは全く異なる部分が多々あるんです。 ↓
レーサー | 街乗り | |
ミッション確認or交換の頻度 | 3000〜6000km | 10万キロ以上 |
タイヤ | スリック | スポーツ |
エンジン負荷 | スロットル全開 | 全開になるのは僅か |
ミッショントラブル | 追突事故 | 路上でストップ |
使用条件 | 高負荷 | 低負荷 |
レーサーの場合は、ミッションに負荷が掛かるハイグリップタイヤを装着し、上級者がガンガンスロットルを開けて、ブリブリ前に進みます。
なのでミッションが受ける反力も高く、常に負荷が高い状態で使用されます。
また、レーサーの場合は”ダボ舐め”を起こしてしまうと、ギヤ抜けトラブルに継ってしまいます。
走行中にギヤ抜けが起こると後続車輌に追突されてしまうで、絶対に避けたいのです。
更にギヤやダボの確認を行うには、エンジン分解しないと確認ができません。
レース現場で確認するのは非常に手間が掛かるので次のメンテナンススケジュールが来るまで、トコトン労りたい。
もちろん、レーサーのミッションもローガチャして壊れる事は全くありません。
しかし、できる事はすべてやってミッションを労るのだ! というエンジンビルダー&メカニックの思いがローガチャをさせないのです。
レース&サーキットという酷使させる環境で走る事が分かっているからこそ、労る事ができるなら全部やる。
ライダーに気持ちよく乗ってもらいたいし、自他の安全を最優先に考える気持ちの現れが「1速に入れてエンジン始動」という結果になっています。
この考えは間違っていないし、否定される事ではありません。
昔のメカニックさんは、エンジン停止時にクラッチを握って止める方も居ます。
この事で油圧が低い時間をトコトン短縮させ、エンジンを労る事が狙い。(微々たる差だけど拘る)
街乗りバイクにおいても、ローガチャ大丈夫な事は分かったけど、カワイイ愛車にはトコトン優しく労りたい!
と思ってローガチャしない事も、良いことである事は間違いありません。
ただ、「ローガチャ」すると壊れるのかな・・? と不安になる必要はありません。
壊れません!
これらを知った上で、どっちを選ぶか?どちらが正解か? は、オーナーさんが判断すればOKです♪(*^^*)
この記事がツーリング先でのダベリングネタになってくれれば嬉しいです☆