こんにちは!Moto-Ace-Blogerの@Andyです!!
前回のフロントサスペンションのセッティング編に続く第二弾として、リアサスペンションのセッティングについてです。 もしフロント編をまだ読んでいなければ、先にこちらをご覧下さい。→フロントサスペンションのセッティング|入門編
やはりノーマルからリプレイスサスへ変更するオーナーはかなり多いと思います。 実際停まっているバイクを眺めていてもリアサスをオーリンズやナイトロン、ハイパープロなど有名メーカーへ交換しているマシンを何台も目にします。 もちろんブランド力のあるメーカーへ交換するだけも十分に価値を見出す事ができますが、 せっかくならバイクを楽しむ調整幅も増やして欲しいと思います。 この記事を読み終えたら、「よし!自分のマシンのリアサスをいじって見よう!」と思ってもらえたら嬉しいです♪♪
フロントサスペンションは、減速と旋回が主な担当分野ですが、リアサスはスイングアームと合わせて考えると減速・旋回・加速の全てに大きな影響を与えます。 レースシーンのようにリアが完全に浮いてしまっている状態でタイヤは接地していませんが、影響を与えています。
もちろん街乗りではリアリフトする事はありませんから、やはり常に大きな影響を与えています。 その影響を良い方向へ持っていければ乗りやすいバイクにする事ができます。
今回も入門編として的を絞って記します。リアサスもセッティング上級編の記事もアップする予定です。
記事の目次
1. リアサスペンションに求められる機能と特徴
1-1. 機能
フロントサスペンション同様、リアサスペンションも「緩衝機能」と「支持位置決め機能」を持っています。
フロントサスペンションと少し違うポイントは、スイングアームが支持位置決め機能を担っている事です。 フロントの場合はフォークの内部に、「バネ+注射器」が完全にインストールされています。 対してリアサスペンションはバネと注射器を目視する事ができます。 つまり外部に露出しています。 ここがフロントと違う最も大きなポイントです。
サスペンションユニットとしての剛性は必要ですが、車体剛性には含まれません。 フロントの場合は、フォークその物(ダンパユニット)が車体剛性を司るパーツとなります。
支持位置決め機能がなければ、バイクはバネの上で加速&減速&ギャップの通過でどの方向に向くかわかりません。 正に↑の写真の状態。前後x左右x上下x斜めに自由自在に動いて姿勢が決まりませんよね! リアサスもバネで浮かしているのはフロントと同じですが、サスペンションユニットはスイングする動きも同時に伴います。
1-2.リアサスの特徴
そしてもう一つ、リアサスペンションは円弧軌道を辿る宿命を持っています。 フロントサスなら純粋な伸縮運動だけですが、リアサスはサスペンションユニット本体が円弧上に動きます。
つまり、本体の伸縮運動と、本体が円弧を描く。この2つの動きでクッションユニットが成り立っています。
ほとんどのバイクは、リアタイヤがスイングアームによって位置決めされている構造です。 その場合、どんなバイクもスイングアームとサスペンションユニットが連結されており、上図のように円弧運動を必要とします。
つまりサスペンションの上側と下側のマウント部でサスペンションは角度が変化します。
角度を変化できる構造を持っている事も、リアサスペンション特有の大きな特徴と言えます。 具体的には上下のマウントはブラバーブッシュ構造です。 ラバーの撓む動きは正確にコントロールしづらいので、オーリンズなどのリプレイスサスや、レーサーで使用されるマシンは、より摩擦の少ないピロボール構造、ピロニードル構造になっています。
ピロボール(球面軸受)とブッシュの違い
ゴムが捻じれる、ゴムがタワむ事で振り子運動に追従する構造です。非常に安価ですが、ゴムの劣化と共にフィーリングも変化してしまう事が難点です。サスでは吸収できない細かな振動(路面凹凸)を吸収するので乗り心地はGood!!
ピロボールが滑る事で振り子運動に追従する構造です。 非常にコスト高となりますが摩擦が少ない事と、サスペンションの動きがダイレクトにライダーへ伝わります。
それは振動数が高い、つまり細かな振動です。 サスペンションが吸収するのであれば、ブッシュ(ゴム)と同じように振幅運動があって初めて吸収できる訳です。
しかしサスペンションはゴムに比べて振幅する為に動く部品の重量が重たいので、1mm程度の小さな振幅を高速で繰り返す事ができません。 つまり、ライダーが不快に感じるような微振動(高速振動)を吸収する事は、とてもとても不得意なのです。
さすが池上先生! なんでも知っている!! スポーツ走行性能を重視するなら、路面やタイヤ、サスのフィーリングをダイレクトに感じる方が良いので、ピロボールの方が良いと言えます。 しかし可動部に潤滑材を塗布したり部品が高額になってしまったりと言ったデメリットがあります。 ブッシュはメンテ不要なので、ヘタるまで何もする必要はありません。 コストも安く不快な微振動も吸収してくれます。
オーナーのライディングの目的に合わせて選択した仕様がベストである事は間違いありません。「ピロこそ全てがいいサスなんだぜ~!? ガッハッハ~!!」と言っている可哀想なパイセンを見かけてしまったら、こっそりこのブログを教えてあげて下さいw
2. バイクのリアサスペンションの種類
様々な種類がありますが、大きく分けて3タイプあります。
種類1. モノサスペンションタイプ
このタイプは、リアサスペンションが1本のタイプです。(”モノ”とはギリシャ語で一つと言う意味。二つは”ビ”、三つは”トリ”。) 業界用語では1本サスの事を「モノサス」と言ったりします。
このタイプの特徴は、リアサスを敢えて隠すようなデザインを優先したいときなどに使われます。 サスそしては狭いところに追いやられ、そのほとんどはエキパイと近く使用環境が厳しいモデルが多い傾向です。
しかし、重たいリアサスが重心の近くにレイアウトされているので、バイク本体の運動性能は良いと言えます。(マスの集中)
種類2. コンベンショナルタイプ(ツインショック)
ネイキッドタイプに多く見られるタイプで、2本のサスペンションユニットを装備しています。 この方式のサスペンションの最大のメリットは「バイクらしいデザイン」と、「シート下スペースを確保でき積載性が良い」事です。
なので積載性や、ユーザーの使い勝手を考えれば、速さを求めていないネイキッドバイクにはこれ以上のサスはありません。CBR1000RRのリアサスを変えても、せっかくの高級イエローサスはスイングアームやタイヤに隠れてちっともおもしろくない!!
やっぱりリアサスを変えたら「どやッっ!!」顔したいですからね♡
つまり、外観商品性能が最も高いサスペンションであると言えます。 しかし、モノサスに比べ、重たいサスペンションユニットが重心から離れたところにレイアウトされているので運動性能は劣ります。
種類3. リンク式タイプ
スーパースポーツ、一部のネイキッドなどのマシンに多く採用されているタイプです。Moto-GPマシンはメーカーを問わず全てこのタイプ。 サスペンションにとって最も過酷であるモトクロス用バイクもこのタイプです。(KTMは除く)
緑色に塗られた三角形の部品がリンクアーム(通称:リンク)と呼ばれる部品です。 支点、力点、作用点が存在するので、必ず三角形になります。
KawasakiのZ1000に装備されているリンクプレートです。(”リンク”でOK)一つの部品ではなく、2枚のプレートを連結して使用するタイプです。
リンク式サスが一般的になりつつあるので、今はリンク式と言わず、「モノサス」と言う方も多いです。 ほとんどのリンク式サスは1本で構成されているので、モノサスでも間違いではありません。 会話する相手の空気感でモノサスと言われた時に、リンク式なのか、リンク無しモノサスなのかを感じ取って下さいw。
- リンク部品が必要なので部品点数が増える。
- フレームにテンションロッドを締結する為の加工が必要になる
- リンク部品にベアリングを使用するのでコストが高い。
- 組み立てが複雑で作業工程が増えるので人件費が高い。
やはりどう考えてもリンク無しのモノサス使用が最もコストを抑えられる事は誰の目から見ても明らかです。 しかしコストを掛けてでも得られる”ナニか”があるからコストを掛けるんですよね?? だからこそMoto-GPマシンもリンクを使う訳です。 ではその”ナニか”とはいったい…??
- 小さな路面のギャップは柔らかいバネ特性である。
- 大きなギャップを通過した時は、硬いバネ特性になる!!
- 二人乗りして大きなギャップを通過した時にはもっと硬いバネ特性になる!
- サスペンションユニットを低い位置にレイアウトできるので、低重心化できる!
サスペンションの理想的なストローク特性が得られる事が何と言っても最大のメリットです。
サスペンションがあまり沈んでいない時には、ポヨンポヨンした柔らか〜い特性。 でも大きなギャップを通過したり二人乗りした時などサスペンションが深く沈んでいる時にはシッカリと踏ん張ってくれる特性です。
リンク式サスと、リンク無しの主な性能の比較
サスの状態 | リンク式 |
リンク無し① バネが柔らかい |
リンク無し② バネが硬い |
浅く沈んだ時 |
ポヨン! ポヨン! *シッカリ吸収 |
ポヨン! ポヨン! *シッカリ吸収 |
ガンッ! ガンッ! *硬くて沈まない |
深く沈んだ時 |
グッ! グッ! *シッカリ吸収 |
ガンッ! ガンッ! *柔らかくて底付き |
グッ! グッ! *シッカリ吸収 |
リンクが無い場合、一人乗りに最適なバネの硬さを選ぶと、二人乗りした時などサスが深〜く沈んだ時にはバネ特性が柔らかすぎて底付きしてしまい、ギャップのショックがダイレクトに伝わってきます。 この場合はサスペンションが無い自転車と同じなので、ガンガンお尻を突いてきます。
リンクが無い場合、二人乗りした時に最適なバネの硬さを選んだとします。 するともちろん二人乗りしている時はちょうど良い硬さなので、どんなギャップがきても二人で乗り越えられます。 しかし、彼女との別れが訪れ、ぼっちライダーになってしまった瞬間から、バネが固すぎショックを吸収できず大泣きする事になります。
ここでリンクが登場! 一人乗りでは柔らかく。 二人のってもしなやかに。 相反する領域でも時に柔らかく時に硬くバネ特性を変化させてくれる、スゴイ部品なのです。 この特性を得る為に、コストを掛けてでもリンクを装備するのです。
3. リアダンパーユニットの構造
世界のモーターサイクルを見るとざっと10種類以上ありますが、現在代表的に使用されている3タイプを覚えておけばほとんどの話に着いて行けます。
先ずはこれを覚える!!
ここで突然のクイズ!! 今、 娘がお風呂を楽しんでいます。そこへ彼氏と上手く行っているのか気になって仕方のないお父さんが湯船に一緒に入る事になりました。正解は次のうちどれでしょう? ちなみに娘が湯船に入ってお湯はあふれる寸前です。
- お父さんが入ってお湯があふれる。
- お父さんが入ってお湯があふれかえる。
- お父さんが入ってお湯がなくなる。
- お父さんが入って娘にのぼせるw
正解は・・・!? 1と2と4でした〜ww と冗談はこれくらいにして、どんな大人もきっと経験したであろう、すり切れ一杯のお風呂にどれだけそぉ〜っっと入っても、お湯は必ず溢れてしまいますよね!? 大人になれば、自分の体の体積分が溢れてしまう事を理解できると思います。
実はサスペンションも全く同じ事が起こっているのです。 お風呂のお湯がサスペンションの場合は「オイル」です。 お風呂のお父さんがサスペンションの場合は「ロッド」です。 ここをよ〜く覚えておいて下さいね!!
お湯がすり切れ一杯の浴槽に、お父さんが入ると「ザブ~ン!」と音を立ててお湯があふれてしまいます!
ダンパ構造1. シングルチューブエマルジョンタイプ(単筒型)
世界で最も売れているバイク!スーパーカブはシングルチューブ式!
不等ピッチスプリングと、ダンパーユニットが入っています。 ダンパーは病院の注射器と同じ原理です。
分離加圧タイプにあったフリーピストンがありません。なのでサスペンションを横や斜めにレイアウトすると、オイルがちゃぷちゃぷして、ピストンに空気(若しくは窒素ガス)が入り込んでしまいます。 空気がピストンを通過する時には減衰力が生まれませんから、スカスカな動きになってしまい、サスペンションでなく「ただのバネ」になってしまいます。
- フリーピストンが無く、部品点数が少ないので軽量。
- オイルがちゃぷちゃぷするので、取り付ける角度に制約がある
- コストが安い
*オイルがちゃぷちゃぷすると、空気が全体的に混ざってしまいます。この事をエアレーションと言います。 例えば少し減ったペットボトルのお茶を勢い良くシャカシャカ振ると、泡が混ざりますよね? バイクでも細かな凹凸を長く拾うと同じ事がダンパーオイルにも起こってエアを噛んでしまいます。[/aside]
ダンパ構造2. ツインチューブタイプ(複筒型)
チューブの中にもう一つサイズの小さいチューブが設けられているダンパユニットの事を指します。 筒が2重になっているイメージです。基本的には加圧をしていません。(少し加圧するモデルもある)
アメリカンモデルなどに多く採用されている構造のダンパユニットです。
加圧していなくても、ロッド先端のバルブ部にはエアが噛まない構造である事が最も大きな特徴です。 エアレーションを起こし難い構造です。
サスペンションが圧縮(縮む)した時には、お父さん(ロッド)が侵入してきますよね!? そのお父さんの体積分の逃げるスペースが、外側の筒と、内側の筒の間にある空間です。 そして、この空間にオイルが逃げていく時に、ベースバルブ(青枠のバルブ)を通過します。
この時、オイルの通過する穴をコントロールする事で、圧縮側の減衰力を調整する事ができます。(メーカーが車種コンセプトに合った最適なセッティングできると言う意味。*ユーザーではない)
- エアレーションを起こし難く、減衰力が安定する。
- 圧縮側の減衰力を調整できる(メーカーセッティング)
- 分離加圧に比べコストが安い。
- ダンパユニットの取付角には制約がある。
ダンパ構造3. 分離加圧タイプ(ド・カルボンタイプ)
現在の高性能バイク、ネイキッド、スポーツバイクはほぼ全てこの分離加圧タイプと言っても過言ではありません。 (SS車の次世代サスは除く。上級編で書く予定です) やはり最も高性能かつ、コストの掛かった仕様であると言えます。
もちろん、別名ド・カルボンなんて名前が付いていますが「お父さん」はもちろんお風呂へ入りますよ!w お父さんがはいった分のお湯の逃げ場は、高圧窒素ガスが充填してあるお部屋になっております。
フリーピストンによって、オイル室と窒素ガス室は完全に隔離されているので、オイルがチャプチャプ暴れる事はありません。 また急激な圧力低下で圧力が下がっても、高圧ガスのチカラを受けたオイルは圧縮された状態を保てるので、キャビテーションがとても起きにくい仕様です。
- サスペンションの取付角度に制約が無い。逆さまでもOK!
- 高圧ガスでオイルに圧力を掛けているのでキャビテーションが発生しにくい。
- オイル室とガス室がしっかり分かれているのでオイルがちゃぷちゃぷしない
- 減衰力特性が安定している。
- 小さな穴加工や、均一な厚みと正確な寸法の薄板が必要で製造コストが高い
- 高圧ガスの圧力がオイルに掛かっているので、経年劣化でシールからオイルが漏れやすい
高圧ガス圧を使用するため、ユニット全体に強度が必要で重たくなり、全長も長くなる宿命を持っています。 しかし、元々省スペースのリアサスにコンパクトに収める為に、高圧ガス室だけを別置きにしたモデルが多く採用されています。 ↓こんなタイプ
ネイキッドバイクは、別置きタンクに「OHLINS」!と書いた黄色い幸せのサスに憧れますw
4. リアサスペンションの特性について
フロントサスの記事と併せてここまで読んで頂いた方は、ほんのすこーーしくらいはどんな特性が良さそうか分かってきてくれていると思います。(分からなければ私の記事のクオリティが低いだけですのであしからず。。m(__)m)
少し分解して考えたいと思います。
特性1. リアサスにとって理想の特性とは
先の表にも記した通り、理想はオーナーが何も調整しない状態で「一人乗りでも二人乗りでも硬すぎず、柔らかすぎず、常に乗り心地が最高で、路面追従性が良いサス」が理想です。
この理想に向かって、バイクメーカーとサスペンションメーカー、タイヤメーカーが様々な方法で理想を追い求めています。
何もしなくても、いつもこの状態になっていれば本当に最高ですね!
特性2. プログレッシブ特性とはどんな意味?
よくサスの事を書いている雑誌や記事をみると必ずと言っていいほどこの「プログレッシブな特性」と言うワードが出てきます。これ一体どう言う意味??
「Progressive=累進的な」と言う意味です。 もうすこし違う表現をすると、「二次曲線的な」という言い方をするジャーナリストも多いと思います。しかし、この二次曲線と言われてもまだピンときませんよね~。。。
と言う事で、私Andyはこう言います。
つまり、ストロークが浅い領域はソフトで柔らかく! ストロークの深い領域では硬く! といった理想の特性です。 サスペンション単体をみても、Rrサスでは、「バネ」と、リンクを装備しているもでるでは「リンク」でプログレッシブ特性を得ています。
特性3. バネをプログレッシブ特性にする方法
撒きピッチが密(狭い)な部分が柔らかいバネ。 ピッチが粗(広い)部分が硬いバネになっているよ!に種類のバネ特性をもった1本のバネがダブルレート!
社外に多いシングルレート。どのストローク域でもバネの反発力は一定。変化が常に一定なのでスポーツ走行やサーキットに向いている。
純正のサスペンションはタンデムを考慮した作りになっているので、初期は柔らかく、奥で踏ん張ってくれるダブルレートが多い。
逆に一人乗りスポーツバイクや、サーキット専用マシンなどは、セッティングのし易さ重視してシングルレートが好まれる。
特性4. リンクを使うとプログレッシブ特性になる
先程出てきたリンクを使うとなぜプログレッシブ特性になるのか?? Rrホイールの移動量を100mm、バネレートは1kg/mmとした場合のイメージです。
Rrホイール中心の移動量 |
サスストローク量 (リンク無し) |
サスストローク量 (リンク有り) |
0~30mm | 0~15mm | 0~10mm |
30~70mm | 15~35mm | 10~25mm |
70~100mm | 35~50mm | 25~55mm |
同じRrホイール中心の移動量だった場合、サスストロークが少ない方がバネ反力が小さくなります。
- リンク無し=サスは15mmストローク=バネ反力は15kgです。
- リンク有り=サスは10mmストローク=バネ反力は10kgです
- リンク無し=サスは50mmストローク=バネ反力は50kgです。
- リンク有り=サスは55mmストローク=バネ反力は55kgです。
つまり、Rrホイール中心の移動量で考えた場合、バネの反力がストロークする程に高まる事がわかります。 このお陰でバネはそのままで相対的なストローク量を変化させ、バネレートを変えた時と同じ特性を得られるのです。 ここが最大のポイントです。
これをグラフに表すとこんなイメージです。
ストロークの深い領域で、アクスル中心移動量と、サスペンションストロークの比率が高くなっています。 モトクロスは大ジャンプをするので着地した時には大きな衝撃が加わり、サスペンションはオンロードと比べモノにならないほどのショックを吸収します。 その為、ストローク奥の領域ではリンクのなす角度がすべて90°に近づき、大きな反力を得られるようになっています。
5. セッティングによって何が変化するのか
変化1. イニシャルセッティング
項 目 | 変 化 |
掛ける (締める) |
使用するストローク領域が浅くなる。(車高が高い) リア車高が高くなる。(尻上がり姿勢) Rr分担荷重が減少する。(Frは増加) タンデムする場合は強めて車高UPが可能。 |
抜く (緩める) |
使用するストローク領域が深くなる。(車高が低い) リア車高が低くなる。(尻下がり姿勢) Rr分担荷重が増加する。(Frは減少) 軽量なライダーは抜くと車高Downが可能。 |
*イニシャルを掛けても抜いても、バネが硬くなったり柔らかくなったりする事はありません!!のでお間違いなく♪
詳しくはFrの記事に記載しているのでコチラをご覧ください。→FRサスの記事リンク
変化2. テンションセッティング
項 目 | 変 化 |
掛ける (締める) |
Rrサスが伸びあがるスピードが遅くなる。 ブレーキを掛けた時、前のめりになり難い。 →結果、ブレーキの姿勢が変化しにくく安心感が高まる。 バイクが全体的にスローに動き重たく感じる。 ポヨンポヨンしにくくなる。 |
抜く (緩める) |
Rrサスが伸びあがるスピードが速くなる。 バイクが機敏に動くようになる。 ブレーキを掛けた時、Frタイヤへ荷重を乗せやすい。 ポヨンポヨンしやすくなる。 |
変化3. コンプレッションセッティング
項 目 | 変 化 |
掛ける (締める) |
Rrサスが沈み込むスピードが遅くなる。 Rrサスのフィーリングをダイレクトに感じやすい。 Rrタイヤへ荷重が移る時、時間がかかる。 ポヨンポヨンしにくくなる。 |
抜く (緩める) |
Rrサスが沈み込むスピードが速くなる。 Rrタイヤへ早く荷重を移す事ができる。 小さいギャップや振動の吸収性が良くなる。 場合によってはポヨンポヨンしやすくなる。 |
これがすべてではありませんが、大ざっぱに言って街乗りではこのような変化を伴います。 乗り心地重視、足つき性重視、運動性能重視など様々なシチュエーションがあると思いますが、 自分の走る目的に合ったセッティングを考える事はきっとバイクの楽しみも増える事と思います。
初心者だからと言って遠慮はいりません! 正解か不正解かはオーナーが決める事です! ウザいベテランの「決めつけ」は無視して、頼れるベテランの意見や考え方、アドバイスを参考にしましょう! きっと走る事がもっと楽しくなるはずです!!
6. まとめ
またしても長文、最後までご覧いただきありがとうございました。 今回初めて1万字越え!! お付き合い頂き本当に感謝致しますm(__)m
先ずは、初心者も目的をもったら、ドンドンいじって欲しいと思います。 上手く行かなくてもその過程は必ず楽しめます♪ 「初心者にはまだサスセッティングは早いよ!」と言っているパイセンも初心者ですから気にしてはいけませんww
分からない事があれば気軽にコメントして下さい。
サスペンションの上級編は、サーキット、ワインディングに的を絞った記事を書く予定です。スポーツ走行を目的にした時には常にディメンションとセットで考える必要がありますから、もっと奥が深くて面白いです♪♪(^O^)
7. ユニットプロリンクとは?(おまけ)
リアサスペンションのアッパーマウントがフレームではなく、スイングアームに締結されているタイプの方式です。 現在はHondaのCBR1000RRとCBR600RR(ディスコン)に広く採用されています。
リアサスペンション全体がスイングアームと一緒に動きながら伸縮運動をします。
Rrサスペンションの搭載位置を下げて、低重心化を図ったSC59モデル。SC77も踏襲しています。
- スイングアームの剛性が高くトラクションが掛けやすい
- Rrタイヤがスライドした時のコントロール性が良い
- フレームのアッパークロスパイプにマウントが無い為、タンク等の重量物を低重心化できる
- 剛性ベストでフレームを設計しやすい。
元々はフレームのアッパークロスにマウントを設けるので、フレームに強度が必要になります。 ユニットプロリンクの場合はフレームにマウントはなく、代わりにスイングアームに設けます。 その事で本来アッパーマウントに必要だった強度をスイングアームに持たせなければなりません。
強度を持たせたスイングアームは、その剛性が必然的に高くなります。 スイングアームの剛性が高いと、特にサスペンションが沈む方向に対するタワミが減少します。するとダイレクト感が増してRrに荷重のかかる加速区間でのフィーリングが良くなります。
その事からも、HONDAワークスのCBR1000RRに採用されているスイングアーム形状を見ると、縦剛性がいかにも高そうな形状をしています。
サスペンションユニット全体もバネ下重量に含まれる構造の為、イナーシャが大きくスライドしている時の挙動はコントロールしやすいと言えます。
しかしデメリットも存在します。 それはスイングアーム重量が重い事。これは強度部材をスイングアームに設ける必然性から避ける事ができません。また、サスペンションユニット全体も完全なバネした重量になるので、機敏な動きはとても不得意な構造です。
Moto-GPが2008年に800ccへと排気量が縮小された時には、まさにこのデメリットが際立つレギュレーションとなりました。 1000ccだった頃は有り余るパワーを有効に伝える事がタイムアップへの課題でトラクションを稼ぐことでタイムを短縮していました。
ところが排気量が800ccになるとパワーは有り余らなくなりました。コーナリングスピード重視の時代へと変化したのです。 だからこそ、コーナリングにおけるフィーリングをより敏感に感じ取るには、イナーシャが小さく軽量なスイングアームが求められたのです。
そして現在は再度1000ccへと戻りましたが、燃料規制がより厳しくなり排気量は増えてもパワーは大きく変わっていません。 そういった背景もあってユニットプロリンクはMoto-GPの世界からなくなりました。
他にもよりウィリーしない車体、よりジャックナイフしない車体、を目指した結果、低重心タンクが必要となり「上やぐら」のスイングアームではレイアウトが成立しない事も大きく影響しています。
現在はIMUなどの技術が身近になったことから、とても高性能なトラクションコントロールが市販車にも装備されています。 物理的にタイヤが持つトラクションのおいしいところまで簡単に持って行けるようになりつつあります。 そういった意味で、もしかすると今後ユニットプロリンクの出番は無いのかもしれません。下やぐらのスイングアームのお陰でタンクなどの重量物も低くレイアウトできるのが当たり前になった事も要因の一つです。
しかしBESTはトラクションの良い構造(車体)と、トラクションの良い制御のハズです。 今後、排ガス規制を考えれば、更なる弁当箱の容積の巨大化は必須で車体重心の近くに置きたくなるハズです。 そうなると下やぐらのスイングアームより、上やぐらのスイングアームの方がトータルで考えればBESTなレイアウトになるかもしれません。 個人的には、独自技術のユニットプロリンク技術を今後も磨き続けて欲しいし、他社にもある、ありきたりな構造には戻って欲しくないな~と思っています(=^・^=)
Let’s Fun! Ride! Run!
Andy