CBR1000RRRエンジン新技術のロマンを解説|ボトムバイパスシリンダーブロック

昨年TSRさんにお邪魔して新型CBR1000RR-R(SC82,MKR)のル・マン24時間耐久レースに勝ったチャンピオンエンジンの分解に立ち会いました。

その時撮影した写真を使って新型エンジンのギミックを深堀りしていきます。

リンク→CBR1000RR-R(SC82)エンジンの新機構・新技術解説まとめ

ビルトインボトムバイパスの構造

CBR1000R-R(SC82)ボトムバイパスウォータージャケットの構造

ビルトインボトムバイパス構造のメリット
  • バイパスホースレスで軽量化
  • シリンダー温度分布の均一化
  • シリンダー熱歪を均一化
  • フリクションロスを低減し高出力化

この構造の狙いはフリクションの低減。

特にピストンとシリンダーの摩擦を低減する為に、エンジンの熱によるシリンダーの歪(ひずみ)を均一化し、狙いの円筒形状をキープする。 その結果フリクションの低減が可能。 (ピストンとシリンダーの摩擦を低減)

また、従来はエンジン外部に存在したバイパスホースを廃止しレイアウトの自由度UPと軽量化も達成。

一番の目玉はシリンダーのウォータージャケットが1階と2階に分かれたこと。

 

 

冷却水の流れを比較

冷却水がエンジン内部をどのように通過し流れていくのか、SC82、SC77のエンジンを解説します。

 

冷却水経路:SC82

CBR1000RRR(SC82)ボトムバイパスウォータージャケットの構造

冷却水の流れは下記のようになります。

サーモ閉
1.ウォータージャケット入口
2.シリンダ2階#4→3→2→1
3.サーモケース
4.シリンダ1階#1→2→3→4
5.ウォーターポンプ
サーモ開
1.ウォータージャケット入口
2.シリンダ2階#4→3→2→1
3.サーモケース
4.ラジエター
5.ウォーターポンプ

ここで重要なのが、サーモスタットが開いた状態でも全量がラジエターに送られる事はなく、一定量の冷却水はシリンダ1階のボトムウォータージャケットへ送られるという事。

水はシリンダー入口が最も温度が低い状態です。 シリンダー内を流れる事でしだいに熱を吸収、温度が上昇します。 つまり入口付近の温度は低く、出口付近の温度は高い状態となり、熱変形を一定に保つことができません。

ここで出口の水をもう一度入口へ戻してやると、同じ温度上昇を利用して熱を均一化する事ができます。

んん・・・??

どゆこと・??

先生
お茶4人前を入れる時を思い出してください。

濃さ(味を)一定に保つためにどうしますか?

右から左に向かって順に半分づつ入れ、次に左から右に向かってもう半分を入れると同じ濃さになりますよね?

 

こんなイメージです 

シリンダー 2階ウォーター
ジャケット
1階ウォーター
ジャケット
各シリンダーの
平均温度
#4 80℃↓ 110℃↑ 95℃
#3 85℃↓ 105℃↑ 95℃
#2 90℃↓ 100℃↑ 95℃
#1 95℃→ 95℃↑ 95℃

2階の入口は#4番、出口は#1番。

1階の入口は#1番、出口は#4番。

つまり各シリンダの1階と2階の平均値は全部のシリンダーで同じに保つ事ができる。 その結果、熱歪も均一化する事でシリンダー摩擦を低減→高回転域での出力向上に繋がっていると言う訳!

ANDY
す・・ スゲ〜

 

冷却水経路:SC77,59

CBR100RR(SC77)冷却水経路
CBR100RR(SC77)冷却水経路

SC59,77はこのようになっています。 そもそもウォーターポンプの位置がエンジンの左側でSC82の右側と異なります。

ウォーターポンプから出た水は#1番シリンダーに入って”前後”に流れが分かれます。

【前】#1→2→ヘッド
【後】#1→2→3→4→4前→3前→ヘッド

の順です。

そう、後ろ側の水は温度が高く、前側を流れる水は温度が低い状態となります。

そうなると熱膨張が均一ではなくなり、フリクションロスを生む要因となってしまいます。

SC82へのフルモデルチェンジのタイミングでエンジンのヒートマネジメントにも着目して性能向上を図っている事がわかります。

 

熱ひずみシミュレーション

シリンダー壁面の温度分布がSC82の方が安定していますね。

水の入口を進行方向前側にレイアウトしたのは、エキゾースト側の方が温度が高くなる事を見越してより温度の低い状態の水を入れて、より均一化する狙いがあるのか?? 

従来モデルの解析では、#3のエキゾースト側の温度が最も高温になっていますね・・。 やはり長い距離熱を奪ってきているので、出口付近はどうしても温度が上がってしまうのは間違いありません。

 

2020年ル・マンチャンピオンエンジンの詳細

CBR1000RRR(SC82)Cylinder-block

冷却水の入口出口、サーモケースのレイアウトです。 

※ライダーが跨って一番左から1番、2番・・・という順に数えます

#4番シリンダーに入口と出口がレイアウトされているのが画期的ですね〜

 

CBR1000RRR(SC82)Cylinder-block
CBR1000RRR(SC82)Cylinder-block

シリンダーブロックは単体で分解する事ができます。 CBR954まではケースとシリンダーが一体だったのが懐かしい・・

下(PCは右)の写真は進行方向と同じ向きです。

まず2階の#4シリンダーから冷却水が入ります。#4→ #3→ #2→ #1→ サーモケースへと流れます。

 

CBR1000RRR(SC82)Cylinder-block
CBR1000RRR(SC82)Cylinder-block

サーモケースに到着した冷却水は1階入口(写真の赤丸部)から入って#1→ #2→ #3→ #4へと流れます。

 

シリンダーを流れる冷却水経路は下写真のようになります。

CBR1000RR(SC82 )冷却水経路の解説

 

この構造を目の当たりにすれば理解する事はできますが、この構造を思いついて具現化する事が一番スゴイなと感じるところです。

これは個人的な見解ですが、シリンダーを支持する壁が今までは上端と下端の2箇所でした。 このボトムバイパスウォータージャケット構造にすると、中間の壁が生まれます。

主の目的はウォータージャケットを分割する事ですが、副作用としてシリンダー剛性もアップするのでは?と思います。

上端、下端に加え中間の壁が設けられるて3箇所支持になるわけです。 しかも壁はシリンダー壁に対してほぼ90°に近いはずなので、剛性アップにはもってこいの方向!  この辺りの歪解析、剛性解析の結果があればリリースして欲しいなぁー♪

更に中間の壁はフィンの役割も果たすと思うので、シリンダー→ 冷却水への熱伝達効率も良くなるんじゃないかな??  

このエンジンのマックスモリモリのワークスエンジンとかどんでもなく速そう。

市販車でピストンスピード最速のZX-10Rが24.8m/sです。

SC82は23.4m/s なので、ボアストロークを考えればまだまだ回転数UPの余力がありますね。 

 

ANDY
いや〜・・ スゴイエンジンだ。
ますます自分の愛剣(車)が好きになるぜ

 

 

 

関連記事はこちら