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ワッシャーの使い方!裏表の使い分け!整備役立ち情報!

ワッシャーに裏表ってあるの? 向きは指定されてるの? そもそも何でワッシャー使うの? ドレンワッシャーは再利用してもいいの? こんな疑問を解決します♪♪

こんにちは! @Andyです。

自分のバイクを整備すると、様々なネジやボルトに付属しているワッシャー。 何気なく元どおりに組んでいる方も多いと思いのではないでしょうか?

でも、ワッシャーの機能や役割を理解していないと、「アレ? ここワッシャーがはまってたよな・・・? 見つからねー! ・・・まいっか! 無くても特に困らないっしょϵ( 'Θ' )϶」とワッシャー無しで組み込んでしまう・・・なんと事ありませんでしたか?

でもちょっと待ってください。 日本の優秀なバイクメーカーの優秀なエンジニアは、不要な部品をあえて設定する事はしません。 少しでも軽く! 少しでも安く! と常日頃から上司やプロジェクトリーダーから口酸っぱく言われています。 仮に言われなくてもバイクエンジニア魂がそんな事許しません。

ワッシャーの機能と役割、使い方をマスターすれば、メンテナンスの幅が広がり、ボルトの知識との相乗効果で、部品の寿命を延ばしたり、マシンポテンシャルを高める事も可能です! 次回メンテナンスの時のお役に立てれば嬉しいです☆「以前のボルトに関する記事はコチラから」

 

1. ワッシャーの機能

ワッシャーの機能
  • シーリング・・・オイルドレンボルトやブレーキバンジョーボルトに使用して、液体漏れを防ぐ。
  • 傷付き防止・・・スクリーン締付けビスや、カウルに使用し、傷を防止し保護する。
  • 軸力安定化・・・アルミと鉄ボルトなど異種材料の締付けに使用して、摩擦を安定させ、軸力の均一化を図る。

ワッシャーを使用する目的は、主にこの3つと言って良いでしょう。

もしかしたらスプリングワッシャを忘れてるよ! 緩み止めの効果があるんだから! と思っている方がおられるかもしれません。

実は・・・全く緩み止めの効果が無い事は既に科学的に証明されています。 ボルトの軸力は、以前の記事にも記した通り、M6で約1.4tです。 スプリングワッシャの軸方向への力は30〜50nです。軸力の0.3%しかありません。 この程度の力では到底緩み止めとして機能させる事は出来ません。

 

2. ワッシャーの材質

ワッシャーの材質による特徴をまとめました。

アルミ(Alumnium)

バイクに使用するワッシャーの材質でアルミが使用されているワッシャーは、何と言ってもオイルドレンボルトに装着するシーリングワッシャでしょう。 多くのライダーがその存在を知っている事と思います。 どうやってオイルの漏れを防いでいるのか? それは柔らかいワッシャー自身が潰れる事で、エンジンとドレンボルトに密着して、オイル漏れを防いでいます。

また、ブレーキホースをカスタムすると、バンジョーボルトのシーリングワッシャーはアルミが一般的です。 個人的にはアルミワッシャはオススメしません。 後述しますが、銅ワッシャの方が向いています。

アルミのシーリングワッシャの場合は、原則使い捨てです。再使用はNGです。(但し整備士の判断の下、再使用する事はあります)

 

銅(Copper)

街乗りバイクで銅ワッシャを使用しているボルトを外す時はエンジン分解整備の時しか見る事はありません。 またオフロード車では、ミッションオイルの点検窓のボルトに銅ワッシャが使われています。銅ワッシャは再利用可能なシーリングワッシャです。 市販ロードレーサーのRS125や、RS250などにはたくさん使用されています。

マルケス
エェ!!?? 再利用できるならエンジンオイルのドレンワッシャも銅にしたらいいじゃん! なぜ使い切りのアルミワッシャにするのさ? 
池上先生
イイ質問ですねぇ〜! それはズバリ、コスト!です。地金の価格で銅はアルミに比べて2.5倍のお値段です。 そして二つ目は重さです。比重はアルミ2.7に対して銅は8.95! 3.3倍も重たくなってしまいます。 高くて重たい銅に用はないのです。


樹脂(Plastic)

スクリーンや、カウル、外装部品など、樹脂製品を締め付ける時に使用されるワッシャー素材です。

樹脂と樹脂なので製品を傷つけない事が魅力ですが、経年劣化すると、ネジの軸力で潰れたワッシャの反発力(元の形に戻ろうとする力)が無くなるので、締めすぎには注意しなければいけません。

ナット側がゴムになっていて、ゴムの潰れで反力を得る方法も同じです。 むぎゅ!っと締めた時はOKなのですが、変形させすぎると、ゴムが切れたりして反力が無くなり、緩みに繋がります。

 

鉄(Steel)

バイクに使用するワッシャーはほとんどが鉄系です。

バイクの場合、アルミ部品に鉄ボルトを締め付けると、柔らかいアルミが削られて座面が荒れていきます。 座面が荒れると、締め付ける力は摩擦力となって奪われ、軸力を高める事ができません。 なのでワッシャもボルトと同じ鉄にする事で、摩擦力を低く保ちボルト軸力を安定させる事ができます。

エンジンケースやシリンダー、ヘッドの組み立ての時、1箇所でも軸力が異なると、部品の歪みが偏って狙いの寸法精度が狂い、エンジンのポテンシャルを発揮できません。

鉄系のワッシャーが使用されている部品は、締め付けによって性能が左右される!と考えて間違いありません。

また、特にエンジン部品は、狙いの軸力を必要とし且つ、ボルト毎のバラつきを小さくする必要があります。

その理由は締付けによる部品の変形を理想の形状に保つ為。 その為、ワッシャーに特殊なコーティングを施したり、摩擦安定剤などを塗布するような締付指示のあるモデルも存在します。

 

3. ワッシャーの裏表の使い分け

ワッシャを拡大すると左の図のようになっています。基本的には、この「表」と記載のある丸みがある側をボルト座面と接触させます。

「裏」と記載のあるバリがある側を車体や部品と接触させる。 これが基本的なワッシャの裏表の考え方です。その理由は2つあります。

 

1. 接触面積が広く、陥没(座屈と言う)リスクを低減できる。

ボルトは回転しなくても緩む事があります。 それは、締め付けていた部品が軸力によって圧縮され変形してしまった場合です。 特にアルミで肉厚の薄い部品に起こりやすい現象です。 言わば「かんじき」と同じ効果です。 新雪を歩く時に、長靴では足が深く埋まってしまいます。そんな時かんじきを履くと埋もれずに雪の表面を歩く事ができます。

このかんじきも機能はワッシャと同じです。足が雪に埋もれる事を防ぎます。

ワッシャも面積を増やす事で面圧を下げ、ボルトが部品に埋もれる事(座屈)を防ぎます。その為には、より広い面積の方が有利なので、バリのある裏側を部品に向けて組み付けます。

 

2. 部品の傷つき防止

バリのある裏側を部品側にする事で、ボルトを締める時バリが部品に引っかかる。→ワッシャは部品に引っかかって回転しない。→ワッシャが固定され、ボルトがワッシャの上で回転する。 つまりボルトの回転傷はワッシャにしか残らない為、部品をいつまでも綺麗な状態に保てる。 座面が荒れてきたら、ワッシャとボルトのみを交換すればよく、部品交換の必要が無い。

もし、ワッシャを敷いていなければ、ボルトの回転キズは部品に残る。 座面が荒れたり削れた場合には、部品とボルトを購入しなければならず、高い出費となる。

 

3. 裏表の無い切削ワッシャーも存在する

それは、プレス機で製造されていない切削加工で作られたシムワッシャーや、カーボンワッシャなど、は裏表がありません。

このようなワッシャは方向性がないのでどちらでも構いません。


4. 正しいグリスの塗り方

①ナット(ボルト)座面と、ナットに接触するワッシャ座面の2箇所にグリスを塗布

 *ワッシャの部品と接触する面(裏)にはグリスを塗ってはいけません! この面はスリップさせたくないからです。


②ナットがワッシャの表面をスリップしている痕跡がハッキリと確認できる。

ワッシャと、部品(この写真はアクスルブロック)はグリスを塗布しておらず、摩擦係数が高いのでガッチリ喰いついてスリップしません。

 

③部品側(アクスルブロック)には一切キズは付いていない。

このようにグリスを塗布すれば、部品はいつまでもキレイな状態を保つ事ができます。 そしてスリップする部品が常に同じなので、摩擦が安定し、軸力(バネ力)を安定させる事ができます。

おそらく、ワッシャーの両面にグリスを塗るんだ!! なんてパイセンに教わった方も多いと思います。 ワッシャの両面に塗った場合は、ワッシャが部品の上で回転する可能性が出てきます。

そう、部品にキズがつき、常に安定したバネ力を調節できなくなってしまいます。 ちなみにこの写真の我がレプ男は、新車購入しタイヤ交換4回目の時に撮影した写真です。

 

5. カウルなどの外装部品は、ワッシャの裏表を逆に使用する!

バイクでは少ないですが、カウルやスクリーンなど外装部品の締付けボルトにワッシャを使用している場合があります。 そんな時は、表(丸みがある)をカウル側へ、裏(バリがある)をボルト側へ向けて締め付けます。 そうする事でワッシャのバリでカウルへキズを付ける事がありません。  そして同じようにグリスを薄らと、ボルトと接触する面へ塗ってあげます。 やはり部品側でワッシャが回転しない為、部品にキズをつけません。

 

6. ワッシャー使い方まとめ

ワッシャーがある事で、ボルトの締付けキズは、①ワッシャ②ボルト。 この2箇所のみで済む事はご理解頂けたでしょうか? 指定された締付けトルクの範囲内であっても、分解整備を繰り返すと座面は荒れてきます。そうなると、締付け力が荒れた座面の摩擦に奪われ軸力が低下してしまいます。 その予防の為の部品費はなるべく安く抑えたい。

そして、締め付けるボルトやナットの締付条件を整える事で常に軸力(バネ力)を安定させ何度締め直しても同じバネ力を得る事で、マシンポテンシャルを高める事ができます。この記事を読んで、次回の整備が楽しくなって頂けたら嬉しいです!

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Andy

--コメント--
  1. ホンダのドレンワッシャーは丸く曲面になってる方がエンジン側平らな面が外側です。

  2. ホンダのサービスマニュアルにトランスミッションのギアのカラーやサークリップは表面を向けるとあります。これはキズ防止ということでしょうか?
    ミッションだけは向きに対する考え方が分かりません。頭が悪いので、分かりやすく教えていただけませんか?

    • ヨッシーさん、コメントありがとうございます。

      トランスミッションにおけるサークリップの向きは、「抜けタフネス向上」が目的です。

      サークリップには2面あり、”面が取れている側”と、”ピン角が立ている側”があります。

      サークリップを装着する際、外れにくくなるようにピン角の面をどちらに向けるかを決めます。

      仮に向きを間違えてもすぐに脱落する事はありませんが、思想として外れにくくなるようにセットします。
      プレスで製造する部品なのどうしてもプレスダレ(一面が丸くなる)が起こります。

      プレスダレを起こさない手法もあるのですがコストが上がってしまいます。

      そんなカラクリもあって、サークリップを装着する向きを決めています。 ご参考になれば幸いです。

      Andy

  3. はじめまして。
    いつも参考にさせて頂いております。
    バイクのカスタムパーツで、意外とステンレス製品が多く、スチールとくっつけると電触を起こしそうで、アルミワッシャーを挟んでいます。
    質問なのですが、たとえばステンプレートとスチールプレートを、スチールボルトで留める際、アルミワッシャーを挟んだら電触防止効果はあるのでしょうか。
    また、そもそもステンレス製品を使わない方が良いのでしょうか。
    ステンプレートにスチールボルト(ねじが切ってある部分)が触れていると、結局腐食してしまいそうな気がしての質問でした。
    今まで挟んでいたので、無いといわれればそれはそれでショックなのですが(笑)。
    よろしくおねがいいたします。

    • k2さん、コメントありがとうございます。
       
      電触については詳しくないので、明確に断言することができずもうしわけないのですが
      私の知識の範囲でお答えさせて頂きますね! 
       
      確か電触は水素を基準にした電位差がどれだけあるか?
      また電位差の大きい金属同士を接触させると、アノード側(電位が高い)が電触する。と習ったと記憶しています。
       
      また、カソード側(電位が低い)にすれば、腐食(イオン化)防止を図ることができます。
      なので、PWCなど海水で使用する乗り物には、あえてステンボルトをアノードとして使用し腐食(イオン化)させる事で、他の金属を腐食から守っています。 
       
      つまり、接触する異種金属の電触は電位差に依存します。
      アルミ自体も電触はするので、スチールとアルミではアルミがアノード側になりますから、アルミが錆びる事になります。
       
      ただ、海水中でなければ、電触自体は雨中走行が主になるので、影響は少ないと思います。
      DRYコンディションしか走らないのであれば、メッキ等がしっかりしている事の方が影響が大きいですね。
       
      ステンレス製品はバイクのパーツとして多様されることは少ないです。 それは重たい事とコスト高なことが主な理由です。
      タングステンなど、意思をもって使用する場合もありますが、基本はアルミで制作することが多いと思います。

      ちなみに、どんなカスタムパーツの事でしょうか??

  4. 楽しく読ませていただきましたが、なぜスプリングワッシャーが使われているのかが分かりません。
    無駄な物は無いはずですが…。

    • いのっちさん コメントありがとうございます!^^

      おっしゃる通りで、最近リリースされているバイクにはほとんど使用されていません。
      緩み試験機というのがあって、ボルトやナットを狙いの軸力を発生させて
      振動を与え緩みの有無や時間を確認できるのですが、スプリングワッシャの有無で試験結果に影響は全くありません。(緩み発生する)

      「緩まないナット」としてハードロック工業が有名です。 新幹線や橋梁など高い信頼性を必要とする部材に
      使用されています。

  5. スプリングワッシャーは軸方向というよりも、ナットが緩む方向へ回転させずらくするためと認識していましたが。

    • おっしゃる通りです。 スプリングが効いている間は、回転しづらい事は確かです。 
      ですから、「緩んでから脱落するまで」の時間稼ぎとして有効です。

      しかし、根本である「緩み防止」には役立ちません。

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