連日とんでもない気温が日本列島を覆って猛威を奮っていますね。。。
こんなツイートを見かけました↓
おはようございます(*´꒳`*)
昨日、2時間半走った後休憩し、その後エンジンをかけたら回転数が異常に高く3700くらいを維持。
とりあえずそのまま走り峠道に入ると下りで回転数が高いからエンジンブレーキが効かない‼️
峠道から出て停車できる場所で確認したら水温計が『HI』に😫
クーラントも沸騰😔👍 pic.twitter.com/i6YJDu7B9L— 嫁さんには内緒で… (@cb1300st_sc54) July 17, 2023
連日猛暑が続くじ、自分のバイクもメチャメチャ熱い・・・ 大丈夫だろうか?? と心配になる方も多いと思います。
水温が上昇する原因は圧倒的にあの2つなんです。 それを解説していきます。
記事の目次
水冷エンジンがオーバーヒートする原因
だいだいオーバーヒートする場合は圧倒的にこの2つです。 まぁ原因2については点検さえキッチリやっていれば防げる原因なんですけど、トラブルが起こるマシンはオーナーも無頓着な方が多い傾向にあります。
主な原因はこの2つ
- ラジエターファンが回らない
- 冷却水の不足
まずこの2つの原因を疑う事からが故障探求のスタートです。
原因1. ファンが回っていない
最も多いトラブルとして、ラジエターファンの動作不良が真っ先に疑われます。
ファンが回らない原因として様々な原因が考えられます
- ファンモーターの故障
- ファンリレーの故障
- ファンまでの電気配線が断線
- 動作司令を出すECUの故障
- ECUに情報提供する水温センサーの故障
などが代表例です。
水温が102〜105℃の間でファンが回りだします。 この時掃除機が動いているような「ブオーーーン」と言う音がします。かなり大きな音なのでわかりやすいと思います。
次に水温が下がってくると、95℃程度でファンが止まります。
走行風の当たらないアイドリングや、渋滞中は水温がすぐに上昇するのでファンも回りっぱなしになることも。
しかし日本より暑い国はたくさんあって、そこでも問題ない仕様になっているので、基本的に故障していなければ水温が110℃を超える事は滅多にありません。 (バーンナウトみたいな事すると無理だけど)
原因2. 冷却水の不足
次に多い(原因としては一番多い)のが、冷却水不足です。
冷却水が不足すると、ファンが回りません!
しかもエラーも出ませんよ!
冷却水は「水」が主成分なので温度によって体積が変化します。
- 水温上昇→体積膨張
- 水温低下→体積縮小
当然、エンジン内部の冷却水が入る容積は一定です。
つまりエンジン温(水温)が上がれば冷却水は溢れます。
逆にエンジン温が下がれば冷却水は不足します。
この水の膨張&収縮サイクルを支えているのが、ラジエターリザーバタンクです。 水温が上昇し冷却水の体積が膨張し溢れる分をホースを伝ってリザーバタンクへ放出します。
次にエンジン停止後、水温が下がると冷却水の体積が小さくなり吸収する力が生まれます。→リザーバタンクからホースを伝って冷却水を補充。
この時、リザーバタンクの空気が出入りできないと、タンクが大気圧によって押しつぶされてしまうので、大気開放された構造になっています。
つまり水は少しづつリザーバタンクから蒸発して現象していくのです。 この減少に気づかないまま乗っていると、膨張収縮を繰り返すうちに、冷却水の通路内に空気が入ってしまいます。
空気が入ったら大問題だゼ ベイビー。
空気は簡単に圧縮する事ができます。
冷却水は大気圧では100℃で沸騰します。 しかし密閉空間とする事で最大1.1気圧まで加圧されています。 この加圧によって沸点を100→121℃まで上昇させているのです。
しかし、エアの混入が一定量を超えた場合は、熱によって膨張した冷却水が、通路内にある空気を圧縮するだけで圧力が上がりません。
冷却水の圧力が大気圧以上に上がらなければ100℃で沸騰します。
峠道など標高1000m程度では96℃で沸騰しますよ!
つまり、冷却水不足によって圧力が上がらず、100℃以下で簡単に沸騰してしまうのです。
その結果、ファン作動温度の102〜105℃程度まで温度が上がる事はありません。→エンジン停止して自然に冷えるのを待つしかありません。
また、沸騰させてしまっていると言う事は、エンジン内部の一番熱いシリンダー壁(ウォータージャケット)に水ではなく空気が触れていると言う事です。
空気は水の比熱の1/4.06倍しかありません。 つまり熱を奪う量が圧倒的に少ない! 熱を奪えないという事は金属が局所的に変形してしまい大事なエンジンを破壊しかねません・・・
その他の理由
もちろん、上記理由以外にもオーバーヒートする場合はあります。
- サーモスタット閉じ側で固着
- ラジエターキャップ不良
- 冷却水通路の詰まり
- ウォーターポンプ不良
- ホースクランプの緩み
上記不具合も頻度は低いものの、発生する可能性は十分に考えられる原因です。
水の性質
簡単な水の性質についておさらいしておきます。
リザーバタンクに増える量
水は温度が上昇すると密度が低下して体積が膨張します。 また水の密度は4℃が最も高くなります。
CBR1000RRRの冷却水量が2.29Lなので、どの程度膨張するのか計算してみます。
水温 |
冷却水量 |
密度 (kg/m3) |
4℃ | 2290 | 999.997 |
20℃ | 2294(+4cc) | 998.223 |
40℃ | 2308(+18cc) | 992.210 |
60℃ | 2329(+35cc) | 983.200 |
80℃ | 2356(+66cc) | 971.818 |
100℃ | 2389(+99cc) | 958.393 |
110℃ | 2409(+119cc) | 950.62 |
120℃ | 2429(+139cc) | 942.76 |
4℃に比べ120℃では+139cc増加する事になります。
100℃でも約100ccの冷却水が膨張しリザーバタンクに流れます。 そしてエンジンが冷えればリザーバタンクから100cc分が減少します。
水蒸気は1700倍
水が沸騰して水蒸気になると体積は1700倍になります。
つまり冷却水1ccが沸騰して水蒸気になると1700ccに膨らみます。
そりゃリザーバタンクはグツグツ煮え立ちますわなw
水冷エンジンの構造
簡単に言うと、
冷却水がエンジンの熱を吸収し、ラジエターを使って熱を待大気に放出します!
ポンプでエンジンの熱い部品に水を送ります。 すると熱が金属→水へ移動します。 熱くなった水をラジエターに送り込んで、ラジエターに走行風が当たります。
するとラジエターが冷えて、水の温度も下がります。 温度が下がった水を再びエンジンに送り込んで熱交換サイクルを構築しています。
走行風が当たらないと冷えない
ラジエターは風を当ててあげないと、冷やす事ができません。
街中を一定速で走るなら40km/hも出せば十分冷えてくれます。 しかし渋滞にハマったり、信号待ちの時は速度ゼロで風は当たりません。
するとエンジンの熱を大気に放出することができず、水温は上昇する一方になりオーバーヒートしてしまいます。
その時活躍するのが・・・ラジエターファン!
走行風が無くても、ファン(扇風機)を回す事で強制的に風を起こし、ラジエターを冷やします。
その結果冷却水が冷えて熱交換が可能になるのです。
余談ですが、一昔前のクルマでは「ファンベルト」と言って、ファンをベルト駆動している時代が当たり前でした。エンジンが掛かると冷えていようが、走行していようが強制的にファンが常に動く仕様です。
このファンベルトがちょくちょく切れてしまうんですよね。 そんな時は彼女のストッキングをビリビリにして結んで応急処置するのが定番でしたよ!(ガチ←知ってる人多いよね?? コメント待ってますw)
バイクの場合は「ファンモーター」なので電気的に駆動させます。
ファン作動温度はなぜ100℃以上なの?
ファンが動き出す水温は102〜105℃の間に設定されています。
ファンが停止する温度は約95℃です。
もっと早く、低い温度で動かせベイビー。
この理由は簡単で
水温が高いほど、ファンを動かす時間を短くする事ができるからです。
外気(空気)の温度を変えることはできません。 水温が高いほど、外気温との差が大きくなります。
すると熱交換の効率が上がるので、ファンを動かす時間を短縮できるのです。
水温が同じ100℃でも、真夏の気温35℃と真冬の5℃を比べた時、真冬の方が早く冷えるので、ファンを動かす時間が短いです。
つまり水温を高い状態にしてファンを回す事でファンを小型軽量可できるのです。
バイクは電動ファンですから作動プログラムを変えるだけで95℃でファンを作動させる事も可能です。
しかし95→85℃へ下げるのと、105→95℃へ下げるのでは、同じ時間で下げる場合95→85の方が大きなファンを必要とします。
重量やレイアウト、ファンが動く時が渋滞やアイドリングなど低負荷であることなどを総合的に判断してファンの大きさが決められています。
だったらなぜもっと温度上げないんだ?
効率がいいなら上げろベイビー
F1では冷却水温を120℃以上に上げる事で、ラジエターを小型化していた時代がありましたよ!
技術的には可能ですが、温度を高い状態を保つには同時に高い圧力をキープする必要があります。
ウォーターポンプのシール構造、耐圧ホースへの変更、ラジエター強度アップなどダイレクトにコストアップになってしまうので、量産車は1.1k、沸点121℃の仕様に落ち着いています。
耐圧ホースは固くて曲がらない&整形しづらいので、レイアウト的な制限も厳しくなってきます。
なので、「SSはクソあち〜!足が熱すぎるよ!」なんてセリフが聞こえてきますが、実はその通りなんですw
まぁバイクなんて結局どの車種も夏乗れば熱いけど。
真夏の対策
ずばり!
リザーバタンク内の水量を適切に保つ他ありません!
SSやネイキッドに限らず、国産メーカーのバイクであれば、外気温が40℃で、渋滞を走行しても冷却水が沸騰する事はありません。
はやりトラブルで一番多いのは冷却水不足が引き起こす圧力不足→100℃以下での沸騰です。
炎天下の中リザーバタンク内の冷却水が蒸発して減少→オーバーヒートの方程式が最も多い原因となっています。
また、ラジエターキャップが圧力調整機能を担っています。
バネのちからを利用して圧力コントロールをしていますが、稀に詰まりや異物噛み、サビの固着などで機能を失っている場合もあります。
年式が古いバイクの場合は、ラジエターキャップも併せて点検してください。
超注意!
エンジンが熱い時にラジエターキャップを開けてはなりません。100℃以上の水
もし100℃を超えていた場合は、キャップを開けた瞬間圧力が下がり一気に沸騰します。 1700倍の体積になるのでとてつもない勢いで熱湯を浴びる事になり大火傷を必ず負います。
点検する時には、必ずエンジンが冷えた状態で行うことが鉄則です!
まとめ
バイク(冷却水)がオーバーヒートする原因が分かって頂ければ嬉しいです。
最近のバイクは排ガス規制が厳しくて水冷エンジンが増えています。
バイクが正常な状態であれば、真夏のどんなに熱いときでも実力不足でオーバーヒートする事はまずありません。
リザーバタンクの水量は日常点検で行うため、工具を使わなくても確認できる位置にあります。(大体見づらいけど)
長距離を走ると自分のエンジンの熱で更に蒸発していって減るスピードも早まりますから、まだ点検してないな? と思った方は早速量を確認してみてください♪(*^^*)
何か疑問があればお気軽にコメント下さい。←参考にして動画を作る予定です♪