これが実現されたら物凄いパワーアップ間違い無し!!
記事の目次
ジェットイグニッションとは何?その仕組
またの名を
プレチャンバーイグニッション(Pre Chamber Ignition)とか、
副室燃焼とも言います。
今までの燃焼方式は、点火プラグで種火を起こし火炎を伝播させて燃焼させ完了。
ジェットイグニッションは、先ず点火プラグ周辺に設けた福室の中で小さな燃焼を起こします。次に福室の壁に設けた小さな穴、オリフィスから火炎が噴き出します。言わば「火炎を放射」します。
その火炎放射された火で、主燃焼室の火炎が燃え広がる仕組みです。
言い換えれば、点火プラグによって火炎放射 →火炎放射を受けて主燃焼を起こします
ジェットイグニッションのメリット
ジェットIG (副室燃焼) |
STD IG仕様 | |
燃焼速度 | 高速化できる | 変化無し |
着火性 | 薄い混合気に着火可能 | 薄い混合気は着火し難い |
火炎形状 | 放射状 | 球状 |
薄い混合気に確実に着火できる事が一番のメリットと考えます。
と言うのも、内燃機関で燃料制限が無い場合は、やはり”燃料をガンガン使う”事が基本です。
この理由はフェラーリのレギュレーションの盲点を突いた事が理由で↓
とある年、燃料流量制限がある中、フェラーリは流量計を通過した燃料を、膨らむ素材を使った部品に一時的に貯留しここぞと言うパワーが必要な時に貯留した燃料を大量噴射してゲインを得る!
なんてレギュレーションの盲点を突いていた事に由来します。 この行為が明確に禁止された次レースからフェラーリのストレートは全く遅くなってしまった事は必然と言って間違いありませんw
とは言え、時代はカーボンNですから「少ない燃料で高出力を得ること」は全メーカーの課題とも言えますね☆
なぜジェットイグニッションは生まれたのか?
その背景を知るとだんだんと見えてきます。
元はドイツMAHLE(マーレ)社が開発した技術で、F1エンジン向けに開発されました。 (自分調べでは2011年にMAHLE社が特許取得、2012年公開)
F1のレギュレーションに
- 燃料量は110kg以下
- 燃料流量は110kg/h以下 ※10500rpmで計測
- 圧縮比は18:1以下
との決まりがあります。
その中でパワーを出す為には燃焼スピードを速くする事がパワーUPに直結します。
この燃焼スピードを高める技術としてジェットイグニションが生まれました。
更にレギュレーションによって、燃料流量が10500rpmの時、最大110kg/h以下と制約があります。 このルールにより実際は15000回転まで回せるエンジンが実質回す事ができません。(燃料が足らないから)
そこで燃費向上、出力向上の為に混合比が薄い状態でパワーを出す必要性に迫られました。
現在はこのMAHLEが持つ特許はイギリスを拠点とするイルモア社と言うレースエンジン専門のエンジニアリング会社が所有しているようです。(現在はメルセデス系)
F1ジェットイグニッション採用の歴史
2014年:メルセデス実戦投入
2015年:中盤からフェラーリ採用
2016年:ルノー採用
2017年:Honda採用
メルセデス傘下の会社が副室燃焼に関する特許を持っていた事もあり、エンジンが1.6L、V6ターボに大きく変更された2014年から早速メルセデスが採用しています。
ハミルトンが7年連続チャンピオン(2014〜2020)を取った初年度が副室燃焼を採用した2014年! と言う事を考えても、現代の内燃機関において大きな進歩を遂げる技術である事は間違いないでしょう。
現在このジェットイグニッション(副室燃焼)技術は一般化されていて、GT500のエンジンでも採用されています。 公式に発表しているのはHondaだけですが、実際は全メーカーが採用していると見て間違いありません(業界人の話)
2012年に特許が公開され、実際に得られる効果が高いとの事で世界中のエンジン開発エンジニアがシノギを削っている技術と考えます。
CBR1000RRRの特許は他と何が違う?
最も異なるポイントは、副室の壁部分が回転する事です。
F1で採用されている副室はただの動かない壁だから、この可動壁にすると低回転&低負荷の効率が悪い領域でしっかりと副室内のガス交換ができる事がメリットなんだろうか・・?
クランク1回転につき副室も1回転してるから、どこからか動力を持ってこなきゃなんだけど、ギヤorチェーンを介するデメリット(コストアップ&摩擦ロス&スペース要)と副室によって得られるメリットを天秤に掛けた時・・・
エミッションをキレイにできるなら、下手にどデカイ触媒付けるよりイイのかも!?
回さずに住むならそうしたいよね。 けどそのままでは特許に引っかかりそうだし・・
HondaF1の開発では、燃焼室に設けた副室が熱でトラブルを起こす事に苦労していました。 ↑の特許方法なら熱交換という部分では固定式より有利になりそうですね。
またF1の場合、混合気が副室に進入する経路はやはり噴口(オリフィス)だけです。 街乗りを前提の市販車においてはガス交換が必須なので、常用回転域以外でも確実にガス交換ができる回転式はコストを除いて採用するメリットは多いと考えます☆
↓参考
第4期Honda F1の技術解説