バイクを納車する時、丁寧にしっかりと整備するバイク屋さん程、ガソリンが入っていない状態で納車されます。 タンクを外して整備する時、燃料満載だと重たいので、外観部品のタンクを傷つけてしまったり、タンク取り付けボルトのネジが外れる瞬間に、自重でネジ山を破損させてしまったりするリスクが高いので、持ち込み整備は除いて、ガスをカラの状態で整備しています。
さあ! これから楽しいバイクライフの初まり〜♪♪ と思った矢先、ガソリンのEマーク(EはEmptyの略)が点いた! 早速ガソリンを給油だ〜( ^ω^ )
パイセン!! レギュラーと、ハイオク、どっち入れたらいいですか〜??
おう!そりゃハイオク入れたらエエがな! パワーも出るんやし! ( ̄▽ ̄)
こんな感じの会話、どこかで聞いた事あるな〜?? って方いませんか? ハイオク入れる人も、レギュラー入れる人も、ガソリンの知識を正しく身につければガソリンスタンドでの楽しみが一つ増えると思いますので、参考になれば幸いです☆
記事の目次
1、なんでガソリンを入れる必要があるの?
アホか! 燃料入れなバイク走らんやんけ! と聞こえてきましたが、その通りでスミマセン。 そうなんです。燃える材料が、ガソリンなんです。 「燃える」+「材料」=が燃料です。ではこの燃える状態って何でしょう? こんなシーンを想像してみてください。
ヤンキーの兄ちゃんがタバコを吸っています。「ポイっ」と火の点いたタバコを捨てたらナント!! ガソリンがたっぷり入ったバケツにまっしぐら!!(゚O゚)\( さて!この後はどうなるか? 正解は次の4つのうち、どれでしょう?
- 燃える!
- 爆発する!
- 大爆発する!
- タバコの火が消える!
正解は。。。??
4のタバコの火が消える! でした〜〜( ^ω^ )
タバコが火の点いた状態で、自由落下しながらガソリンの海へ落ちた時、ガソリンに引火する事は少ないです。(もちろん条件次第ではガッツリ燃えますし、引火しますので、良い子はマネをしないようにw)
ガソリンも含め、燃料が燃える為には、「気体」へ変化し、「酸素と結合」して、初めて燃える事ができます。 紙へ火を点けると燃えますが、紙が高温になり個体→気体へと状態が変わり、
紙が気体になったモノと酸素が結合して「燃焼」しています。 紙が気体になれなければ、火がつく事は絶対にありません。プラスチックやタイヤが燃えるのも、各々の物質が気体になって初めて燃える事ができます。 ガソリンも同じで、気体にならなければ、ガソリンに火を近づけても燃える事はありません。 タバコは「ジュ」と音を立てながら火を消す事ができます。
バイクのエンジンも全く同じで、ガソリンが液体のままでは燃えません。 なので液体→気体に変化させます。 次にガソリンの気体と空気を混ぜて「燃える条件」を整えます。 条件の整った、「空気+ガソリンの気体」をエンジンの中へ送ります。 ココだ! というタイミングで火をつけます(最近のバイクはコンピュータ制御です)燃料が、燃焼し、パワーを取り出す事ができます。
つまり、液体のガソリンでなく、ガソリンを気化させた気体をタンクに充填しておいても問題無い訳です。でも。。。 気体で燃料を保管すると、体積が凡そ155倍必要なので(温度によって変化します)仮に一般的な19Lのタンク容量のバイクなら、2945Lのタンクを持たなければなりませんw お風呂の容量が凡そ300Lですから、お風呂を10個抱えて走るバイクになりますね!(゚O゚) (やってられっか!)
なので当たり前にある液体エネルギーのガソリンと言うのは実に便利な液体ですね! ガソリンをなぜ入れるか!? それは、気化したガソリンの燃焼エネルギーを利用(熱エネルギーを推進力へ変換)する為です。
2、ハイオクを入れるとパワーが上がるんでしょ!!
このフレーズ、きっと皆さん興味があるのではないでしょうか。
結論! ハイオクを入れてもパワーが上がる事は絶対にありません!! 誤差の範疇です。 ガソリンの熱エネルギーを取り出して、推進力へ変換すると記しました。 レギュラーとハイオクはそれぞれどれだけの熱を取り出す事ができるのでしょうか??
気温0℃、1気圧で完全燃焼した場合に取り出せる熱量は下記の通りです。
- レギュラー = 34.5MJ/L
- ハイオク = 35.1MJ/L
- ジェット燃料= 36.7MJ/L
- 灯油 = 36.7MJ/L
- 軽油 = 37.7MJ/L
1MJ(メガジュール)で、0℃の氷3kgを全て溶けす事のできるエネルギーです。
オイオイ! レギュラーよりもハイオクの方が取り出せる熱量が1.7%多いやんけ! つまりはパワーが1.7%上がるって事やろ!? と思った貴方! 鋭い突っ込みです(ー ー;)(汗) 確かにその通りなんです! でも。。。
これは資源エネルギー庁が発表している理論値にしか過ぎません。 しかも条件を0℃、1気圧で完全燃焼。。。 実際にオートバイのエンジンは冷間時、定常走行、加速中や減速中、スロットル開度などで、圧力と温度は常に変化していて完全燃焼はありえません。
実際に発生する熱エネルギーを推進力へ変換できているのは、取り出した全体のわずか30〜35%程度です。 このロスしてしまうエネルギーが膨大な為、発熱量の1.7%の違いを、燃費なり、加速感なり定量的にバイクへ置き換える事は不可能です。 定量的に出力を計る、シャーシダイナモに乗せても燃料の差は現れません。(レギュラー指定車に、ハイオクを入れた場合。)
ワシのバイク、ハイオク入れたらパワー上がったんや〜( ̄▽ ̄)
と言っているパイセンがいらっしゃいましたら、そっと優しくこのブログ記事をご紹介下さいw もしホントにパワーが上がるのなら、その事を一番アピールしたいのは石油会社です!w
3、だったらハイオクはいったい何がイイの??
その答えは!→ 高圧縮比のエンジンにハイオクを使用する事で大きなパワーを得られる事です! ハイオクを入れると性能が上がるのではなく、高性能エンジンがハイオクを必要としているんです。 どゆこと???
高性能なエンジンは、パワーを得る為に、圧縮比が高い。 →圧縮比が高いと、点火プラグで火を点ける前、若しくは後に、「ガソリンの気体と空気の混合気」に勝手に火が点いて爆発してしまう。 この現象をノッキング(異常燃焼)と言います。 ノッキングの中でも、点火プラグで着火する前に発生するモノをプレイグニッション、点火プラグで着火した後に発生するモノをデトネーションと分類します。(内燃機関工学では分類しない事もあり)
夏の風物詩、花火は、「爆発」。エンジンは「燃焼」この差は歴然!
- 燃焼した時の火炎伝播速度=およそ35m/S。(秒速35m)
- 爆発した時の火炎伝播速度=およそ2000〜3000m/S (秒速2000〜3000m!)
燃焼と爆発は比べものにならないほどのエネルギー差が生まれます。そしてこの爆発の事をノッキングと言い、エンジンを瞬時に破壊してしまう恐ろしい事態なのです。
ノッキングはなぜエンジンを壊すか?
ノッキングが起こると同時に衝撃波が発生します。 この衝撃波が、シリンダーやピストン上面、シリンダーヘッドに存在する熱境界層(断熱層)を破壊し、2000℃の高温ガスが、融点約750℃のアルミニウムに直接触れる事になり、溶融してしまいます。 通常燃焼の時は、熱境界層が存在するおかげで、高温の生ガスはアルミニウムに直接触れる事がなく問題が発生しません。
高性能エンジンはなぜ圧縮比が高いのか?
冒頭、なぜガソリンを入れるのか?との答えは、燃焼した熱エネルギーを取り出すと記しました。 同じ排気量の場合、よりたくさんの熱エネルギーを取り出せるエンジンの方が高性能と言えます。同じ燃料量の場合、より小さな状態から燃焼させた方が膨張率が大きくなります。ガソリンの発熱量は変わりませんが、効率が良くなります(ロスが減る)
- 普通のエンジンで混合気を圧縮した時のエネルギを仮に”2”とします。
- 圧縮比を高めた高性能エンジンで混合気を圧縮した時のエネルギを「4」と仮定します。
点火プラグで火を点けるとエネルギーは10倍とすると、取り出せるエネルギーは下記のイメージです。
- 普通のエンジン 圧縮時のエネルギー2 x 10 = 20エネルギー
- 高性能エンジン 圧縮時のエネルギー4 x 10 = 40エネルギー
圧縮比が高いと言う事は、ボイルシャルルの法則から温度も高いと言う事を意味します。熱エネルギーを変換するので、着火前の温度は高いほど着火後の温度も高くなり効率が良くなります。近年のSS車は13を超える圧縮比ですから、本当にすごい!
ハイオクの良いところをおさらい!
- 高い圧縮比を持つ高性能エンジンに必要な、対ノッキング性能が高いガソリンである。
- 洗浄成分が入っている為、エンジンを少しクリーンに保てる。(詳細は下記にあります)
4、ハイオク指定のバイクにレギュラー入れたらどうなるの?
普通に街中や高速を100km以下で走る分には何ら問題ありません。 アクセル開度が50%を超えるようなシチュエーションでやっとノック限界に近づき始めると思ってもらってOKです。 更にSS車のほとんどは、ノックセンサーが装備されていて、万が一ノッキングが発生しても確実に検知し点火タイミングを遅角させエンジン破損を防ぐプログラムが自動で働きます。 だからといってハイオク指定車に常日頃からレギュラーを入れる事は避けてください。
ツーリング先などで突然のガス欠! 友達や周りの人からガソリンをもらう時にレギュラーしかない!! なんて緊急時には、安心して入れてください☆
5、ハイオクの洗浄成分が魅力!?
これはかなり多くのライダーがご存知の事と思います。 実際に洗浄成分が入っている事は事実なのですが。。。 値段に見合う洗浄能力を持っていないのです。。。 なぜ洗浄成分を配合しているかというと、聞こえの良い付加価値を付ける必要があるのです。 ハイオクを入れる目的は「高い圧縮比を持つ高性能エンジンの性能を発揮させる為」でしたよね。
しかしこれ、一般人が理解するのはとても難しいのです。ぽるしぇに乗る、芦屋のマダムそ想像してください。 クルマの事はもちろん、エンジン?圧縮比??ノッキング??? そんな事を理解しているマダム。。。居ませんね。 いやむしろ、こう言うドライバーの方が圧倒的多数を占める中、ハイオクの価値を分かりやすくアピールする為にはどうすれば良いと思いますか・・?
そう、「エンジンをクリーンに保てます」とか、「ライフが伸びます」って言えばクルマに詳しくないオクサマや、世田谷の美魔女、おっかさんにも理解できそうじゃないですか!? なのでoilメーカーもパンフレットなどを使って大偉大的にアピールしてます。
中には、レギュラー指定であっても、エンジンをクリーンに保つ為に洗浄成分を配合したハイオクを選んでる方も見えますが、よれよりもっとイイ方法があります!
それはレギュラーに戻し、定期的にワコーズ「FUEL1」を入れる事! このFUEL1の洗浄力はホントに強力です。 SC59 CBR1000RRの腹下マフラーは、暫く乗ると、自分の排ガスでスイングアームが茶色っぽく変色してきます。 パーツクリーナーやガソリンで拭いても全く取れませんが、このFUEL1を染み込ませた布で拭くと、キレイに取れます! ハイオクの10円/Lのコストよりも安くて強力です! 何台もキャブをオーバーホールしてきたプロメカニックもオススメです。
ハイオクの場合、レギュラーより約10円/Lほど値段が高いです。つまり160ℓハイオクを入れると、1600円分の洗浄効果を手に入れる事と同じです。 この時イコールとなるのは?
- ハイオク : 160ℓ x 10円/ℓ = 1600円
- レギュラー : ワコースFUEL1x1本 = 1600円
ハイオクを160ℓ入れた時の洗浄成分による効果と、FUEL1を1本入れた時の洗浄効果が同じか?? それはもう圧倒的にFUEL1の勝ちです。 レースに使用するCBR1000RRのエンジンには当然ながら、ノッキング防止の為にハイオクしか入れません。 では洗浄効果はどのくらい?? 定量的には言えませんが、ガッつりカーボンが溜まります。 高負荷領域ではカーボンは蓄積されにくいのですが、溜まります。 洗浄成分は入っているハイオクですが。
なので、レギュラー指定のバイクに「洗浄効果を期待してハイオクを入れる」のであれば、それはコスパに見合わない投資(もったいない!)と言っても過言ではありません。 それであればぜ〜〜ったいFUEL1の方が洗浄性能が優れています。
早速自分のバイクのエンジンをクリーンアップしよう!!
艦内放送ホワイトベースと言うチャンネルで、面白い実験動画があります↓
6、まとめ
レギュラー指定車の場合
- ハイオクを入れてもパワーアップはしない。
- 洗浄成分は入っているがしかし、フューエル1を定期的に注入する方がエンジンをよりクリーンに保つ事ができ、且つハイオクを入れ続けるよりもコストが安い
ハイオク指定車の場合
- 高性能エンジンのポテンシャルをフルに発揮するにはハイオクでなければならない。
- ガス欠などの緊急時、アクセル開度が10%未満の速度レンジではレギュラーを入れても何ら問題はない。
- レギュラーを入れ高負荷領域の走行をするとノッキングによりエンジンを壊す。