お役立ち記事!
XJR400(4HM)リアブレーキストローク過大の修理|リターンポートの詰まり

XJR400のリアブレーキトラブルで入庫しました。

症状は”ブレーキがフカフカ”している。 ”ペダルストロークが大きくエアを噛んでいるような感じ”との事で原因を究明します。

 

不具合の発生原因

結論
  • ブレーキラインにエアの混入は無く正常であった。マスターピストンのリターンポート4穴のうち3つにゲル状物質の詰まりが認められる。
  • よってブレーキリリース後に油圧室へオイルが流れず負圧状態のまま保持される。その状態でブレーキペダルを踏むと油圧立ち上がりに必要なストロークが長くなる。 結果ペダルストロークが増大しフカフカなフィーリングとなっていた

XJR400リアブレーキ分解修理

↑ゲル状物質の詰まりが認められる。 異物はブレーキ操作によってカップ側方向へのみ動く力が働くため、エア抜き作業を行っても症状が改善する事のない部位であった。

 

リアブレーキの症状

まずはオーナーから症状や発生状況を伺います。

不具合の事象
  • リアブレーキがフカフカである。
  • ショップにてエア抜き作業実施後2~3ヶ月は改善したが再発
  • ブレーキペダルを踏む度にストロークが変化する事がある

このような状況で入庫しました。

 

推定原因は?

まずはブレーキラインへのエア噛みです。

何らかの原因でエアが噛み、フカフカになっている。 →温度変化が起こるとペダルストロークも変化するので事象ともマッチします。

ただ、ショップさんにてエア抜きを実施してもらったとの事で、盛大なエアは噛んでいない可能性が高い。

 

次にマスターシリンダのカップ破れ、ポート詰まりなど。

エアは噛んでいない状態であった場合、ストローク過大になる原因は油圧発生機能の不具合です。 マスターシリンダーがストロークしても油圧を保持できない、逃げてしまう事が考えられます。

ピストン若しくはシリンダーの摩耗、カップの破れや固着、リターンポートやインレットポートの詰まりなど。

 

凡そこの辺りに犯人の目星を付けて分解していきます。

 

リアブレーキ分解

ブレーキフルード点検

XJR400リアブレーキ修理
XJR400リアブレーキ修理

フルードの量OK、色もやや茶色が濃いですが、最近交換した事を伺うことができます。

 

ブレーキストローク把握

XJR400リアブレーキ修理ストローク前:59.5mm
XJR400リアブレーキ修理ストローク後:52.0mm

正確な診断は正確な数値の把握が第一歩!

と言う事でペダルとプッシュロッドの連結ピンにマーキングを打って、計測します。

結果、7.5㎜のストロークで安定していました。

 

 

保険で角度側でもマーキングを打っておきます。↓

XJR400リアブレーキ修理
XJR400リアブレーキ修理

 

これで修理完了後にどのように変化したか、効果を確実に把握できます。 分解の準備完了!

 

分解1. エア抜き

XJR400リアブレーキ修理

先ずはエアの有無の確認します。

ブレーキラインを外すとブレーキフルードが漏れますが、塗装面に付着すると塗料が浮き上がってしまいます。

なのでエア抜きもかねてブレーキラインのオイルを抜いてしまいます。

写真のようにエアは全く出てきませんでした。

 

分解2. ブレーキライン取外し

XJR400リアブレーキ修理
XJR400リアブレーキ修理

ブレーキラインを外します。 特にリザーブタンク側のフィードホースは自由落下してフルードが垂れるので、しっかり養生しておきます。

 

分解3. マスターシリンダー分解

次にマスターシリンダーを分解してきます。

XJR400リアブレーキ修理

マスターシリンダー単体になりました。 ダストブーツの破れはありあません。

 

 

XJR400リアブレーキ修理

バンジョーボルトに白いゲル状の堆積物がいました。 恐らくブレーキライン全体で発生していた事でしょう。

 

 

XJR400リアブレーキ修理ダストブーツ内には錆が発生していましたが、問題無し

 

 

XJR400リアブレーキ修理

↑リンゴをすった果肉のようなモノが大量に付着していました。 この異物がリターンポート内に留まりフルードの流れを阻害している原因と断定します。

 

XJR400リアブレーキ修理

マスターシリンダーの分解が完了しました。

ブーツの破れや膨張、以上な摩耗はありません。 これであれば部品カップ、シール、ブーツなどゴム部品を交換すればOKです。

 

ストローク量と部品寸法を確認

XJR400リアブレーキ修理

ちょっと殴り書きで申し訳ないのですが、マスターの寸法、ピストンの寸法、カップの位置関係から追っていくと、油圧発生に必要なピストンストロークは約2㎜である事がわかりました。

しかし現状は分解前に確認した7.5㎜ですから、5㎜程度余計なストロークが存在しています。

 

この5㎜の余分なストロークをライダーは「フカフカ」と言う言葉で表現している事になります。

 

マスターシリンダーの機能

XJR400リアブレーキマスターシリンダーの構造

1. マスターシリンダ・・・ピストンと対になって油圧を生む。ブレーキオイルの供給穴もあり

2. プッシュロッド・・・ペダルの踏力を往復運動として作用させ力をピストンに伝達する

3. マスターピストン・・・カップを収納しシリンダーと対になり油圧を生む

4. オイルシール・・・ブレーキフルードの漏れを防ぐ

5. ピストンカップ・・・往路の油圧を生む。復路はフルードを流し油圧を生まない

6. リターンスプリング・・・ピストンを元の位置に押し戻す

 

ライダーのブレーキペダル踏力を1→6の順に伝える事で油圧を生む機構になっています。

 

ブレーキストロークの確認

プッシュロッドストロークは整備前7.5mm➔ 整備後3.0mmへと小さくなりました。

この値であれば正常と判断できますね。

自分がスケッチしたレイアウトの数値と照らし合わせても問題無しと判断できます。

ペダルを踏んだ感触も・・・

ANDY
正常に戻った!
タッチもストローク感も完ぺき〜

 

分解整備まとめ

今回は異物によって小さなリターンポートが詰まった事が原因で不具合が起こりました。

ではこのトラブルを防ぐにはどうしたら良いのか? それはブレーキフルードの適切なタイミングでの交換です。

 

ブレーキフルードはアルコールを主成分とした物質でできています。 ご存じの通り、アルコールは水と親和性が良いですよね。(お酒を水やお湯で割って飲める)

なのでブレーキフルードが空気中の湿気を反応しすこづつ水分を取り込んでいきます。

するとフルードの化学特定が変化し、ゲル状物質を自ら生成してしまい、トラブルを起こしてしまいます。

 

まずはメーカー指定の交換サイクル(1~2年毎が多い)が良いですが、中古で購入する場合などは分かりません。 その時はバイク屋さんに「水分量テスター」と言うのがあって、ブレーキフルードの水分量を計測してくれます。

 

水分が多く含まれる場合は交換、水分が無いor少ない場合はOKといった診断が簡単にできますので、心配な方はお抱えのショップさんに一度相談してみると良いと思います。

Let’s Fun! Ride! Run!
Andy

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