バイク用オイルフィルター(エレメント)の新品4つをぶった切って、性能や機能の違いを徹底的に洗い出しました。 純正品と社外品にどのような違いがあるのか?
性能差がわかれば、高くてイイ物なのか? 安いだけなのか? それとも安くてイイ物なのか? それぞれ答えを見つけられると思います!
記事の目次
1. オイルフィルターを分解検証して分かったこと
- 迷ったらコスパ最強の純正オイルフィルターを選ぶべし
- ろ過性能を密度で比較した結果、純正、社外品に差はない
- 最も大きな違いは耐久性(寿命)の違いである(社外品は短命)
- サーキット専用バイクは、リリーフバルブ径の最も多いい純正を選ぶべし
- 極寒ツーリングで油圧が上がる時は純正フィルターを選ぶべし!
※今回の比較、計測条件において
結論に至る理由
HONDA純正オイルフィルターは、フィルター容量、面積ともに最大であり、リリーフバルブ径も大きい事から耐久性とろ過性能を社外品をは別次元で両立している。 100㎞走行あたりのコストは15円台と最も安い。
ろ紙(エレメント)密度で比較した場合、差は殆ど無いと言えるレベルであり、社外品も純正品も同等のろ過性能を有している。
(重量計の分解能が1g単位であり、測定誤差の範疇。 更に正確に計測するには0.01g単位の重量計が必用である。)
純正品は、社外品に比べて容積+46%、面積+38%と大容量でありキャパが大きい事が分かった。
リリーフバルブ面積は社外品より1.6倍大きい純正品がサーキット走行において安心できる。
2. 分解比較検証したオイルフィルター
今回は↑のオイルフィルター(エレメント)達をぶった切ってやりました。 全国の用品店に並ぶメジャーな子ばかりです。
3. オイルフィルターの役割(機能)
まずは大雑把にオイルフィルターが何をする部品なのか? をおさらいします。
オイルフィルターの外側からオイルが流入し、エレメント(ろ紙)を通過して不純物を取り除き、フィルターの中心から排出されていきます。
機能1. オイルろ過機能
このろ紙(エレメント)をオイルが通過する事で、オイル内に含まれる不純物や異物をキャッチしてくれます。
フィルターの目が細かいと、小さな異物までキャッチしてくれますが、デメリットも存在します。
性能 | エレメントの目が細かい | エレメントの目が粗い |
異物除去性能 | ◎ ゴミが良く取れる |
△ 微粒子は透過しやすい |
耐久性 | △ 良く取れる分、早く詰まる |
◎ 粗い分、長持ち |
オイル圧損 (エンジン出力低下) |
△ オイルが透過しにくくロスが大きい |
◎ オイルが透過し易くロス少ない |
マッチングの良いオイル粘度 | 低粘度 | 高粘度 |
このようにエレメントの目の粗さによって得意分野が異なります。 自分のバイクに何を重視させるのか? と照らし合わせながら考えると、最適なオイルフィルターを選ぶ事ができます。
機能2. オイルバイパス機能
オイルエレメントに汚れや異物が堆積し詰まってしまうと、オイルが通過できずエンジンの潤滑不良で故障してしまいます。
それを防ぐ為、エレメントが詰まったときに「リリーフバルブ」が開き、別のオイル経路ができあがります。
このオイルを迂回する経路(バイパス)があるお陰で、万が一のフィルター詰まりのトラブルでもエンジンが焼き付きません。
機能3. 逆流防止機能
エンジン停止時、フィルターケース内のオイル流出を防止する機能です。
CBRなど横向きにレイアウトされていると、エンジン停止しオイルポンプも停止するとオイルがオイルパンへと落下してきます。
次にエンジンを始動するとき、フィルターケース内にはオイルが空っぽで満タンになるまで油圧が上がりません。 油圧が上がるまでエンジンはオイル無しで動くことになり、非常に危険です。
エンジン始動直後に油圧を確保する為には、停止時のオイル流出を最小限に留めなければなりません。
そのオイル逆流防止弁が↑写真のゴム部品です。
機能3. エレメント交換機能
エンジンオイルの汚れをエレメントに集め、フィルターケースを丸ごと交換する事で性能を維持することができます。
人間に例えると肝臓です。
血液の不純物を取り除き血液をクリーンに保ってくれていますが、交換機能はありません。 世の中にはチェーンソーや草刈り機など一部エレメント無し(交換機能無し)のエンジンも存在します。
4. オイルフィルター分解検証結果
分解して各寸法や諸元を計測した結果です。
結果1. フィルター重量比較
フィルター種類 | 重量(g) | 備考 |
HONDA 純正 |
196 | |
KIJIMA | 211 | マグネット分、重いと考えられる |
VESRAH | 195 | |
東単 | 196 |
重量に関しては各社ほぼ横一線でした。
唯一マグネットが入っているKIJIMA製品が14g重い結果ですが、納得できる数値です。
結果2. エレメントろ紙比較詳細
重量 | 厚み | 面積 (幅×長さ) |
容積 | 密度 | |
HONDA 純正 |
13g | 1.00mm | 555.9㎠ (幅4.18×長さ133) |
55.6㎤ | 0.23g/㎤ |
KIJIMA | 7g | 0.75mm | 400.1㎠ (幅3.15×長さ127) |
30.0㎤ | 0.23g/㎤ |
VESRAH | 7g | 0.65mm | 494.9㎠ (幅3.51×長さ141) |
32.2㎤ | 0.22g/㎤ |
東単 | 7g | 0.65mm | 494.9㎠ (幅3.51×長さ141) |
32.2㎤ | 0.22g/㎤ |
ろ過性能は全仕様同等である
理由: ろ紙の密度を比較した場合、各社同等の数値であり、差はない。
結果に0.01g/㎤の差(5%)はあるが、これは重量計の最小単位が1gであり測定誤差の範疇である。 誤差を無くすには0.01g単位での重量計測が必用。
つまり、価格の安いオイルフィルターでもしっかりゴミや異物をキャッチできる。
フィルター寿命(耐久性)に大差アリの容積
理由:最小容積のKIJIMAと、最大容積のH純正を比較すると1.85倍の差である
純正品を1とした場合、耐久性は下記の通り。
- HONDA純正=1(基準)
- KIJIMA =0.54
- VESRAH =0.57
- 東単 =0.57
容積比で見た場合、同じ量のゴミをキャッチすると純正比約半分で寿命が来るという事である。
この結果から、汚れを取り除く性能は密度の観点から見た場合には差はないと言える。 言い換えれば安いフィルターでもしっかりゴミが取れる。
しかしフィルター容積、重量の観点で比較した場合、純正品が約47%ロングライフである。
実際の構造においては、ゴミや異物はろ紙全体でキャッチするのではなく、粒度の大きい物は表面に多く付着する。 ”ろ紙表面積”で比較すると下記の通り
純正品を1とした場合の耐久性
- HONDA純正品=1
- KIJIMA =0.72
- VESRA =0.89
- 東単 =0.86
ではこの容積、表面積両方を平均した寿命を見るとこうなります↓
- HONDA純正=1
- KIJIMA =0.63
- VESRA =0.73
- 東単 =0.73
CBR1000RRの純正指定交換サイクルが1年若しくは10,000㎞なので、単純計算でKIJIMAの場合は6300㎞で交換する事になりますね。CBR1000RRのオーナーズマニュアル
結果3. リリーフバルブ諸元比較
バルブ径 | バルブ面積 | 開き荷重 | |
HONDA 純正 |
φ9.90mm | 76.9㎟ | ※追って計測 |
KIJIMA | φ7.95mm | 49.6㎟ | ↑ |
VESRAH | φ7.80mm | 47.8㎟ | ↑ |
東単 | φ7.80mm | 47.8㎟ | ↑ |
ろ紙が目詰まりを起こしオイルが通過できい場合に、リリーフバルブが開きオイルがエンジンへ流れる事ができる仕組みです。
フィルター内部で高まった圧力によってスプリングが縮められ、油路が形成されます。
注目すべきはそのバルブ径です。 径が大きいほどたくさんのオイルを流す事ができます。 逆に小さければオイル圧送量が少なくなります。
ここで疑問なのが、純正より小さなバルブ径で良いのか? オイル流量は確保できているのか? ということです。
Andyの経験値ベースですが、社外オイルフィルターに交換したことが原因でエンジントラブルになった事例を聞いたことも見たこともありません。 その意味でトラブル無しの実績は積み上がっていると思います。
しかしアフターマーケットメーカーが全車種のエンジンオイル流量なんて計測している訳がありません。 つまり「確認してないけどトラブル無いから大丈夫!」と言う状態ですよね。
実際バイクオーナーのほとんどは1万キロ以内でオイル交換しており、エレメントが糞詰まったコンディションのバイクは少ないでしょう。 しかもその状態でサーキットで高回転ブチ回し・・・ なんて人居ないですよね・・。
しかし、真冬のコールドスタート時など、オイル粘度高く油圧も上がりやすい状況で走る事は珍しくありません。 もちろん、Hondaとしても粘度は変える事を想定しており、”サービスマニュアルにも適正なオイル粘度を選んでください”と記載されています。
半詰まりの状態で油圧が上がってしまうシチュエーションなどを想定するとやっぱりリリーフバルブ径は純正が最も安心できます。
つまりこう言うこと!
高粘度オイルを使用する時は、リリーフバルブ径が最も大きい純正フィルターを選ぶべし!
真冬の雨中走行などオイル粘度が低いシチュエーションを走るなら、リリーフバルブ径が最も大きい純正フィルターを選ぶべし!
結果4. 最もコスパが良いオイルフィルター
Amazonリンク | 税込み価格 | 100㎞走行あたりのコスト |
HONDA 純正 |
¥1,551 | 15.5円 (1551÷10000×100) |
KIJIMA | ¥1,650 | 26.2円 (1650÷6300×100) |
VESRAH | ¥1,233 | 16.9円 (1233÷7300×100) |
東単 | ¥1,540 | 21.1円 (15450÷7300×100) |
※結果2の寿命係数を掛けた交換距離にて割った金額
やはり純正が一番コスパ良い結果となりました。
KIJIMAは”マグネット入り”と言うプレミア仕様なので最も悪い結果です。
また、東単のパッケージにある「純正比折り目20%アップ」は事実でした。 しかし折り目が増えた事によるメリットは何もない事も判明。 さらにはOEM先(製造メーカー)がVesrahと同一です。
店頭価格では平均200円以上、Vesrahの方が安い事が多いので比較が重要ですね。
KIJIMAの”マグネット付き”もまだ少し疑問が残っています。
あった方が良い事は間違いありません!
しかし、取付場所が疑問なんです。 オイルがフィルターを通過した後にマグネットがあるんですよね。 理想はフィルターを通過する前だと思いませんか?
クルマ用のエレメントでは通過前にマグネットが装備されている物が存在しています。 そもそも鉄粉はろ紙でキャッチできないのか・・・?
もしキャッチできないのなら、この場所でも問題無いと言う事になります。
もしキャッチできるのなら、この場所では無意味と言う事になります。 (リリーフバルブが開く事は考慮せず)
でも自分の感覚では鉄粉ほどの粒度ならろ紙でキャッチしてくれるんじゃないかなぁ~?と思う訳です。
この辺はもう現物を見るしかないので、馴染みのお店で中古の処分品をもらって中身開けてみようと思います。 現物確認が一番!
バイク用オイルフィルター分解検証まとめ
Andyが鈴鹿でエンジンブローさせてしまったときは、Motul300V 15w-50の高粘度オイル×Vesrahオイルフィルターの組み合わせでした。 この組み合わせからもしかして? と思って今回の分解検証に至った訳です。
ブロー原因はオイルやエレメントが原因ではない(ピストンピンクリップの外れ)ものの、オイルの粘度とフィルターのマッチングに傾向が見られたので良い収穫になりました。
またリリーフバルブの径に大きな違いがある事を知らなったのでここも走行シーンを知った上でマッチングを検討できる材料が一つ増えました♪♪
今回のCBR1000RRに適合するオイルフィルター分解検証結果としては、純正が最もコスパが良いとの結果になりました。
すると、、、次に気なるのが・・・
To be continue!!