こんにちは!Moto-Ace-Blogerの@Andyです。
バイクでサーキットを走行するとき、タイヤブランド、空気圧と同じように悩むのが「サスペンションセッティング」だと思います。 街乗りでもサーキットでもサスペンションが果たすべき機能は何も変わりませんが、目的が大きく異なります。 走行シチュエーションが限定される事で、何を重視して何を求めるのか? ディメンションと合わせて解説します。 この記事を読み終わった時に、サーキット走行が楽しい!とか、サーキットでサスセッティングしたら乗りやすくなった! タイムが上がった! そんなライディングの楽しみに繋がれば嬉しいです。
記事の目次
1. サーキット走行時のサスに対する考え方と練習
まず、サンデーレーサーがすべきはライディングスキルを向上させる事です。 サスペンションをいくらいじっても速く走れる事はありません。サスペンションをいじる事で、サンデーレーサーが全日本ライダーにはなれません。 サスぺンションをいじる事で全日本チャンピオンがMoto-GPでチャンピオンにはなれません。
バイクは、まずライディングありきで、バイクを速く走らせるスキルが絶対に必要です。 上を目指すのであれば、そもそもライディングスキルを上げなければステップアップはできません。 どれだけサスをいじっても物理的なコーナリングスピードと、平均スピードが上がらなければ無意味なのです。
ですからまずサーキットですべきは、ライダーのライディングスキル向上であって、サスセッティングスキルでは無いのです。
なぜサーキットでサスセッティングするのか
ずばりコレです。 この目的は草レースであろうが、Moto2であろうがMotoGPであろうが変わりません。 がしかし、このマシン作りに一生懸命になってしまって、本来すべきライディングスキルの向上を疎かにしてしまいがちです。 仮にAndyが全日本チャンプの高橋選手のマシンをそっくりそのままハルクプロから借りてきて乗っても、タイムは出ません(出せません) なぜならそもそも腕が無いので同じマシン、仕様でも不可能なのです。どのクラスへ行ったとしてもバイクはライダーありき、腕ありきなのです。
練習走行する時には、「自分自身のスキルに対する課題を持って、練習する」事がなによりも大事です。 「ちょっとフィーリングいまいち! イニシャルぬいとこ。」 では、ライディングスキルもセッティングスキルも磨けません。 貴重な練習時間とタイヤとお金がもったいないだけです。 できる事なら師匠と一緒に出掛け、課題を共有し、練習走行のアプローチから習うと上達スピードも、平均スピードも上げられます。
2.目的を分解してサスセッティングを行う
乗りやすいマシンを造る為に、セッティングする訳ですが、この文言では具体性に欠けます。 もう少し分解して考えます。 サーキットで練習していてこのような課題を持った時に、セッティングすると良いでしょう。
- 路面追従性の向上 →タイヤを路面形状に合わせて追従させる。路面を捉える。
- 衝撃吸収性能の向上 →縁石、路面ギャップで車体姿勢を乱さず安定させる。
- 車体安定性の向上 →ブレーキ、切り返しなどバイクの動きに安定性を持たせる。
- 接地感の増加 →タイヤインフォーメーションを感じて、グリップをじる。
- 軽快性の向上 →バイクを軽く感じさせる、思い通りに止める、始める。
フロントサスのセッティングをする場合、上記課題を持った時にセッティングを行うと、解決できるかもしれません。 例えば、ストレートスピードを上げる事が課題の場合は、サスでは解決できません。(場合によってはサスでコーナリングスピードが上がり、最高速も伸びる場合もアリ)
タイムアップに向けた課題を明確にして、その課題をクリアする為に何をするのか?(基本はライディングの改善)具体的練習内容を明確にした後に、サスセッティングを行います。 そしてサスセッティングを行う場合は、その予測できる効果も同時に考えイメージしながら行います。
- 何のライディングを向上させるのか課題(すべき事)を明確にする。
- 課題を解決する為の方法を2つ以上考える
- 良くなるはずと考える理由を明確にする。
- 2つの方法を実際に走行してTRYする。
- TRYした結果を分析する。 →良くても悪くても。
- 良ければもっと良くなる方法はないか、考える
- 悪ければ、何が悪かったのか分析し、次の改善策を考える
俗に言うワークスチームはこの7つのアプローチの分析スキル、実行力、データ収集力が圧倒的に優れています。 その為に人、モノ、カネを投資している訳ですから、プライベーターが勝てる訳はありません。 しかし同じマスにはなりませんが、同じクオリティにする事はできるんです。 サンデーレーサーの中には、これから国際に上がって全日本に出よう! と考えているライダーもいると思います。 一人で練習に行く時には、マシン整備と同じくらい大切な準備です。 練習は走る事が目的ではなく、ライディングスキルを向上させる事が目的です。 その目的を持ったら、このフローに沿って練習する事が最も短時間で、最も投資額を少なく、最も効率的な練習ができると言って過言ではありません。
3.ディメンションセッティング|フロント廻り
サスの説明の前に、ディメンションを変化させると、どのような事象が起こるのかを知る事がスタートです。 するとサスセッティングの理解もより深められます!!
3-1.キャスターアングル(キャスター角)
キャスターアングルは、フレームのステアリングヘッドの角度の事を意味します。 よくある勘違いとして、「フロントフォークの角度」と勘違いしている方が多く居ますが、それは間違いです。 正確には「ステアリングヘッドと、フロントアクスル中心を通る鉛直線とのなす角度」です。
基本的には、ヘッドパイプの角度と、フロントフォークが平行に取り付けられているので、キャスター角=フォーク取り付け角となっているモデルが多い事は事実ですが、一部アメリカンモデルなどは、キャスター角と、フォーク取り付け角が異なるモデルも存在しています。
基本的に街乗りバイクはセッティングする事が構造上不可能です。GPマシンにはヘッドパイプカラーと言う部品があり、そのカラーを組み替える事でキャスターアングルを変更しセッティングする事が可能です。
セッティング | ||
---|---|---|
トレール量 | 減少 ハンドリングがクイック | 増加 ハンドル入力のレスポンスが穏やか |
ホイールベース | 短くなる。 旋回性が向上する | 増加。 車体安定性が向上する。 |
実舵角 | 増加 ハンドリングがクイックになる 。 | 減少 ハンドリングが穏やかになる。 |
3-2.突き出し
名前の通り、フロントフォークをトップブリッジから突き出すように見える為、「突き出しセッティング」と言われています。 オーリンズのフロントフォークは4mmピッチでメモリが刻んてあります。
ロードレースを始めると、旋回性を良くする為にはキャスターを立てた方が良い。 だから突き出しを出すと良く曲がるようになってイイよ! というセリフをほとんどのライダーが耳にすると思います。 現にAndyも始めたばかりの頃はその言葉を疑いもしませんでした。 しかし結局それは間違いである事に後になって気づきます。
キャスター角が立つと(角度が小さい)、ハンドル切れ角が同じ場合には「実舵角が増える為に旋回性が向上する」と表現するのが最も正確な表現と言えます。 実舵角とは、
- フロントの車高
- キャスターアングル
- フロントタイヤの分担荷重
- フロントの旋回性など
キャスターアングルは、フロントフォークが25mmストロークすると1°変化します。 スロントサスストロークが、仮に120mmだった場合は、全伸びから前屈でキャスター角は約4°48′変化します。
仮に、ノーマルより5mm突き出したとすると、キャスター角は前屈状態でノーマルの全伸びと比べ、トータル5°変化する事になります。
セッティング | ||
---|---|---|
フロント車高 | 低くなる。 切り返しの安定性が向上する。 | 高くなる。 切り返しは軽くなる。 |
キャスターアングル | 減少する。(立つ) 実舵角が増えハンドリングがクイックになる。 | 増加する。(寝る) 実舵角が減少し、ハンドリングが穏やかになる。 |
Frタイヤ分担荷重 | 増加する。 Frタイヤの接地感が向上する。 | 減少する。 Rrタイヤのトラクションが向上する。 |
切り返し | 重さのある安定感が出る。移動半径が短いので力を入れれば速く動ける。 | 軽さが出る。移動半径が長い分、コンントロールしやすい。 |
3-3.オフセット(トレール)
オフセットはヘッドパイプ中心〜フォークセンターまでの距離です!
フォークオフセットも街乗りバイクではセッティングする事ができません。 ステム(俗に言う”ミツマタ”)を社外パーツに変更する必要があります。 JSBクラスなどレギュレーションでOKのクラスは、セッティングパーツとしてステムのオフセット違いを持っててコースやライダーに合わせてステムを交換します。
- トレール量の変化
- ステアリング慣性モーメントの変化
- ホイールベースの変化
- フロントタイヤの分担荷重など
セッティング | ||
---|---|---|
トレール量 | 減少する。 ハンドリングがクイックになる。旋回性向上が期待できる。 | 増加する。 ハンドリングに安定性が出る。 |
Frタイヤ分担荷重 | 減少する。 Rrタイヤのトラクションが向上する。 | 増加する。 Frタイヤの接地感が向上する。 |
ホイールベース | 長くなる。 車体安定性が向上する。 | 短くなる。 ハンドリングがクイックになる。 |
ステアリンング 慣性モーメント | 大きくなる。 初期入力に必要な力が必要で手応えを感じやすい。 | 小さくなる。 初期入力荷重が小さくバイクを軽く感じる。 |
3-4.ディメンションセッティングのプチまとめ
ディメンションセッティングを行うにには、レギュレーションによる制約や、コストによる制約が大きく関わってきます。 ST600に代表される改造が厳しいクラスでも突き出し量などは変更する事ができます。 しかし、やみくもに変更する事はオススメしません。 Frの旋回性を向上させる事に着目すれば実舵角が増えるキャスター角は小さく(立てる)する事が良い方向ですが、Rrの分担荷重が少なくなり、立ち上がりではトラクションで不利になります。 その対策としてRr車高を下げていては、もはや何をしているのかわかりません。
ですから、先ずはライダーありきで、ライダーのスキル向上が先決。 その上で道具を少しづつ使いやすくしていくと良いでしょう。 キャスターを立てて旋回性を向上させた。 不足するRrのトラクションは、自分がもっと後ろにシッティングする事で対処し、総合戦闘力UPを狙う・・・とか!
表には敢えてデメリットは記載しませんでしたが、表の左右で見比べてもらえれば、デメリットが炙り出せるはずです。
4. サスペンションセッティング
第4章ではサスペンションセッティングを行った時の、メリット、デメリットの一般論について記します。 なにかが良くなる一方で、なにかを失う表裏一体、一長一短の関係性にあるのがサスペンションです。 メリットを出したらデメリットをライディングでどうカバーするのか!? をワンセットで考えると一歩づづ上のステージへ行けるはずです。
4-1.プリロードセッティング
プリロードは動的な車高、サスペンションのストローク領域を調整する事が可能です。
常に残ストローク量のデータとセットで考えなければなりません。 サーキットでは決まったコースを同じように走るため、ブレーキングの減速G(減速度)がとても大きいです。レースの予選ベストタイムの時のペースと、今時期のさむーーい冬場の練習走行では、タイヤの条件が異なり同じ減速Gを出す事ができません。
すると、減速G が寒い冬場の練習の方が弱く、サスペンションのバネを縮める力も弱くなります。 その結果、フロントの車高タイムを出せた予選の時より高い位置から進入する事になります。そんな時は、車高を合わせるために、プリロードを抜いてあげると、車高を合わせる事ができます。
しかし今度は気温の上昇と共にペースが上がってくると、減速Gも大きくなりストロークし過ぎてしまいますから、同じようにプリロードを掛ける事で合わせます。
セッティング | ||
---|---|---|
掛ける (締込む) | ・Frの動的な車高が高くなりRrタイヤへ荷重を掛けやすい。 ・ブレーキング時のギャップ吸収性に余力が出る ・動的フォーク長が長くなり直進安定性が上がる ・ブレーキングのノーズダイブを抑え、安定する。 | ・Frタイヤへ荷重を掛けにくくなる。→1次旋回性の悪化に繋がる。 ・Frサスストローク量が短くなり実舵角が減る→ハンドリングがダルな方向になる。 ・ピッチングを利用しづらく、Rrに荷重が掛かりっぱなし。 ・切返しでバイクが重く感じる。 |
抜く (緩める) | ・動的フォーク長が短くなり1次旋回性が良くなる。 ・Frフォークの実舵角が増えハンドリングがクイックになる。 ・ピチングが大きくなり荷重移動を積極的に利用できる。 ・ボトム領域を上手く使えると、ジャックナイフ限界が高まり発生ブレーキングGを高められる。 | ・Frに荷重が残りやすく、Rrに荷重を掛け難くなる。 ・ブレーキング時のギャップを吸収できず暴れる。 ・動的車高が下がり、直進安定性が劣る。 ・ブレーキングのノーズダイブが大きくなりお釣りが出る。 |
4-2. テンションセッティング
プリロードが決まったら、次はテンションセッティングを行うと良いでしょう。 テンションセッティングはバネが伸びるスピードの速さをコントロールする事ができます。
サスペンションの減衰特使として、コンプ側よりもテンション側の方が減衰力が強めに設定してあります。目的は 制振作用を高めるためです。 (俗に言うポヨンポヨン状態を抑える)ですから、セオリーとしてはバネが決まれば、影響の大きいテンション側のスピードを決める事になります。 もちろんセオリーであって絶対ではありません。 目的とシチュエーションによって臨機応援にセッティング順序を変える事はよくある事です。 但し、順番を飛ばしてとっちらからないように。
セッティング | ||
---|---|---|
掛ける (締込む) | ・制振作用が高まる。 (ポヨンポヨンしない) ・サスペンションが落ち着く ・ブレーキリリースで荷重を残しやすい | ・ギャップが連続すると 車高が下がる場合がある。 ・Rrタイヤへ荷重が移りにくくなる。 ・ピッチング(特に前上がり&後ろ下がり)を起こし難い。 ・切返しでバイクが重く感じる。 |
抜く (緩める) | ・Rrタイヤへ荷重移動し易くなる。 ・ピッチングを積極的に利用できる。 ・連続するギャップの吸収性が向上する。 ・切返しでバネ反力を使え軽く感じる。 | ・制振作用が弱まりポヨンポヨンする。 ・サスペンションがバネっぽく落ち着かない ・ブレーキリリースと同時にサスが伸び上がり、 荷重を残しづらい。 |
4-3. コンプレッションセッティング
テンションが決まったら次はコンプレッションセッティング(縮み側)を行います。コンプレッションセッティングは、バネが縮むスピードの速さをコントロールする事ができます。
コンプ側は、この2種類によってFrサスが縮むスピードが決まります。
・路面のギャップを乗り越える時に連動してFrサスが縮むスピードが決まる場合
Frブレーキの入力によるサスペンションのストロークスピードよりも、ギャップによる入力の方が遥かに速いスピードで動きます。 主にギャップの入力(速い入力スピード)に対して効果の高いセッティングです。
セッティング | ||
---|---|---|
掛ける (締込む) | ・ノーズダイブを抑えられる。 ・ブレーキングスタビリティが向上する。 ・Frにダイレクトに荷重を掛けやすい | ・ギャップの吸収性が悪くなる。 ・ゴツゴツして乗り心地が悪くなる。 ・Frへのピッチングを起こし難い。 ・ストローク速度による減衰力差が大きくなる。 |
抜く (緩める) | ・Frタイヤへ荷重が乗り易くなる。 ・ピッチングを積極的に利用できる。 ・乗り心地が良くなる。 ・弱いFrブレーキでサスをコントロールし易い。 | ・ノーズダイブし易くオツリを貰う場合有り。 ・ブレーキングスタビリティが落ちる。 ・腰砕け感が出る。 |
JSBマシンに使用されているとんでもないお値段のサスは、ストロークスピード0.1m/S以下の極低速域でも、減衰力が初期からしっかり立ち上がります。その結果、ストロークスピードが上がり過ぎてしまう事を防ぎ、安定した減衰力を確保できる構造になっています。
4-4. エアスプリングセッティング
エアスプリングセッティングは、サスペンションストロークのボトム領域で反力をコントロールする事ができます。
具体的には、ダンパーユニット内のエアボリューム(空気量)を調整します。 →空気の量は現場で計測できないので、代わりにオイルの量で空気量をコントロールします。
SC59を例に、フルストローク付近でどの位の反力になるか大雑把に計算してみます。条件は下記の通りです。
- スライドパイプ内径φ40mm
- フルストローク量110mm
- SC59BPFのSTD油面84mm(STDフォーク、Kitフォーク共に同じ)
- 油面74mmの場合の変化を計算
- フォーク全伸時の体積=(油面84mm+ストローク110mm)X 内径φ40 = 243.8㎤
- フォーク前屈時の体積=(油面84mm+ストローク000mm)X 内径φ40 = 105.6㎤
- 体積比=2.308倍(243.8÷105.6)*前屈時は大気圧の2.308倍の圧力がフォーク内部に掛かる(約2.3気圧)
- フォーク内部は2.38kg/㎠の力を受ける(1気圧=1.033kg/㎠×2.3気圧)
- 内径Φ40=12.56㎠なので、2.38×12.56=29.84kg
- 約、29.84kgの反力をフォーク1本が発生させる。実車は2本で×2倍(59.68kg)
- フォーク全伸時の体積=(油面74mm+ストローク110mm)X 内径φ40 = 231.2㎤
- フォーク前屈時の体積=(油面74mm+ストローク000mm)X 内径φ40 = 092.9㎤
- 体積比=2.488倍(231.2÷092.9)*前屈時は大気圧の2.488倍の圧力がフォーク内部に掛かる(約2.5気圧)
- フォーク内部は2.57kg/㎠の力を受ける(1気圧=1.033kg/㎠×2.488気圧)
- 内径Φ40=12.56㎠なので、2.57×12.56=32.28kg
- 約、32.28kgの反力をフォーク1本が発生させる。実車は2本で×2倍(64.56kg)
SC59のスタンダード使用のフロントフォークがフルストロークすると、エアバネの反力が約1台当り59.7kgとなります。
油面を10mm高くし74mmとすると、反力は+4.88kg増加した64.56kgになります。つまり油面1mm当りで約488g変化する事になります。 実容積と、温度変化を無視したアバウトな計算ですので、あくまで参考値(イメージ)レベルと捉えて下さい。
このように、ストロークの深いところでの反力を調整できるのが、エアスプリングです。 ブレーキング中のギャップに対して反力を上げたい場合には油面を低くする事が効果的です。
5. セッティングしてサーキットで期待できる効果
効果1. 実舵角の増加
実舵角が増えると、旋回性が向上します。 この実舵角とはバイクがコースを走っている場合に、上空のヘリコプターから見た時、Frタイヤが実際に曲がりたい方向へどれだけ角度が付いているか? を示す角度です。 ライダーがハンドルを回転させても、キャスター角分相対的に実舵角が減ってしまうのです。
キャスター角が0°の場合(フォーク角度は地面と垂直)の場合、ライダーが20度ハンドルを切ったら、上空のヘリコプターから見ても20度変化します。
キャスター角が90°の場合(フォークは地面と水平))の場合、ライダーが20度ハンドルを切っても、上空のヘリコプターから見たら進行方向へハンドルは全く切れていません。 (タイヤがスイングして見えるだけ)
つまり、サーキットではXY平面でマシンを曲げる必要があるので、キャスター角が立てば立つほど、ライダーがハンドルを操作した角度と、XY平面上に見たタイヤが切れている角度の差が小さくなります。その為、同じハンドル切れ角ならキャスター角が小さい(立つ)ほど旋回性が向上します。
但し、キャスター角を立てると言う事はトレール量が減少するので安定性が失われます。200㌔以上スピードの出るサーキットでは直進安定性も重要な要素ですから、最大のメリットを出せる最小のデメリットポイントを探る必要があります。
効果2. 旋回性の向上
旋回性は、上記実舵角の他に、ホイールベース、も効果があります。フロントフォークはキャスター角が付いていますから、ストロークする程にホイールベースが短くなり、旋回性が良くなります。 動的な車高を下げてやれば、ホイールベースを短い状態を保って旋回させる事が可能です。
他にもJSBクラスであれば、ステムオフセットを小さくする事でホイールベースを短くする事が可能です。 しかしトレールが増えると大回りしやすくなります。 ハンドリングとセットで考える必要があり、メリットとデメリットを理解した上でトライしないと、セッティング沼へハマる事になってしまいます。
効果3. 路面追従性の向上
サーキットにおいては、大きなギャップや、縁石のショートカットの時にガタガタとマシンが振られてしまいます。 仮にストロークしないサスだったとすると、ギャップを乗り越えた後はタイヤがジャンプして宙に浮き、グリップしません。 路面をしっかりと捉えるバネと減衰特性にする事でギャップをしなやかに姿勢を乱さず通過する事ができるようになります。
効果4. マシン重心を好みを合わせる
主にプリロード、突出しを変更する事で重心の高さを変更できます。 重心は高い方が良い。または低い方が良いと一概に言う事ができません。ピッチングが欲しい場合もあれば、そうでない場合もあります。 重い方が良ければ軽い方が良い場合もあります。 軽くしたい、ピッチングさせたい場合には重心を高く。 その逆は低くする事ができます。 はやり、重心を変化させるには、その他にも影響がありますから、セットで考えなければなりません。
効果5. Rrトラクションの向上
Frサスの動きを良くして、積極的に動かせば立ち上がりでのRrタイヤ荷重を増加させる事へつながります。 また、Fr分担荷重を小さくした分Rrの分担果荷重を増加させる事も可能です。
しかしFrタイヤへの荷重不足になるので、最適バランスポイントを探る必要があります。
効果6. ブレーキコントロール性の向上
あまり知られていませんが、サスペンションストロークはブレーキのコントロール性に大きく関わっています。サスペンションがフルボトムする時、最もFRタイヤに垂直荷重が掛かるので強いブレーキを掛ける事ができます。 ライダーはブレーキレバーを握り込むスピードと、サスが縮むスピードを無意識の内に感じて、合せ込みながら操作しています。
もし自転車のようなリジットフレームだったら、コントロール幅が全くなく直ぐに前転してしまいます。 ストローク量が多いほど、ブレーキコントロールがし易くなります。
6. フロントサスペンションのオーバーホールについて
6-1. メンテナンス頻度
レーサーとしての使い勝手であれば、はやり1年1回、シーズンオフにオーバーホールはMUSTです。 サーキットのブレーキングは発生Gも強力なのでスライドメタルには厳しい環境です。 またオイルも劣化するので、なるべくイコールコンディションを保つ為にも、シーズンオフでのオーバーホールは必須と言えます。
6-2. フォークオイルは必ずメーカー指定を入れる
SS車の場合、どのメーカーも#10(10w)の粘度を使用している事が多いですが、実際の粘度はメーカーによってかなり異なります。狙った減衰力から外れてしまいますし、フィーリングも変化してしまうので、必ずメーカー指定のオイルを使用して下さい。 (意思を持って替えるならOK)
7.練習内容とセッティングの記録
記録を取る事で、次回の練習を更に有意義にし、内容を濃くする事ができます。 そのひ暮らしのセッティングをいくら一生懸命やっても速く走れません。 ワークスチームは膨大なデータから課題や不具合を見つけ出します。 一個人ができる量には限界があるからこそ、時間を有効に使うため過去のデータから法則はないか? トラブルの予兆はないか? 役立てる事ができます。
以前、Andyが使用しているセッティングチャートの無料ダウンロードページを作ってあるので、よければ使ってください。 おおまかな内容は網羅しています↓↓
8. サーキットのサスセッティングまとめ
セッティングする事でどんな性能の向上が期待できるのか? という観点でまとめましたが、結局のところどんなセッティングも、良くなった部分と同じだけ悪くなると言う事です。 ですから、サスセッティングだけで、問題や課題をクリアする事はまず無いでしょう。 だからこそのライディングありきなのです。 先ずはライディングを改善。次にマシンを少し。 またネガがでてきたらライディングで改善。次に少しマシン。
課題を持って練習し、結果を刈り取りまたトライする。 このサイクルの中でほんの少しマシンも改善する。 その結果、腕とマシンのレベルが少しづつ上がるイメージです。 自分自身への復習と意識づけの意味も込めて記事にしました。
サーキットを走るライダーのお役に立てれば幸いです!!
関連記事はコチラ → フロントサスペンションセッティングの基礎
併せて読みたいサーキットで良くあるトラブル↓↓
Let's Fun! Ride! Run!
Andy