セルボタンを押すとジジジ、カチカチと異音がしてエンジンが掛からない! バッテリー上がった? エンジンが掛からない原因は何!? こんなシチュエーションの対処方の一つをお伝えします。
- スタートボタンを押すと「ジジジ・カチカチ」と音がする
- メーター照明は点灯する
- 冬季は乗らずに保管していた
- バッテリー上がりかも?
一概にコレが原因です!! と言い切る事はできませんが、症状を分解していけば原因に少しづつ近づける事は間違いありません。
記事の目次
1. セルを押して”カチカチ”、”ジジジ”と異音が鳴る原因
まずはこの音が発生するには、なにかが起こっていて音が鳴ります。 音を発する部品として主に2つの事が考えられます。
- スターターマグネットスイッチの接点作動音(接点のON-OFF繰返し)
- セルフスターターモーターピニオンシャフトの作動音(飛び出る音)※バイク用エンジンではkawasakiなど一部モデルのみ *対象機種が少ないので今回は割愛します^^;
基本的には「スターターマグネットスイッチ」と呼ばれる部品が、接点のON-OFFを繰り返す事でジジジとか、カチカチのような音を発します。 セルボタンを押している間ずっと「ジジジ」と音が聞こえる場合は、ほぼ”スタマグ”と考えて間違いないでしょう。
※スタータマグネットスイッチの事を略して「スタマグ」と言います。 *他にもスターターリレー、マグネットリレー、など呼び方は多岐に渡ります。
2. スターターリレー(スタマグ)の構造
まずスタマグから音が出ている場合は、”ジジジ”とか”ガガガ”など細かな音が連続しているように聞こえます。 この場合はまずスタマグから音が出ているぞ! と思って間違いないでしょう。
なぜこのような音が出るかを理解するためには、右ハンドルにあるセルボタンとスターターの関係性と、スターターの構造を知れば直ぐにわかるようになります!!
構造1. スターターリレー(スタマグ)はどんな構造??
簡略化したスタータリレーの構造です。 構造を理解する上で特に重要なポイントは、コイル(電磁石)、接点、2系統の電流経路の3つ。
構造2. コイル(電磁石)
スターターボタンを押すとこのコイルに電流が流れます。 電流が流れると電磁石となって、鉄でできた接点を磁力で引き付けます。 電流は青→黒へ流れます。
つまり、ハンドルにあるセルボタンは、言い変えると「電磁石を作る⇔止める」を繰り返す
「電磁石ON-OFFスイッチ」
と言えます。
構造3. 接点(スイッチ)
コイルが電磁石になると、磁力によって電磁石のある方向へ鉄片が動き、「カチッ」と音を立てて接点と接触します。接触すると、回路が完成し、「バッテリー → 接点 → セルモーター」へと大電流が流れます。
電流は赤色→黄色へ向かって流れます。
この接点が繋がる時に、「カチッ!!」と音が鳴ります。
通常であれば接点の「カチッ」の音と同時にセルモーターが回転し、セルの音やエンジン音の方が長く音量が大きいので聞こえる事はありません。
構造4. 電流経路
- 経路1. セルボタン経路の青→黒 *特に音はしない
- 経路2. セルモータ経路の赤→黄 *鉄片がカチッっと接触する音アリ
エンジンを始動させるには、このような2系統の電気回路を使ってセルモーターを回す仕組みになっています。
構造のまとめ
- 右ハンドルスイッチにある ”セルボタン” を押すと、スタータリレーの中で電磁石が作られる。
- 電磁石によって、鉄製の接点が磁力で引きつけられて、スタータモーターを動かす大電流用スイッチが入る(ONする)。
- 接点が電磁石によって動くと、「カチッ」と音が鳴る。
このようなイメージでスタータモーターが回転し、エンジン始動へと繋がります。
3. セルボタン(セルスイッチ)とスタマグの関係性
スタマグの構造を知り、セルボタンは ”大きなスイッチを動かす為の、小さなスイッチ” である事がわかったと思います。
なぜそんな面倒くさい事を・・
スイッチ一つでいいだろ!
地獄で会おうぜベイベー(ズドンッ!)
そう思いますよね。 それにはちゃんと理由があります。
バイクや車のスタータモーターへはとても大きな電流が流れます。 排気量によって変わるのですが、バイクの場合は30〜60A程度の電流が流れます。 (トラックなどは24Vで100Aを超えるモノも・・)
この電流量が多いほど、太いケーブルが必要になります。 水に例えると、大量の水を運ぶには太いホースの方が適しているのと同じ事です。
そしてスイッチも同じように大電流に対応した大きな面積を持ったスイッチが必要になります。
スイッチが電流値に対し小さいと、大きな火花が発生!! → すると火花がキッカケで引火!! →火災になる恐れが(*_*)
仮にもセルボタンを大きなスイッチにする事は技術的には不可能ではありません。が、ハンドル周りはこうなってしまいます↓↓
- スイッチのバネ反力が強くてメッチャ重たい!!
- スイッチがデカいのでスイッチボックス巨大化してカッコ悪い!!
- 太ケーブルが2本ハンドル周辺を通過→屈曲しづらいのでハンドル切れ角が狭小化
このような弊害があるので、スタマグを用いて巨大スイッチをシート下へ。
巨大スイッチを動かす小さなスイッチをハンドルへレイアウトする構造を採っています。
給油の時、ガソリンが溢れると下へ下へと滴下します。そこへ火花を発生するスタマグがあると、セルボタンを押した瞬間にガソリンへ引火、火災へと発展してしまいます。
4. セルが回らずスターターリレーからカチカチ音|原因は?
スターターリレーが作動すると、カチッ!と音がする事がわかりました。
実はこのリレーの作動音が連続すると、「カチカチカチ・・・・」とか、「ジジジジジジジ」、「ジーーーーーーー」なんて音に聞こえるんですよ。
じゃ、なんで連続して作動すんの?? と疑問が湧きますよね。 それはバッテリーが弱るとこんな事を繰り返すから・・・
- セルボタンを押す
- 電磁石が出来上がる
- 接点が引き寄せられて接続
- バッテリ→セルモータへ大電流が流れる
- ↑の間、電磁石へも流れ続ける
- エンジンがかかる
- セルボタンを押す
- 電磁石が出来上がる
- 接点が引き寄せられて接続
- バッテリ→セルモータへ大電流が流れる
- 電流が電磁石へ流れず、電磁石OFF
- 「No2へ戻る」を繰り返す
2つの電気が流れる回路があった場合、電流は抵抗が少なく、流れやすい方へ集中する性質があります。
つまり、バッテリーが弱っているとセルモーターへの回路が出来上がった瞬間、電磁石を作るための電流までもが、セルモーターへの電流に食われてしまい、電磁石を作る電流が無くなってしまうんです。
すると、電磁石にならず、接点はバネの力で離れてセルモーターへの電気回路が遮断。
すると大電流回路は遮断されたので、また電磁石に電気が流れ、磁力によって接点がON。
接点がONすると大電流がセルモーターへ流れて、電磁石には流れない。→接点OFF
このサイクルを超高速で行うと、接点がONしたときの「カチ」と発する音が連続し、カチカチとかジジジジなんて音になるんですよ。 カチカチ音の正体はスターターリレーの接点が連続して接触する音!! 間違いない!! めでたし♪メデタシ♪♪
ぜんぜんメデタくない。 エンジン掛からないんだぞ。 どうすんだ。
地獄で会おうぜべいべ〜。
5. バッテリー電圧の目安
- 12.8v・・Fullパワー
- 12.2v・・ギリセーフ💦
- 11.9v・・ジジジ音発生(掛かる個体もある)
- 10.9v・・セルはウンともスンとも言わない
- 9.9v・・DEAD! 交換以外無し
エンジン運転中は13〜13.5v程度まで上昇します。 ※アメ車のアナログメーターだと14vを示す事も
ざっくりですが12.6v以上あればスターターモーターは真冬でも回ります。
12.2だとアメリカンなどのビッグツイン、単気筒エンジンの冬場は相当ツラい状況です。 真夏なら掛かるかな?
最近のバイクは燃料ポンプが動けば押し掛けができます。 ポンプが動かないほど電圧が低下している場合はジャンプコードで救援してもらうか、交換するしかありません。
おすすめの電気テスター⬇
Sanwaデジタルマルチメーター
5. バッテリーが上がった原因を探る
ジジジ音、カチカチ音が鳴った場合は、バッテリーが弱っている事で電磁石を作る為の電流がセルモータへ全部喰われてしまう事が原因でした。
- 充電済みバッテリーに交換する。
- 他車からブースターケーブルで救援してもらう
- 押し掛け
このような方法でしか解決できません。 問題は解決したあとです。 なぜバッテリーが弱ったのか?その真の原因を把握できないと同じ事が起こってしまいます。 ここでは良く起こり得る代表的な原因をお伝えします。
原因1. 長期保管でバッテリーが弱る
冬眠や、長期出張など、バイクを数ヶ月に渡って乗らない日が続くと、バッテリーが徐々に弱ってしまいます。
しばらくぶりにバイクカバーを開けて、さぁこれからエンジンを掛けよう!! と思ってセルボタンお押したら、ジジジ・・・。
この場合も、押しがけ、バッテリー交換や、救援で復活可能です。
稀に、セキュリティー製品などバッテリーから電源を取っているシステムが装着されていると、もっと早くバッテリーが弱ってしまう事も考えられます。
原因2. ツーリング先でキーをONで放置してしまった
ツーリングあるあるの一つではないでしょうか?? (Andyもやった事ある。。^^;)
キーをONにしたまま楽しいダベリングをして時が立つのを忘れていたら・・キーをOFFにするのも忘れたww
この場合も、押しがけ、バッテリー交換や、救援で復活可能です。
原因3. レギュレーターの故障(パンクなど)
ツイッターを見ていると、トライアンフの車両でレギュレーターがパンクしたツイートを見かける事があります。
国産車でも年式によってはレギュレーターがトラブルを起こす事は十分に考えられます。 レギュレーターが故障すると、最後はエンジンが停止するのですが、停止直前はバッテリーに残った電気だけで頑張って走ります。
そして突然のエンジン停止。メーターやテールなど、消費電力の小さな部品は光っています。 しかしセルを回すとあのカチカチ、ジジジ音が。。。→ つまりエンジンが掛かっているのにバッテリーが弱る=充電されていない。
この音が鳴ると言う事は、走行中にバッテリーへの充電ができないトラブルが発生した事を意味します。なので応急処置的に新品のバッテリーへ交換すれば、エンジンはかかりますが、バッテリー電力が直ぐに底を尽きてしまうのは目に見えています。
原因4. 発電系統の故障(ステータなど)
高年式のバイクではほとんど経験しないトラブルですが、可能性がゼロではありません。 エンジンが掛かっている時は発電装置が働き、自分のバッテリーへ絶えず充電してくれています。
その発電装置が故障してしまうと、バッテリーへの充電ができなくなり上がってしまいます。 走行中に発電系統が故障すると、やはり最後はバッテリーが上がるまで電気を使います。
そして突然のエンジン停止。メーターやテールなど、消費電力の小さな部品は光っています。 しかしセルを回すとあのカチカチ、ジジジ音が。。。→ つまりエンジンが掛かっているのにバッテリーが弱る=充電されていない。
この音が鳴ると言う事は、走行中にバッテリーへの充電ができないトラブルが発生した事を意味します。 ステータのパンク同様、レッカーなどして自走する事は不可能と言えます。
原因5. ピストンの位置が悪い
単気筒エンジンに多い症状ですが、ハンドルのスタートボタンを押すとシート下から「カチッ!」と音が1回だけ鳴るパターンです。
スタートボタンを押す度にカチッと音がする場合は、ピストンが圧縮上死点手前に位置しており、その圧力を乗り越えられずセルが回りません。
バッテリー電圧は正常でも、エンジンが回転できない為セルも回らない状況です。
SRなどビッグシングルのエンジンをキックスタートする時、キックが重くて踏み降ろせないポイントってありますよね?
単気筒エンジンの場合はその圧縮途中でエンジンが停止しやすい構造です。
その位置でピストンが止まって、圧力が抜けきってない時にセルを回そうとしても回らない事があります。
さっきまでピンピンしてたのにいきなりバッテリー上がり?
なんか知らんけどエンジン掛かった後はいつもどおりや・・・
(さっきのはなんやったん??)
なんて事になりますw
この場合は、軽く押しがけと同じ動作を行ってピストン位置を変えてあげれば(圧縮上死点を超えれば)エンジンが掛かります
原因のまとめ
スターターリレーから「カチカチ・ジジジ音」が鳴った場合の原因、及び要因をまとめるとこのようになります。
- レギュレータの故障
- 発電系統の故障
*自走不可能なトラブル
- バッテリーが弱った
- 暗電流が大きい
*エンジン掛かれば自走OK。
走行中にエンジンが停止 → エンジンを掛けようとしたら「カチカチ・ジジジ音」が鳴った場合は自走できません。
保管中にバッテリーを弱らせた事で「カチカチ・ジジジ音」が鳴った場合 → 再始動できれば自走可能です。 但し完全にバッテリーを上げてしまっている場合などは、再充電しても復活しない事が多々あります。
その場合はお抱えのショップさんへ行き、症状とバッテリーの使用年数を伝えてプロの意見を聞く事が賢明です。
*更にバッテリーが弱ると、電磁石を作る力もなくなり、完全に無音になります・・・。
エンジンが掛からないとなんだか不安になるし、聞いたこと無い音を聞くと不安になると思います。それが手塩にかけて育てた愛機ならなおさらですよね。
セルボタンを押した時に「何このおと!! 壊れた!? ヤバいの!?」と不安になった方のお手伝いができれば嬉しいです!!(^_^)
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Andy