ベースオイルって・・・なに?
この記事では
- 高いエンジンオイルの理由が分かる
- 安いエンジンオイルの理由が分かる
- ベースオイルの分類が分かる
- 添加剤の種類と効果が分か
今回は潤滑剤であるエンジンオイルについて詳しく解説します♪ 是非最後まで御覧ください♪
潤滑油剤の種類
潤滑剤はその見た目から3種類に分類されています。
- 液体潤滑剤(Liquid Lubricants)
- 半固体潤滑剤(Greases)
- 固体潤滑剤(Solid Lubricants)
液体潤滑はご存知エンジンオイルです。 他にも船舶用オイルやプレス加工油、切削加工油なんかもあります。
グリスは正確にはグリースと言います。(当Blogではグリスとします) このグリスに関しても別記事で詳細に取り上げますので是非御覧くださいm(_ _)m
ベースオイル(基油)の種類
なぜベースオイルを理解する必要があるのか? その理由がコレ↓
エンジンオイルは、基油と添加剤をブレンドして出来上がるからなんです。
読んで字の如く、エンジンオイルの基本となるオイル。 家の建築に例えるなら基礎部分ですね。
なのでこのベースオイルが何なのか? どんな種類があるのか? を理解する事で良いエンジンオイルを選べるようになる訳です。
今回は基油(ベースオイル)にフォーカスして解説します。
ベースオイルの性状
原油 | パラフィン系 | ナフテン系 |
粘度 ㎟/s 40℃ | 100.3 | 104.5 |
粘度指数 | 96 | 39 |
流動点 ℃ | −15 | −30 |
引火点 ℃ | 262 | 214 |
密度 g/㎠ 15℃ | 0.886 | 0.9027 |
※粘度指数が高いほど、高温時での粘度低下が少ない(つまり高性能)
鉱物油は炭素数が15〜50、分子量が200〜700の範囲にある炭化水素の化合物です。 鉱物油に含まれる炭化水素は3つに分類でき、パラフィン炭化水素、ナフテン炭化水素、芳香族炭化水素に分類されます。
パラフィン系
主に中東アジアから産出される原油から精製されるベースオイルで、粘度指数が高く広く自動車用エンジンオイルのベースオイルとして使用されています。
ナフテン系
主にアメリカ、南米、オーストラリアから産出される原油を精製。 粘度指数が低いことから車両用ベースオイルには向いておらず、冷凍機や金属加工油、インク基油などに多く使われるベースオイルです。
合成潤滑油
さぁきました!みんな大好き合成潤滑油です! 俗に言う「化学合成油」ってやつですね♪
元々は航空機エンジンが発達し極寒or極熱地での使用条件から今までの原油を精製するベースオイルでは性能が不足し、合成潤滑油が開発されるようになりました。
また機械類も大型&高速化し(プレス機など)従来の鉱物油系潤滑油では対応しきれない用途も増加。 自動車のみならず、様々な分野から高性能潤滑油のニーズが高まっていきました。
ベースオイルの分類
大事!
この表の2〜5は特に大事なので覚えてください♪
鉱物油から作ったベースオイルなのに・・・化学合成油の表記がOKとされています!!
粘度指数は「油温上昇したとき、粘度が下がる割合が少ない事を示す値」です。 なので粘度指数が高いほど、高油温でもオイル粘度をキープできる良いオイルです。
粘度指数が小さいほど、高油温になるとサラサラになってしまいます。
グループⅡ
鉱物油を水素を使って精製、製造します。 比較的安価に製造できるため、多く流通しています。
パッケージの表記は「鉱物油」となります。
グループⅡのオイルに、グループⅢのオイルを1%以上混ぜた場合は「部分合成油」と表記されます。
つまり・・・ちょっとでもグループⅢを混ぜれば鉱物油→部分合成油へと表記が変わります。。。
ちょっとでも混ぜれば・・・ちょっとでもね・・・
つまり、99%鉱物油なのに「部分合成油」って表記にしたいがためにちょびっとだけ混ぜる輩が居るってことか!?
そんな事は一言も言ってねー! ・・・
・・・
因みに、国内流通量は最大だそうです!
グループⅢ
とても大事なグループⅢは、しっかり理解してくださいね!
グループⅢのベースオイルは鉱物油です。 もう一度言いますけど鉱物油なんです! 原油がベースです。
だけど、オイルのパッケージには「化学合成油」と表記されます!! 合成してないけど化学合成油です!!
は? ふざけんな!
化学的に合成してねーだろ! オラ!
性能は化学合成油と同じくらい高くてほぼ同じだから「化学合成油」でもイイよ! ってアメリカの裁判所が認めました。
実はアメリカでカストロール社がグループⅢの鉱油ベースのオイルを「化学合成油」として販売した事に、モービル社が「オイ! 鉱油ベースなんだから表記が間違ってる! おかしいじゃないか!」
と言って裁判を起こしました。
その結果・・・
裁判所は
「カストール社の主張を認める。鉱油ベースだけど化学合成油って言ってイイよ!」
とまさかの判決を出してしまいました。。。 そして日本には表示に関する規制が全くありません。 よってメーカーのモラルを信じるしか無いのが実情です。 つまりグループⅢの表記は↓
- 化学合成油
- 全合成油
- Full Synthetic
つまり何でもござれ!笑 ←マジで笑えんw
化学合成油〜半合成までなんでもOKの分類です。 もうメーカーの言う事を信じる以外に無い事がお分かり頂けましたでしょうか? だからこそ高い化学合成油もあれば、「化学合成なのに安いなぁ?」と感じるオイルもあると思います。
そのカラクリはこんな所にあるんです。
中には凄くイイオイルもあるんですよ!
そもそもグループⅡとⅢの「水素化精製処理」は、原油に含まれている硫黄分、窒素、芳香族などの不純物を取り除く事が目的です。
これら不純物が存在すると、添加剤の効果を弱めたり寿命を短くする作用が働いてしまいます。 だからとことん不純物を取り除きたい・・・
その為の方法が水素化脱硫処理と言う訳です。 そしてとことん不純物を取り除けたベースオイルは、とことん性能も高い。もはや化学合成と同じと言っていいレベル! ←化学合成で良くね? って理論w
じゃ実際、グループⅢの「化学合成油」の中で、良いオイルはどうやって見分けんの? って事になるのですが・・・ 残念ながらパッケージを見るだけでは分かりません涙。
安全データシート(SDS)とかを見ればある程度は分かりますが、全成分の記載がある訳ではないので不明な部分も多いです。
そしてこの水素化処理を行える大規模プラントは国内にほぼありません。一番近い国では韓国のSKルブリカンツ社(YUBASE)があります。
Shell GTLもグループⅢ
GTLとは、Gas To Liquidの略で天然ガスの分子構造を組み替えて液化燃料やベースオイルを作る技術です。
GTLは無色無臭で原油成分に含まれる硫黄、窒素、芳香族などの不純物がほぼ含まれません。→結果として添加剤の効きが良くなるメリットがあります。
1993年:マレーシアに商用GTLプラントを開設
2011年:カタールに世界最大のGTLプラントを開設
GTLは基油グループⅢに属し、化学合成油として販売されています。 またShellの呼称としてXHVI(Xtra High Viscasity Index)と言われており、差別化を図っています。
グループⅣ PAO
パオパオですww
正式には「Poly - α- Olefin」と書いてポリアルファオレフィンと読みます。 原油を一切使わない、完全に化学合成された「合成炭化水素」で、元は航空機エンジン用に開発されたベースオイルです。
LAO(リニアαオレフィン)を重合s,二量体、三量体、四量体またはそれ以上にオリゴマー化した混合物を水素化精製します。
硫黄、窒素、芳香族などの不純物を一切含みません。
※不純物が残ると、添加剤の効果を妨げてしまう
原油の精製プロセスは全く関係なく、化学プラントで製造されるこれぞ生粋な合成基油です。 製造工場はアメリカ、EUに集中しています。 日本で売られる製品は遠方から運ぶ物流コストも乗っかるので更に高額に・・
- 粘度指数が高い(140以上)
- 流動点低く、低温性が良い
- せん断安定性に優れ、切れ難い
- 熱、酸化安定性に優れる
- 加水分解されない
- 引火点高く蒸発損失が少ない
- 価格が高い
- 添加剤が混ざりにくい
- ゴム製シールが収縮する(対策済み)
- PAOに潤滑性能無し↓
- 油性剤(摩擦低減剤が必須)
こんな特性があります。
現在はmPAOと言う更に高性能な物も開発されています。mはメトロセン触媒を示していて、粘度指数は脅威の200! ←とてつもなく高い
旧車にPAOのオイルを入れると、ゴムが収縮しオイルが漏れる事が過去ありましたが、現在は添加剤等によって対策されており、旧車に使用しても問題ありません。
とは言え、モービルがPAO製品をリリースした時はクルマ&バイクでオイル漏れが多発した記憶をお持ちの方は抵抗があるかもしれません。
グループⅤ (エステル等)
グループⅠ〜Ⅳに属さない物全てが、グループⅤに属します。 エンジンオイルの場合はだいたいがエステル系になるので、実質はエステル系です。
元々は航空機に搭載されるガスタービンエンジン用に開発され、使用されていたオイルです。 内燃機用としてはモータースポーツから先に普及が始まり、今では用品店でも一般向けに流通しています。
- エステルは金属への化学吸着効果がある→良好な油膜を形成
- 添加剤は低温で作用しにくい→エステルが作用できる
- 低温〜高温まで油膜保持性能が高い
- 化学式を作り変えれる→狙い通りに設計しやすい
- 清浄分散作用がある(汚れの溶解力がある)
- 添加剤との相性が良い
- 潤滑性が良い
- 加水分解され劣化する
- 価格が高い!
- 樹脂、ゴム製シール類が膨潤する可能性アリ
そもそもエステルってなんや?
単語としては知っていても、実際になんなの? って思う人は多いと思います。
エステルは有機酸、高級脂肪酸、アルコールなどを元に作られます。 添加剤を除いて、化学式(設計図)から作る事ができ、狙った性能を出しやすい反面、コストはとても高額になる宿命にあります。
エステル系の3タイプ
1. 有機酸エステル
有機酸とアルコールを原料として製造。 ジエステル(二塩基酸エステル)、ポリオールエステルがあり、低流動点、高粘度指数、高引火点が特徴とされています。
エンジンオイルにはジエステルやポリオールエステルが使われる事が多く、単独or鉱油と混合して用いられます。
エステルは、鉱油と混ぜるとロングライフ化し難くなる特性アリ。
2. りん酸エステル
オキシ塩化りんとアルコール、フェノール類を原料として製造されます。アルキルタイプ、アリールタイプがありいずれも,難燃性(自己消火性)、潤滑性が優れていますがアリールタイプの粘度指数は低くなっています。
3. けい酸エステル(シリケート)
アルキルタイプ、フェニルタイプの2種類。 低流動点、高粘度指数です。
ポリオールエステルの特徴
ポリオールエステルはエンジンオイルに多く使われています。
ポリオールエステルは多価アルコールと、直鎖or分岐脂肪酸を原料とし、要求される特性に応じて合成して作られます。
「多価のアルコール」+「一塩基性の脂肪酸」が反応してできるエステル=「ポリオールエステル」
と呼びます。
つまり、ポリオールエステルとは特定 の物質の名前ではなく、このような反応によって得られる物質の総称を表しています。
一般的な特徴としては↓
- 低流動点である
- 高粘度指数で使用温度範囲が広い
- 潤滑性が良い
- 熱、酸化安定性が優れている
- 清浄分散作用が良い(溶解力が高い)
- 生分解性がある(自然に帰る)
- ゴム、シール類を膨潤させる
- 加水分解しやすい
摩擦低減効果について
エステルは金属表面に吸着してある種の被膜を形成する効果が認められています。
分子間中にある極性基を持っている事が効果を生む理由です。 この被膜によって金属表面の摩擦係数を下げる事ができるのです。
ジエステル:2ヶ所のエステル基を分子間に保有
ポリオールエステル:4ヶ所のエステル基を分子間に保有
このエステル基が吸着の源で、より多いポリオールエステルの方が吸着力が大きくなります。 その結果、摩擦低減効果が高まるのです。
エンジン潤滑と摩擦の基礎でも言った通り、化学吸着してくれるのがエステル。そのエステルの中でも化学吸着力が強く摩擦を低減できるのがポリオールエステルって訳です☆
ベースオイル(基油)のまとめ
ベースオイルは大分類として
- 原油から精製される物
- 原油ではなく化学合成して作る物
に分類されます。 更に分類すると5種類!
「化学合成油」の中には、部分合成や半合成も含まれるので、商品のパッケージを見ただけでは分かりません。
あとは価格と評判を信じるしか無い!
グループ4のPAOはめっちゃ持久力あるけど潤滑性が無いから添加剤の力を借りないと成り立たない。
グループ5に多いエステルは、化学式を変えて自由に作りやすいけど添加剤と混ざりにくいから様々な高い物質を使うから値段が高い! 潤滑性能は高いけど体力にはやや劣る!
ベースオイルまとめ
原油から精製して作り出されるのが
- グループⅠ、Ⅱ、Ⅲ
- 多くはパラフィン系が使われる
- 硫黄、窒素、芳香族など不純物が多い
- グループⅢだけ不純物はかなり少ない
- 鉱物油だけど「化学合成」って言えるのがグループⅢ
- Shellは天然ガスからグループⅢを作る製品アリ
原油ではない物から化学合成して作り出されるのが
- グループⅣ、Ⅴ
- PAOはモービルがシェア50%
- エステルは化学吸着油膜できる(境界潤滑)
- 高性能オイルは化学合成である
- グループⅢと見分けるのが難しい!
やっぱりライダー心理としては、自分のバイクには最高峰の良いオイルを入れたい! と思いますよね。
別にサーキット走らなくったって最高峰オイルにしたいと思う人も多いです。
そんな時、「どのオイルが良いオイル?」とい疑問に対し、ベースオイルのグループⅣ or Ⅴを選別できれば間違いありません。 そんなバイクを愛するオーナーのお役に立てれば嬉しいです♪
この記事に関るつご質問、ご意見があればお気軽にコメントください♪(*^^*)
NEXT記事→エンジンオイルの添加剤の効果と劣化