チェーン給油&メンテってホントに必要?メーカーは教えない秘密の知識

「誰か飛ばないチェーンオイル知りませんか〜?」 「ホイールにチェーングリスが飛んで取りにくい〜!」 「今からチェンシコなう」 なんて嘆きを良く耳にします。 そうなんですよね〜。 チェーンルブってネチネチしてるし、まとわり付くしまるで会社の○○部長みたいや! と悩みを抱えるライダーの方、きっと多いんじゃないでしょうか?

でも、、、ちょっと待って下さい。 そもそもチェーンルブってなんで必要なの? もし要らないなら、ホイールも汚れないし、メンテ代も浮くしその方がいいじゃん? 果たして真相はいかに・・・。  様々な要素を分解して考えたいと思います。

モーターサイクル用ドライブチェーン

1、ドライブチェーンの機能

ドライブチェーンの持つ機能をおさらいしておきます。

  • 動力伝達機能・・・エンジンが取出したエネルギーをRrホイールへ伝達する。
  • ホイールベース調整機能・・・チェーンリンク数でホイールベースが変化する。
ハーレーなどで多く使われているドライブベルトの場合は、上記2つの他に、「緩衝機能」があります。ベルトがタワむ事でショックを吸収してくれるのです。ドライブチェーンのバイクに必ず装備されているホイールハブダンパが、ベルトドライブにはありません。ダンパケースが不要で高いデザイン性を優先できる事がメリットです。
ドライブチェーンは先ずエンジンが回転力として取出した力を、Rrホイールへ伝えます。

この時、ドライブチェーンがエンジンの力をロスしてしまいます。概ね最大10%程度です。仮に、エンジンから100馬力の力を取り出したとすると、ドライブチェーンの中で馬10頭が逃げて言ってしまう計算です。 高性能チェーンであればこのロスが少なくなり、逃げる馬は約5頭で、ストレートスピードを速くできます。

チェーンの他にもっとロスが少なく効率の良い伝達方法があります。YAMAHAのV-Maxに代表されるシャフトドライブと呼ばれる構造です。ロスを発生させる部品は常にオイルの中に浸かっているので、摩擦ロスがかなり少なく、逃げていく馬はなんとたった2頭!

マルケス
エ!? じゃ少しでも速く走りたいレーシングマシンになんで使わないの??
  それは、ホイールベースを変更する事ができない事と、アンチスコート&アンチリフトをセッティングできないからなんです。 チェーンの場合はどちらもセッティングできます。 どちらもレースの現場においてはとても大切なセッティングなので、伝達ロスの少ないシャフトドライブは採用しません。
ペドロサ
なら量産車はレースみたいなシビアなセッティングいらないんだし、なんで使わないの? ロスが減るって事は大切な燃費も良くなるって事でしょ!
おオ! ペドロサ君素晴らしい質問ですね! 実はロスが少ないのは、オイルに浸かっている事と、精密な寸法のギヤのお陰で成り立っています。さらにディファレンシャルギヤはハイポイドギアと言って大きな径のギヤです。ギヤ鳴り音を低減させる為に、湾曲した面で動力伝達する構造上、製造コストが格段に高まる事を避けられません。

その事から一部のハイエンドモデルにしか採用する事ができない構造なのです。 その点、ドライブチェーンは、スポーツ走行に必要な様々なジオメトリーを調整&変更する事ができるのが最大のメリット。 且つ部品単価が安いので、スポーツバイクには正にうってつけって訳です。


2、ドライブチェーンの構造

ドライブチェーンの構造を知る事で、本当に給油が必要な部位とその理由を理解する事ができます。 また、誰もが知るチェーンの「ノビ」が発生するのか、理解する事ができます。 一般的に使用されるバイク用ドライブチェーンの断面図です。スパっと切ると中身はこのような部品構成になっています。赤色の部品が、シールと呼ばれる部品で、素材はゴムでできています。 この部品がメンテサイクルや性能を左右する要の部品ですので、是非覚えて下さ

ピンブッシュ封入グリス
外プレートと固定され、ブッシュへ駆動力の受渡しを行う。可動部品で封入されたグリスによって常に潤滑されている。内プレートと固定され、ピンへ駆動力の受渡しを行う可動部品で封入されたグリスによって常に潤滑されている。ピンとブッシュの磨耗を抑制する潤滑剤。チェーンのライフを決める重要な要素。

シール外&内プレートローラー
素材はゴムでブッシュとピンの隙間に充填したグリスを封じ込め、外に漏らさない為の部品です。内プレートと外プレートの間に位置しています。内プレートはブッシュと、外プレートはピンと固定されています。 プレートの間にはグリス漏れを防ぐシールが有ります。ブッシュからスプロケットへ駆動力を伝達します。スプロケットと噛み合う瞬間、抜ける瞬間の回転力を逃す為の部品です。

およその機能は理解頂けたでしょうか。 加速中の場合、ドライブスプロケット側の力の伝達は、⑥→⑤→④→③→②→①の順番です。 ドリブンスプロケット(リア側)の伝達は①→②→③→④→⑤→⑥の順になります。 減速中はどちらも逆方向に力が伝達されていきます。

その状況の中で、シールチェーンの可動部は2箇所あります。

1箇所目:ピン ー ブッシュ チェーンが直線や円など自由に形を変える為の構造です。そしてこの可動部はエンジンの強力な動力を受けながら、スプロケットにハマった瞬間から可動して円形状に形を変えなければなりません。つまり2つの金属がものすごい摩擦を発生させています。 この強烈な摩擦を低減しているのが、封入されているグリスです。このグリスの潤滑作用のお陰で、パワーロスを最小限に抑える事ができます。

2箇所目:ブッシュ ー ローラ ブッシュ ー ローラ スプロケットの歯の抜き&刺しの衝撃を逃しています。その瞬間だけはローラーが回転する事によって力を逃し、スプロケットの刃先の摩耗を低減してくれています。 噛み込んだ後、動力伝達の時に動きは発生しないので、グリスは不要です。



3、チェーンが伸びるのはなんで? メカニズムを理解すれば怖くない!

さて次は、当たり前に聞いたり言ったりしているワード「チェーンの伸び」です。でも、ちょっと待って!!  今覚えた部品の中で、どの部品が伸びるのか?よーく考えて見て下さい。 一番大きな部品である、内プレートと外プレートでしょうか? それともピン? ローラが伸びるのか? 正解は…!?

どの部品も絶対に「伸びる」事はあり得ません!

マルケス
ちょっと待った!そんな事言ったって間違いなくチェーン伸びてるでしょ! 実際チェーンがタルんでくるし、調整しなきゃいけないんだから間違いなく伸びてるよ!!
確かにその通りです。チェーンはずっと乗っていると間違いなくタルみが大きくなってきてチェーン調整が必要です。 でも、チェーンの伸びは、「金属部品の伸び」なんでしょうか?

きっと、チェーンの姿から、輪ゴムのようにビヨ〜んと伸びる姿を想像していませんか?? もし簡単に輪ゴムのように少しずつ金属部品が伸びるとしたら、それは明らかな強度不足で、走り出して1kmも走らないうちにチェーンが切れてしまいます。 チェーンを構成する金属部品が伸びる事は絶対にないのです。 でもチェーンのタルみは明らかに大きくなります。 その原因は??

ピンブッシュ摩耗し、クリアランスが大きくなる事がチェーンのタルみを発生させる原因です。

2箇所あるチェーンの可動部の中で、特に摩耗しやすく厳しい状況がピンとブッシュであると先に記しました。 だからこそ、グリスを封入し常に潤滑させているのです。しかしエンジンオイルのように、新しいグリスに詰め替える事ができません。 経年劣化で少しづつグリスが外に出ていき、潤滑不良に陥ります。

そうなると、ピンは痩せ細ります。ブッシュは穴が太くなります。 つまり、ピンとブッシュの隙間が広がり、ガタガタになります。 この事が、チェーンのタルみを発生させる現象です。

  • 不正解 = チェーンの金属部品が伸びて、チェーンが伸びる。
  • 正解  = ピンとブッシュが摩耗して隙間が大きくなり、チェーンがタルむ。

 


4、ドライブチェーンのメンテナンス

チェーンルブのスプレーを勢いよく噴射! 白や透明なルブがチェーンに付着します。 チェーンの動きをよくする為にチェーンルブを掛けるのだ! そう思っているライダーが殆ど(いや全員?)と言っても過言ではありません。

バイク用品店スタッフも同じ事を言いますからね。 でもちょっと考えて下さい。 チェーンの可動部って何ヶ所でしたか? しかも最も厳しい条件の部位は、グリスが封入されているんですよね??  グリスが出てこないって事は、いくらチェーンルブを掛けても、ブッシュとピンの中には入り込まないって事ですよね??

マルケス
なんで飛び散って汚れる原因を作るチェーンルブを掛けるの?その目的はなに??
さあ!自分でチェーンメンテナンスをしているライダーの方! メンテ初心者のマルケスさんにわかりやすく教えてあげてください♪♪
ドゥーハン
マルケス!よく聞くんだ。それは錆止めなんだよ。シールチェーンと言うのは必要な部位にはグリスを封入してあり潤滑している。そのグリスの漏れを防ぐゴム製のシールはサビが発生すると簡単に切れてしまう。

そのサビを発生させないよう、防止する事がチェーンルブを吹きかける目的だ。

そうなんです。チェーンルブを使う目的は、「潤滑」ではなく、「サビ止め」だったんですね〜! 吹きかけた直後は、スプロケットと、ローラーの潤滑が多少良くなりますが、5kmも走った接触面には全て居なくなっています。  パワーロスするか否かはピンとの潤滑が全てです。 この潤滑をなるべく長持ちさせる為の作業の事をチェーンメンテナンスと言います。

作業1、チェーンにサビを発生させない

チェーンのシールの周りにサビが発生すると、サビがゴム製のOーリングを切ってしまいます。 Oーリングが切れると、中のグリスが流出してしまい、一気に寿命を縮めてしまいます。 サビを発生させないよう、チェーンルブを使って油でコーティングし酸素を遮断。サビを抑えてライフを維持します。

作業2、グリスが拾う異物でO-リングを傷つけない

チェーンルブは、その使用環境から、すぐに遠心力で飛ばされてしまう宿命を持っています。その強力な遠心力に耐える粘性を持っています。 要はネチネチしてるんです。そのおかげである程度止まってくれるのも事実ですが、副作用として、フロントタイヤが巻き上げたゴミなんかも付着しやすいのです。 その付着したゴミが、ゴム製のOーリングを傷つけてしまうので、メンテの際は一度クリーナを使って古いルブと、ゴミを取り除きます。 まとめ チェーンメンテナンスは、グリスを封入しているシールの保護が目的です。 潤滑させる事が目的ではありません。


5、オススメのドライブチェーン

どんなチェーンを選ぶといいのか、少し解説させて頂きます。 何度も言うように、チェーンの肝は、ブッシュとピンの潤滑である事は間違いありません。 しかし封入しているシールも耐久性を持たせるには、内プレートと外プレートの動きを妨げてしまいます。(摩擦ロス)

ロスを減らすには、シール圧を弱くすれば良いのですが、今度はグリスが流出しやすくなってしまいます。 つまりチェーンの耐久性能と摩擦損失はトレードオフの関係にあるのです。

そこで各社こぞってこのシール部品の特許合戦を繰り広げ、低摩擦なのに長い耐久性がある! と唄っています。 よく聞くXーリング!とか言うアレです。 この赤い部品がシールで、Xの形をしている為、Xーリングと呼ばれます よって、高性能チェーンは、「程フリクションで長い耐久性!」のようなワードを使っています。

メンテナンスフリーのシールチェーンがある!?

結論から言うと、有るんです!

ウソやろ? と思われるかもしれませんが、これから解説します。 そのチェーンはRK or DIDのゴールドチェーンです。 この2社のゴールドチェーンは、ゴールドメッキが2回施されています。つまりメッキの厚さがとてもぶ厚く、頑丈にできているんです。 メッキがしっかりと乗っていれば錆びる事はありません。 つまり、シールを攻撃するサビが発生しないので、ルブを使用する必要がありません。

更に、ルブが不要なので、ゴミや異物を拾ってくる事もありません。 つまり何もする必要がないんです。 ちなみに、シルバーチェーンも同じくメッキが施されていますが、こちらは1回のみです。 チェーンは様々な異物にHITしながら走行しているので、飛び石なんかがHITするとメッキが剥がれ、そこからサビが発生します。

ゴールドチェーンの場合は、そもそものメッキが2掛けられていて厚いので、その耐久性も長いのです。 (最新モデルは1回で分厚いメッキを乗せる技術も開発されて来ました) ANDYの愛機ZRXと、CBR1000RRもゴールドチェーンを入れています。 ZRXは装着から約7年経過しましたが、一度もメンテをしていません。 洗車もバリバリしていますが、一切サビておりません。 チェーンの遊びも増える事なくコンディションを維持しています。

ちなみに、Moto-GPマシンも、チェーンメンテナンスとして、ルブを吹く事はありません。シールチェーンでも耐久性よりも摩擦損失を減らす事を優先して、シールの摩擦を極限まで抑えています。 なので、一度グリスが流出しだすと、途端にチェーンの遊びが大きくなります。(ブッシュとピンの隙間が広がる)

セッション毎にチェーンの遊びを数字で管理しているので、遊びが増えると、チェーンを即交換します。 (約2000〜3000kmくらいで交換) なので、サビが発生しない(メッキ剥がれがなければ)ゴールドチェーンはこんなライダーへ超!オススメです。

8耐マシンでも決勝中にルブを吹く事はできません。 事前に様々な耐久テストを行いますがチェーンルブを吹かない事で性能が低下する(摩擦損失が増える)事はありません。 言い換えればそれだけ日本製のドライブチェーンの性能が高いと言えます。

 

  • ワインディングやワーキットなど高負荷条件が多いライダー
  • リアホイールをチェーンルブで汚したくないライダー
  • メンテナンスがめんど臭い! メンテフリーを希望するライダー
  • ランニングコストをなるべく安くしたいライダー
  • 北海道ツーリングなど雨中走行バリバリのライダー
ゴールドチェーンは、スタンダード品に比べて、お値段がプラス3〜5千円高いです。しかしスタンダード品は、合わせてチェーンクリーナ&ルブを購入する必要があります。御値段約2〜4千円。 長い目で見たときには、結局ゴールドの方が安く上がります。

コスト&パフォーマンスの良いオススメチェーン のリンク↓

ノーマルチェーンは表面処理が施されていますが、サビに対する耐久性はあまり強く有りません。メンテ(錆止め)を怠るとサビが発生しシールへダメージを与えます。 ノーマルの場合はしっかりと点検し、必要に応じてメンテナンスする事が不可欠です。

ゴールドチェーンでも、メッキは剥がれたらサビが発生します。そうなった場合はもちろんメンテナンスが必要です。 特にチェーンスライダーと擦れる部分からメッキが剥がれていきます。 面積が小さければシールに影響はありませんが、要確認ポイントです!

6、チェーン調整で便利な数字

ここで、520、525、530サイズ限定ですが、覚えておくと役立つ数字をお伝えします。 ドリブンスプロケット(リヤスプロケ)の歯数を1丁変更すると、Rrアクスルの位置は4mm変化します。

  • 43→44へ変更した場合:Rrアクスルは4mm前進します。
  • 43→42へ変更した場合:Rrアクスルは4mm後退します。
  • ドライブチェーンを2リンクカットするとRrアクスルは16mm前進します。
  • ドライブチェーンを2リンク延長するとRrアクスルは16mm後退します。

 

仮にスプロケットを45→42へ変更し、チェーンを4リンクカットすると?

  • 式①(45ー42)X4=12 スプロケの丁数変更でRrアクスルは12mm後退
  • 式② -2X16=-32  チェーンの延長でRrアクスルは32mm前進
  • +12-32=-20
    答え:Rrアクスル位置は20mm前進する。

と求める事ができます。ファイナルレシオを変更する際などに利用してください。 この記事を読んで、ゴールドチェーンに交換しらライダーが、「これでチェンしこ呪縛から解放!」なんてつぶやきを見られたら本望です^ ^   そうそう、関西圏にお住まいのライダーは、アマゾンでチェーンを安く仕入れて、茨木にあるこのお店、モーターサイクルショップライドオンに持ち込めば、交換してくれます!*公式に部品持ち込みOKを唄っているバイク屋さんです。

腕は確かで信頼できるオーナーメカニックです!是非冷やかしに行ってください☆ ANDYブログ見て来たよ! と言えば何かいい事あるかも!?

画像引用元:[DIDホームページ]

 

追記 2017/10/21

ピン&ブッシュは理解できたけど、ローラーは給油すべきでは?

結論:ローラーへの給油は不要です。

多くの方から「ピン&ブッシュへの給油が不要」と言う事は理解できるが、ローラーも可動部であり回転する部品だから給油した方が良いハズだ。 だからチェーンメンテ不要ではないだろ!

と言うご意見を頂戴しました。そう感じる事は理解できますから順に説明したいと思います。

世の中にはゴールドチェーンではないのに「無給油」を唄っているチェーンがたくさんあるよ!

画像引用元:椿本チェーン

ライダーが持つチェーンのイメージは、バイクと自転車に使われているチェーンを想像すると思いいます。 しかしチェーンの最大市場は産業用チェーンなのです。

例えばパンを製造する工場にある巨大なオーブンの中を、パンを載せた網がゆっくりと進んでいく。 このコンベアは灼熱の中を進みますから、ベルトでは溶けてしまいます。

金属であるドライブチェーンで駆動しますが、食品を扱うチェーンにグリスは禁物です。 そこで材料に油分が多く含まれている素材を選定し無給油を可能としています。 産業機械においても、オイレスブッシュと言う物が広く使用されていて、給油できないけど、滑りを良くしたい場所に用いられています。

材料で給油フリーにする事ができる。*但し使用可能な場所は低負荷である事など限定される。

 


ローラーが果たす役割はなに?

赤い部品がローラーです。

ローラーはブッシュの外径を滑る構造になっています。 平たく言うと回転できる構造です。ではこのローラーって、いつどんな時に動くのでしょうか??

  1. スプロケットの歯が入り込み、緩衝曲線ににならう時。
  2. 加速⇔減速で力の方向が逆になる瞬間。

この条件の時に動きます。


1のスプトケットの歯が入り込み緩衝曲線にならう時

ドライブチェーンはスプロケットの歯によって位置決めされています。スプロケットの山ー山の間にある谷にローラーが座ります。 なぜ谷にローラーが座るのか? ドライブチェーンが回転しているとき、チェーンには自分の重さで遠心力が掛かるので「円」の形になろうとします。

しかしドライブ&ドリブンスプロケットで位置が決まっていますから楕円になります。 円形に少しでも近くには、二軸間の最も距離が短いところに自然と収まろうとします。その最も距離が短い部位が「谷」部になるのです。  この「谷」部に落ち着くまでほんの少し山を下る事になります。 まさにこの瞬間、ローラーが少し動きます

 


2の加速⇔減速で力の方向が逆になる瞬間。

谷にローラーが落ち着きたくなる事をご理解頂いたと思います。 バイクが加速する時に注目します。 加速時はローラーが谷から、「山登り」を始めたくなります。  バイク左側からスプロケットを見た写真とします。  ドライブチェーンによって、反時計方向にスプロケットが回転させられます。 この時、ローラーは「谷」から赤色のラインに沿って山を登ろうとします。この時、ローラが移動距離分だけ回転します。

同じように、エンジンブレーキや、Rrブレーキを使用した時には、「谷」から青色のラインに沿って山を登ろうとします。同じように、ローラーが移動距離分だけ回転します。  減速の時に発生するGは加速ほど高くありません。(タイヤの減速グリップが弱く、チェーンに力を与えられない)

なので、リアブレーキを限界Gまで発生させた直後に、ウィリーさせるようなエクストリーム的なノリ方をした時には、「原則の山」 → 「加速の山」へローラーが一気に下り登ります。この時が最もローラーの回転角が大きい事になります。ではこの時のローラーの移動距離は?? 最大で約2.0mmです。 ローラーの回転角は0.5°もいきません。 (チェーンの遊びが大きいと距離は増える)

ローラーと呼ばれる名前から、つい「ぐるん!グルン!」と回転してそうなイメージを持ちますが、実際には、スプロケットの緩衝曲線上をほんの少〜し登ったり下ったりしているだけなんです。   しかも力を伝達する時間は、スプロケットに接触している時だけです。 ピンやブッシュは常に力を伝達している部品ですが、ローラーはスプロケットを接触していない時はただの重りです。

ローラーの潤滑が不要な理由のまとめはこうです。

  • ローラーの素材が無給油を前提に選定されている
  • そもそもの回転角が非常に小さい。
  • 力のかかる時間が短い(ピン&ブッシュに比べ)

なぜローラーが無給油を前提に選定されているのか? シールされていない潤滑油はすぐに飛んで無くなってしまうからです。 ローラーも少なからず可動するんだからルブは吹いた方がエエやろ! と言うご意見も頂きました。 おっしゃる通りなんです。あった方が良い事は間違いありません。

しかし、そのグリスはいつまで必要とする部品に留まってくれるのか? が次の問題です。ローラーとブッシュの間に居るグリスは、強力な圧力と遠心力ですぐに飛ばされてしまいます。 時速100kmで高速を数十キロも走ればグリスは居なくなってしまいます。  その事はチェーンメーカーも良く理解しているからこそ、ローラーは無給油状態でも成り立つ仕様となっています。  仮にスプロケットにチェーンルブを塗って、何キロ走行するとDRY状態になるか? その距離で同じようにローラーとブッシュ間に居るはずのグリスも同じように飛んでしまいます。

このような構造&仕様である事を理解した上で、メンテが必要or不要の判断にどちらが正解もありません。 様々な考え方がありますから拘りを持ってメンテをする人を間違っていると言って居る訳でもありません。

自分の場合は、ホイールを汚したくない事が理由でメンテフリーにできるチェーンを選んでいます。 性能重視でこまめに給油する事ももちろんアリと考えています。

この記事を読んで頂いたライダーのお役に立てれば幸いです!^^!

 

 

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18 件のコメント

  • これまでのチェーンメンテ話のナナメ上を行く結論に驚愕しています(誉め言葉です)。
    次回は是非「リアサスペンション周りのグリスアップの必要性について」でお願いします。
    メーカーが指定しない箇所も「グリスアップ」が必要なのでしょうか。可動部にはベアリングがありますよね。
    リアサスリンクって固着するの??
    宜しくお願いします。

    • にわけんさん
      コメントありがとうございます^^  承知致しました! 「リアサスペンション周りのグリスアップの必要性について」で決定させて頂きます。 その前に…
      USツーリングブログを完結させないと記憶が薄れてしまうので、こちらが終わった次に着手します。  ミソは紫外線ですね!^^ご期待に応えられるようガンバリマス!!   Andy   

    • マチョ鍋さん コメントありがとうございます。
      Oーリングは乾燥しても機能的には全く問題ありませんのでご安心ください。 

      ゴム部品であるOーリングの大敵は紫外線です。
      直射日光が大の苦手で化学変化を起こしゴムが硬化しヒビ割れ→切れ へと繋がります。 

      次に、同じ原料である石油から製造されたパーツクリーナもNGです。 元が同じ
      なので、よく馴染みゴムを膨潤させて機能不全に陥ります。 クリーナを使用する
      時は、ブレーキクリーナか、チェーンクリーナと名のつく製品を使用すればOKです。

  • チェーンオイルが錆びどめで潤滑のためではないとのお話しすごく参考になりました。確かにチェーンの構造考えるとそうですよね。
    一つ疑問があります。チェーンオイルにはチェーンとスプロケの摩擦の低減効果もあると思っていたのですがちがうのでしょうか?ルブをつけないと偏磨耗してすぐにスプロケがダメになると聞いたことがあります。

    • Rockさん
      コメントありがとうございます。
      「チェーンとスプロケットの摩耗」を分解しますと、「ローラーとスプロケットの摩耗」になります。 この二つの部品は接触していますが、「すべり」は発生していません。すべりが無いと言う事は摩擦がありません。 潤滑効果と言うのは滑りが発生しない事には効果を発揮しないのでルブを付けても効果が無い事になります。

      ではこのローラーの機能はと言うと、ローラーがスプロケットの歯に噛み込む瞬間(入り込むと言った方がより正確)と、ローラーがスプロケットの歯から外れる瞬間に、それぞれローラーとスプロケットの歯先が接触する場合があります。 加速→減速へ変化 減速→加速へ変化 など一定方向の負荷が、逆になった場合にチェーンが逆に引っ張られるとこの現象が発生します。 

      歯先が接触し、ローラーが回転しなければ、スプロケット先端~ローラー外周が摩耗します。  それを防止する目的でローラーが回転する事で摩耗を防止しています。 その為、ブッシュ外周と、ローラ内周が摩擦により摩耗しますが、スプロケット先端より接触線が長く、お互いに硬い材質ですので摩耗レベルはかなり低く抑える事ができます。 (*そもそも摩擦量も微量である事が大きい)

      潤滑=滑りの発生する部品に行う事で効果を発揮しますから、ほとんど滑りが発生しないローラーへ給油しても効果はかなり限定的であると言えます。
      滑る部品をピン外周とブッシュ内周へ集約し、グリスを封入する事で、他をメンテフリーにする現在のチェーンは、素晴らしい設計思想であると言えそうですね!♪

      何か疑問点があればどしどしお気軽にご質問下さい!m(__)m

  • はじめまして
    新品時、表面に付着しているグリスを取りたくてチェーンクリーナーに漬けてしまったのですが、中のグリスまで溶け出てしまうという事はありますか?
    心配になってしまいコメントいたしました

    • いのっちさん コメントありがとうございます。

      チェーンクリーナーを吹きかけるのではなく、バケツのような中にドボンと漬けてしまったと言う事でしょうか??
      長い時間経っていなければ大丈夫と思いますが、何とも言えません。

      もし封入グリスが無くなるor溶け出していたら、チェーンの伸びが早まるのでその時になってみないと何とも言えませんね。。。

      • ご返信ありがとうございます
        因みにチェーンはDID ZVM-Xゴールドです
        長時間は漬けてはいないのですが、取り付け前に皿の上でひたすらクリーナーを吹いてグリスを除去した感じで、結果漬けてしまったという感じです
        チェーンの伸びは注意して見ていきます
        勉強になる記事をありがとうございます

    • MK.16さんコメントありがとうございます!

      それはズバリ酸化防止です。 チェーンのキモはシールです。 そのシールを酸素、温度変化による結論、空気中の水分と遮断するためです。

      賞品が陳列されるまでには、問屋や倉庫、販売店の陳列棚、海外輸出品は船やコンテナの中など、鎮座している時間の方が長くなってしまう事を想定しなければなりません。いざ開封してさあ使おう!という時が来るまで、チェーンの性能を保つ為にシールを劣化させない防錆剤を塗布します。

      新品ののチェーンに塗布されている防錆剤は「グリス」として機能しません。 遠心力ですぐに吹っ飛んで無くなってしまいます。(ホイールとシートカウルがべちょべちょになってしまいます) 色が白いのでチェーングリスが塗っているように見えますが、塗布されているのは「防錆剤」です。

      「グリス」はブッシュの中にたっぷりと入っています。  ご参考になれば幸いです^^

      • 回答して頂きありがとうございます
        新品のノンシールやメッキが掛かっていないシールチェーンに錆止めは理解できますが、何故錆びないゴールドチェーンにも錆止めが施してあるのでしょうか?
        素人考えではクレーム対策くらいしか思い付きませんでした。

        • チェーン本体はスタンダードチェーンもメッキ(薄い&弱いけど)がかかって要るので、まず錆びません。

          それよりもゴム製品であるシールの保護はスタンダード、ゴールドに関係なく行う必要があります。

          ゴムに矢有害な紫外線をカット出来るように、無色でなく有色の防錆剤が塗布されています。

          あとは、メーカーとしてチェーンルブのイメージを出すという戦略もあるかな? と思います^ ^

  • こんばんは、疑問に思った事なのですが
    チェーンとスプロケには必ず遊びがありどんなにチェーンラインが合っていても細かく左右に動きながら駆動しているのでその意味でも潤滑が必要ではないですか?
    チェーンがどこにも接触していなく単体で回転している状況ならピンとブッシュだけ考えればいいと思うのですが、スプロケとチェーンという金属同士が接触と離脱を繰り返しながら駆動しており、必ず遊びがあるのでギアと同じく潤滑は必要だと思うのですが

    >ZRXは装着から約7年経過しましたが、一度もメンテをしていません。
    走行距離はどの位ですか?

    • エウスカディさん
      コメントありがとうございます。 チェーンラインはスイングアームのたわみと、ハブダンパの捻じれの合力でだいたいどちらかに寄っています。 加速と減速でチカラの掛かる方向が逆になるので、寄る方向がそれぞれ逆になり、スプロケットのサイドもそれにともなって摩耗が進行します。  通常は加速側に寄る方向の方が良く削れます。

      ドライブチェーンにとっての理想は「オイルどぶ漬け」の状態です。 ですが、潤滑した方が良いですが、「しなけらばならない」訳ではありません。

      バイクのプロですら大勢勘違いされていますが、潤滑は、グリスやオイルが常にそこに有る状態を作らねばなりません。 シールしていない、もしくは送り込んでいない部位の潤滑材はいとも簡単にDRY状態になります。 チェーンルブを吹くとスプロケ&チェーンが潤った気分になるだけです。ですから防錆効果はバッチリなのですが、潤滑は不可能なのです。(ここが実際のイメージが邪魔をしてプロほど更に理解できないポイントですw)

       おっしゃるスプロケとチェーンは金属同士が直で接触します。しかもあの小さな面積にウィリー限界で走行した時には3t近くのチカラを受ける事になります。 そのとき「付着している」程度の潤滑材はすぐに接触面から押し出され、DRYになってしまいます。ですからルブを吹いた後に潤滑できる距離は速度レンジにもよりますが、高速道路なら10km程度でしょう。  ギヤ歯面には、必ずスベリが存在します。チェーン駆動はスベる時があります。(必ずではない) そのスベりに相当する受けがローラーです。 潤滑する事ができないので、DRY状態でも成り立つ部品構成になっている訳です。 (ギヤはオイルが無いと機能させられません)

      私のZRXは購入して現在8年が経過し、チェーンを変えてから約25000キロを走行しています。  

      • 返信ありがとうございました。
        私もルブの飛び散りと清掃が嫌でスコットオイラーという自動給油装置で常時給油していたのですが25000キロで実証されているのなら無給油でもありですね。チェーンスライダーの減りも大丈夫でしょうか?
        ちなみに現在は純正鉄スプロケなのですが、アルミスプロケでも無給油は成り立つとお考えでしょうか?あとスプロケもサビ対策なら塗装が必要ですよね?

        • 無給油、是非お試しください!(^^)! *サビに強いメッキチェーンの使用が前提です! スライダーの消耗スピードもほとんど変化ありません。

          アルミスプロケでも無給油でOKです。 但し、鉄に比べてスプロケットの摩耗が早いので、径が早く小さくなります。 するとチェーンのたるみが大きくなりやすいのでチェーン調整頻度が増える事は間違いありません。

          また、サビについては、スプロケットがガシガシに錆びてもチェーンには悪影響はありません。 バイクの見てくれは悪くなりますが・・。 市販されているアルミスプロケのほとんどは、アルマイト処理が施されているので、さほど気にする必要もないかとおもいます! 

  • はじめまして 今現在エイプ50に乗ってるのですが、今度チェーンとドライブスプロケットとドリブンスプロケットの交換を予定してメンテについておさらい程度にメンテのサイトを見てたらこちらのサイトを拝見しました
    今はシールチェーンをつけているのですが、交換の際にはゴールドメッキのシールチェーンを試してみようと思います
    余談ですが、通販サイト等で「シールチェーン」で検索すると「“ノン”シールチェーン」まで一緒に検索されてしまうのが少々面倒ですσ(^_^;)

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    ABOUTこの記事をかいた人

    バイク歴18年、名古屋在住34歳で愛機はZRX1200Rと、CBR1000RRです。
    ツーリングも大好きですがサーキットも大好きで鈴鹿8時間耐久ロードレースにライダーとして参戦しています。2017年は29位で完走する事ができました!^ ^
      

    本田技術研究所で二輪の開発業務に10年間従事し、そのうち5年間をレーサー開発のテストライドグループで操縦安定性や空力性能のテスト、評価を担当。 この時の経験を生かしバイク工学のブログ発信を2017年5月からスタートしました。 高品質な二輪情報を発信しライダーのバイクライフを充実させる事を目的としてサイトを運営しています。 どうぞ宜しくお願い致します☆