バイクでサーキット走行!タイヤ空気圧はどのくらい?

 

バイクでサーキットを走るとき、タイヤの空気圧は一体何キロに設定したらいいんだ? と言う疑問は、誰でも迷うポイントだと思います。 一般公道においても楽しく走る為には重要なセッティング要素であるタイヤの空気圧をお伝えします。

サーキット走行におけるバイクのタイヤ空気圧

まず走行シチュエーションをサーキットに限定して話を進めます。 一般公道については後述していますので読み進めてください。 サーキット走行と一口に言っても、レースに向けた練習走行や、ガチンコレース、ライセンス無しで楽しめる先導走行、イベント後のパレードなど様々なシチュエーションがあります。 今回は街乗りタイヤである程度タイムを意識した場合です。

走行シチュエーションによるタイヤ空気圧の得手・不得手


1、グリップを高める為の空気圧は低め?高め?

このフレーズを聞くと、ほとんどの方は「下げた方がいいんやろ! 知ってるで!( ̄^ ̄)ゞ」と思うのではないでしょうか。 そして下げた方が良い理由は「タイヤが潰れて接地面積が増えるねん!」と、ここまで答えられるライダーが多いと思います。 確かにその通りなのですが、こう質問されたらどう答えますか?

  • どこまで空気圧下げたらいいの??
  • 下げたら下げただけ接地面積って増えて、グリップも上がるの?

これに答えられた貴方はきっとタイヤメーカーに勤務しているハズですw 後ほど考える必要があるので、頭の隅に入れておいてください。

《正解》※一般公道向けタイヤ。 プロダクションタイヤは除く
・どこまで下げてもいいか?→バイクメーカー指定空気圧より、フロントタイヤは-0.2k、リアタイヤはー0.4kまでです。 ※-0.3kを基本に、夏は−0.3k、冬は−0.2kの範囲でのアジャストがオススメです。

・空気圧を下げ接地面積の増加に比例してグリップは上がるか?→上がりません。 接地面積が増えても、タイヤ接地面の中心には路面を押し付ける力が働かず、グリップしません。ある一定を越えるとグリップは低下します。


2、旋回性を高める為の空気圧は低め?高め?

1の質問には、ほとんどのライダーが答えられたと思いますが、この質問は如何ですか? 実はこの旋回性能を発揮する為には、タイヤ空気圧はとてもとても重要な役割を果たしています。旋回性を平たく言うと、「バイクが簡単に曲がってくれるかどうか」です。ツーリング中「カーブを楽に曲がってくれる」と感じた場合、旋回性が良いとか、旋回性が高いなどと表現します。サーキットでタイムを縮めるには、いかに速くコーナーを抜けるかと言う要素もとても重要です。

  • 空気圧を高めると旋回性が高く(良く)なるのはナゼ??

答えを言ってしまいましたが、その理由を是非考えてみてください。

《正解》
空気圧を高めると旋回性が高くなる理由 → キャンバースラストが大きくなり旋回性が高まるからです。(タイヤが潰れにくくなる為、タイヤの丸っこい形をキープできるから)

バイクのタイヤはクルマと違って、接地面がラウンド形状になっています。(クルマはフラットです)この形があるからこそ、タイヤを傾けて転がすと、傾いた方向にタイヤが曲がって行きます。 小銭やコインを斜めにしてコロがすと、軌跡が円になりますよね。 この事を「キャンバースラスト」と言います。この力をより高めるためには、遠心力によってタイヤが潰れる量を少なくする事が、タイヤのラウンド形状をキープできる事になります。 その為には空気圧は高い程よく、旋回性が高まるといえます。 仮に低い空気圧の場合、タイヤが潰れすぎてしまい、接地面はクルマのようにフラットになります。 そうなると旋回性が落ちてしまい、コーナーを早く曲がる事が出来ず、タイムをロスしてしまう事になってしまうのです。

このソロバン玉を転がすと、右旋回します。

ソロバン玉を転がすと右に旋回していきます。 この旋回力の事を「キャンバースラスト」と言います。なので摩擦は一切関係ありません。仮に氷の上で転がしても同じ結果になります。*転がすスピードによって発生する遠心力は無しと仮定。



3、コーナー立ち上がりでタイムを縮める為の空気圧は高め?低め?

バシっと膝を擦ってコーナリングもキまり、さあアクセルを開け立ち上がりでグングン加速!!いかに早く、いかに大きくアクセルを開けられるか? がタイムを縮める大きな鍵です。さてこのシチュエーション、いったい

  • 立ち上がりに有効な空気圧は低め? 高め? それとも・・・?

《正解》・・・高すぎても、低すぎてもダメ!! グリップと旋回性のバランスの取れた適正値!

仮に高い場合・・・先ほど記したように、高い程旋回性が良くなります。立ち上がりはまだコーナーの一部ですから、曲げないといけない区間です。 高い方が旋回性は有利です。但し、グリップを犠牲にしてしまい、アクセルは開けづらくなります。

仮に低い場合・・・グリップが良くなりますから、立ち上がりで更にアクセルを大きく開ける事ができます。但し、旋回性を犠牲にするので、手前のライン取りがキツい事と、アクセル全開にできるポイントが遅れ、コーナー脱出速度が低下 → トップスピード低下 → ストレートでタイムロスとなります。

ここ実はかなりRrタイヤの空気圧をセッティングする上で、分かりやすいポイントになるのです。高ければ、アクセルが開けづらい、すぐに滑ると言った症状が起こります。 低ければ曲がりにくいと感じ、全開にできるポイントが奥へズレたりします。 この症状を冷静に感じ分析できれば、自ずとRrタイヤのバランスポイントを探る事ができます。 毎周同じコースを同じように走るサーキットでは、バイクの挙動や変化を感じ取る技量に差はありません。 差があるのは感じた事を元に予測を立てる事と、どう対策するか? の部分です。 もし感じられないとすると、それは走行中に余裕が無い状態です。 余裕が出るまでペースを落として走行すれば必ず感じ取る事ができるので、ぜひTRYしてほしいと思います。

 


4、コーナー進入時、レコードラインをトレースし易い空気圧は高め?低め?

レコードラインをトレースし易いと言う事を言い換えると、ライン自由度が高く思った場所へバイクをコントロールできると言う事です。 サーキットでタイム短縮を狙うには、タイヤを最も効率良く使用できるレコードラインを無視できません。その1本のラインに針の穴へ糸を通すような正確性を追求しなければならないのです。

  • 進入時にバイクをコントロールし易い空気圧は高め?低め?

想像するとどうでしょうか? なんとなく感覚でお分かりの事と思います。 旋回性を高める理由と同じで、走行ラインを自由自在に操るには、行きたい方向へコロがってくれなければ行く事はできません。 つまりタイヤの形をキープできる高めが有利という事になります。 もし低すぎる場合は、直進安定性が勝り、安定したブレーキングはできますが、進入でバイクが重く狙ったラインで寝かし込む事が出来なくなってしまいます。

 


5、答え合わせ

走行シーン別に、空気圧のメリット・デメリットを分ける事で、ただ「単純に空気圧を下げれば良い」と考えるのは、間違っている事はお分かり頂けたでしょうか。 空気圧を下げるメリットとそれに伴うデメリットを、常にセットで考えなければなりません。 春先で気温は過ごし易い25℃でも、太陽の日差しの有無によって路面温度も変化します。 もちろんタイヤの空気圧へも影響を及ぼします。  サーキットでタイムを縮めたい!タイムアップしたい! とお考えの場合は、高いグリップと、高い旋回性のどちらも必要です。 どちらも最大限発揮できる空気圧は、一般公道向けタイヤの場合は下記の範囲です。

  • フロントタイヤ = バイクメーカー指定空気圧 〜 ー0.2k  (オススメは-0.1k)
  • リアタイヤ   = バイクメーカー指定空気圧 〜 ー0.4k  (オススメは-0.3k)

この範囲内にあると思って下さい。 これより下げなければならないとすると、マシンもしくはアプローチの方法に間違いがある事を疑うべきです。

 

使用するタイヤがプロダクションタイヤ(レース用)の場合の空気圧

このタイヤを使用してサーキットを走行する場合は、バイクメーカーの指定空気圧は一切無視!&関係ありません。タイヤメーカーがラップタイムを削る事だけを目的にして作られているので一般公道における必要な性能は限りなく落としています。 (ウォームアップ性や、ウェット性能など) なので、タイヤメーカーが責任を持って推奨空気圧を指定します。(バイクメーカーではありません!) 例えばピレリのディアブロスーパーコルサSCは このような指定があります。

空気圧詳細リンク → ブリヂストンHP ダンロップHP ピレリHP

 

タイヤの構造がそもそも一般公道向けと異なるので、空気圧も異なります。では一体何が違うのか? 順を追って説明します。

タイヤの目的

1、一般公道向けタイヤの場合

スーパースポーツに純正として装着されているタイヤを例に考えます。 マシンコンセプトから考え、ワインディングをスイスイ走って思い通りに操れなければなりません。 冬の早朝に出かけてもグリップを確保。 真夏の暑〜いときに高速道路で永遠と走るライダーの元へ届けられるかもしれませんね。 でもやっぱりワインディングを気持ちよーく走りたい! あッ! 雨の日もそこそこグリップしてくれないと家に帰れないからそこんとこヨロシク!  とこんな贅沢な作りです。 一般公道向けタイヤの要求性能はこんなイメージです。

 一般公道向けタイヤの要求性能

  1. 膝が擦れるくらいはグリップがある事。
  2. ハンドリングがいい事。
  3. ツーリング途中の雨を想定して、移動できる程度に、普通に走れる事。
  4. 二人乗りして飛ばしても、バーストしたりして壊れない事。
  5. 足つき性が良い事

②「ハンドリングがいい事」とありますが、ある方法でこれらを満たしています。 そのある方法とは・・・?  タイヤの軽量化です。 タイヤをトンガリ形状にするとクイックに寝かし込みができるようになりますが、その反面バイクを起こしづらくなります。タイヤを丸っこい形状にすると起き上がりは楽になりますが、寝かし込みでクイックに操縦しづらくなってしまいます。 ところがタイヤが軽いと、寝かし込みも、起き上がりも軽くなります。 そして加速・減速・旋回全ての運動性能も向上しますから、一般公道向けタイヤは軽くできています。その反面、タイヤゴム全体の厚みが薄いので、タイヤが減ってくると柔らかくなってくる宿命もあります。 そんな時は0.1kづつ空気圧を高めてあげる事で、ハンドリングの変化を小さくできます。 よくタイヤのセンターだけが減って、台形になったから重くなってきた! という声を聞きますが、それは小さな要因ですが、大きな要因ではありません。

④「バーストしたりして壊れない事」とありますが、強度を高める為にある事をしています。 そのある事とは・・・? 設定空気圧を高めてあるのです。 ハンドリングを良くする為にタイヤを軽量化している。とありましたが、そのままではタイヤの強度を保つ事が出来ません。 強度部材として空気圧も利用する事で、「軽量で高強度なタイヤ」が作られていす。空気圧だけを、プロダクションレース向けと同じにしても性能まで同じになる事は絶対ありません。 ちなみに、一般公道向けタイヤで最も重量を意識しているメーカーはMichelinです。あえてスチールベルトを使わないなど、同クラスの中では最軽量です。 ワインディングでの速度レンジを考えればミシュランタイヤもかなりイイ選択肢です。 なので以前バイクワールドで仕事をしていた時、ホイールをカスタムされるお客様にはANDYセレクトで強制的に?ミシュランタイヤを同時装着させて頂きました。 軽量ホイールの効果を最も高めるタイヤはミシュランと言っても過言ではありません。 ※レース用タイヤはスチールベルトを使っています。

 


2、プロダクションレース向けタイヤ (溝付きで一応、公道OK)

このタイヤの場合の目的はとても明確で、「戦いに勝つ事」です。雨の日はウェットタイヤがあるからウェット性能は不要。 二人乗りも想定しなくてOK。 適切な温度条件をライダーが保つ事が条件。(真冬の朝一番にグリップしなくても知らないよ!) 夏の暑ーいときに永遠と高速道路を走る事は考える必要なし!  プロダクションレース向けタイヤの要求性能はこんなイメージです。

 プロダクションレース向けタイヤの要求性能

  1. サーキット1周のラップタイムが最も速い事
  2. グリップが高い事。
  3. コーナリング速度が高い事。
  4. マシンコントロール性が高い事。
  5. 思い通りのラインを走れる軽快なハンドリングである事。
  6. 耐久性は1時間弱でOK。

このタイヤはタイムを出すタイヤですから、ハンドリングが重いならオマエの筋力をつけろ! とタイヤが要求してきます。 なのでタイヤが重いです。190/55ZR17サイズで凡そ7.5kgあります。ピレリタイヤはもう少し軽いです。(ちなみにBSのMotoGPタイヤは、Rrで約9.5kg!)

なぜこうなるか?それは、タイヤの潰れ方と、たわみ方をタイヤの構造で理想に近い形状にコントロールする為です。 タイヤウォーマーなどを使って常に一定の温度条件にあり、且つサーキット走行のみで、一人乗り。と条件を限定する事が出来ます。 限定された走行条件を基に、コンピュータシュミレーションから最もグリップする空気圧、最も旋回性の良い特性を持ったタイヤの変形を導きだします。  その時、タイヤの空気は邪魔な存在なのです。   一体なぜ。。。??

同じタイヤAとBを用意したとします。 一方のAは2.9kを充填。 もう一方Bには1.5kの空気を充填。  路面温度が10℃変化したとき、内圧の変化率が大きいのはどちらのタイヤでしょうか??  正解は → 空気充填量の多いAです。

レース車両はタイヤを軽量化しなくても、マシンと人間で軽量化できるので、タイヤは重くてもいいからグリップを優先して作られます。 また気温や路面温度などの環境による変化も必要最小限に抑えたいので、設定空気圧を低く設定するのです。低く設定した分、反力を得る為に構造が強く単品重量は重くなる訳です。  同じサイズであれば「一般公道向けタイヤ」も、「プロダクションレース向けタイヤ」も最もグリップする時のタイヤ接地面積はほぼ同じです。 それぞれのタイヤは要求スペックがまるで違う工業製品ですから、空気圧だけプロダクションタイヤを真似ても同じスペック(グリップ)にはぜーーーーったいなりません!!!

サーキットでどうしてもタイムを出したい! アイツにだけは負けられない! と本気で思うライダーにオススメの本があります。 和歌山利宏さんの「タイヤの科学とライディングの極意」と、「サーキットライディングを科学する」と言う専門書です。 自分もこの本を読んで2007年の菅生選手権ST600クラスでチャンピオン争いに加わる事が出来ました。練習時間をより効果的に使えますし、速く走る為に必要な時間を有効に使う事が出来ます。 個人的にかなり安い投資だと思います。 現在は中古本しかありません。しかも新品価格の数倍のお値段です。 それだけこの本に価値を見出している確固たる証拠ではないでしょうか。 練習一回分で安全に速く走れるようになります。

この記事を読んで頂いたライダーが次のサーキット走行で楽しくタイムアップしてもらえたら本望です!

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ABOUTこの記事をかいた人

バイク歴18年、名古屋在住34歳で愛機はZRX1200Rと、CBR1000RRです。
ツーリングも大好きですがサーキットも大好きで鈴鹿8時間耐久ロードレースにライダーとして参戦しています。2017年は29位で完走する事ができました!^ ^
  

本田技術研究所で二輪の開発業務に10年間従事し、そのうち5年間をレーサー開発のテストライドグループで操縦安定性や空力性能のテスト、評価を担当。 この時の経験を生かしバイク工学のブログ発信を2017年5月からスタートしました。 高品質な二輪情報を発信しライダーのバイクライフを充実させる事を目的としてサイトを運営しています。 どうぞ宜しくお願い致します☆